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研究者の性


「助けて!!」

「やめてー!!!」

皆、小さなくまの魂から逃げ惑っている。そいつに刺されたら最後、──体が分解してしまうのだ。


研究所内で外の惨事を知っているのは、恐らく……二人か。あるいは。


「どうだい?リールの働き具合は」

急に後ろから声をかけられたものだから、コールは一瞬びっくりしてしまった。

「……薬剤比率は問題ないと思うけど」

「オッケー。今から大坂救済津波計画を始動するんだけど、詳しく知りたい?」

「……すごい知りたいけど時間がないって言うんでしょう?先に計画実行しないとあいつに刺された人達全員がキャンディーと同じ運命を辿る、そう言いたいんでしょう?」

チラ…と振り返って、キティーの目を見る。

「ご名答」

声には出さずともわかる。自分もどこかでこの状況を楽しんでいるのだ。この白い猫と同じように。

「それなら素直にそう言えばいいのに」

「そこが研究者の性だよ」

「全く、その通りね」

危機的状況にも関わらず、結果を見てみたい。研究にはあまり携わってこなかったが、計算は好きだった。薬品の名前もほとんど覚えている。きっと体の奥底で研究者の血が滾っているのだろう。

「そろそろ”奇跡の石”が割れた頃かな」

キティーはうーん、と伸びをした。

「本当、あの石って何なの。ちょっと万能すぎじゃあないかしら」

「企業秘密さ」

そう言ったキティーの顔は、恐ろしく楽しそうだった。


☆ ☆ ☆ ☆


「これでよし、と。あいつが何を考えてるのかは知らねぇが、これほどすごい薬品庫を見せつけられちゃあ俺もじっとしちゃあいられないな!」

リールは水槽に入れた薬品の瓶を、じっと見つめた。

「水軽薬なんて名前しか聞いたこともなかったぞ。確かこいつらが試薬品を作ったんだっけか。大層大金持ちなんだろうなぁ。一瓶ぐらいかっさらっても気付きゃあしねぇ……いやいややめておこう。盗むよりもいい手がある……!」

独り言をボソボソと呟く様は、まるで変質者のようだった。

──いや、実際のところ薬品の瓶を持ってニヤニヤしているわけだから、変質者であることには変わりない。


♪ ♪ ♪ ♪


(スゲエヨスゲエヨ!)

薬品の棚を見上げながら、棚の1段目にも満たない体の鳥が目を輝かせていた。

名前しか聞いたことのないような薬品が、そこにはならんでいた。研究の分野は違うとはいえ、己も研究者なのだ。

それを身を以て思い知った。

キャンディーとキティーが考えていた計画は、この悲劇が起きるのを想定していたかのように完璧だった。後はそのまま実践するだけだ。

実験をしているようでワクワクする。

キールは、飛べない羽根をパタパタと動かした。




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