それぞれの役目、そして天国にて
ここはキャンディーの研究室、F・S【フライングストーン】保管倉庫。
暫くの間、フーの魂の体当たりで扉はガタガタと音をたてていたが、入れないとわかってどこかへ行ったのか、音は聞こえなくなった。
崩壊薬のせいで身体の崩壊したキャンディーと、眠ったように動かないバナナに毛布をかぶせて、一同は何もできない悔しさを噛み締めていた。
「うちらになんか出来ることあったらよかったんやけどな……」
「ただ見てることしか出来ないなんて悔しすぎるよね……」
「うっ…バナナ…っ!うわぁん…」
「オマエラニモデキルコトハアルゾ」
そんな言葉が聞こえたのは、それから暫く経った時だった。
ドサっ、という音と共に、キティーとコールが現れた。
「これを細かく割っていって欲しいんだ。チェリー、前にやった要領で大丈夫だから、みんなに教えてもらえる?コールにその後の段取りは説明しておいたから」
やることの見つかった一同は、ホッと胸を撫で下ろした。やっと自分たちにも出来ることが見つかったのだ。
まだやることが残ってるから、とキティーはまた奥に消えた。
キールから金槌を渡された9人は、早速行動を開始した。
♪ ♪ ♪ ♪
「なにこれ……」
地下にあるパソコンの前に座ったコールは、目を丸くした。
パソコンの奥には、巨大な水槽が大幅の場所を陣取っている。
中には純度の高そうな水が入っている。
上からリールが薬品を垂らしているせいか、上部だけもやっと曇ったようになっていた。
コールはキーボードを叩き、成分分析を開始した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おいおいすげぇな……」
リールが水槽の前に辿り着いたのは、コールがパソコンの前に座る少し前。
言われた薬品を全て抱えたリールは、水槽の前でコールと同じく目を丸くしていた。
「でかすぎんじゃねぇか」
一体どうやって地下にこんな大きな水槽を埋め込んだのか、と考えながら、言われたとおりに薬品を垂らす。
ポタ……と落ちる雫。水面に波紋が広がった。
☆ ☆ ☆ ☆
「ねぇねぇ、階段、長すぎない?」
所変わってここは天国楽園。通常は略され『天園』と呼ばれている。
バナナは汗を垂らし、手をぶらんと前に下げながら、横のサクに訴えた。
「そんなこと言われても私には何も出来ないのだけど?」
「そんなことわかってるよ〜。サクはいいよね、羽、生えてるんだからさ。辛くないし」
「あら、見くびってもらっちゃ困るんだけど。何千人という死者についてこの退屈な階段を何千回と上ったのよ?上に行くに連れてのろまになるし。口数減っちゃうし。退屈ったらありゃしない」
「な、何千回!?」
「何千回以上かもしれないわね。何万回、かも。はたまた、何億回かもしれないわ」
「さすがにそれはない…よね?」
恐ろしや…という目でサクを見たバナナに、涼しい顔をしたキャンディーが言った。
「安心しろ。データによれば天国楽園の天使制度が出来たのはせいぜい2000年前程度だ」
「よかったぁー」
「はぁ。あなたがいると面白味に欠けるわね」
サクは小さくため息をついた。
「どうせこの『天園への階段』についても調べてきたんでしょ?」
「もちろん。12のミッション全て内容把握している。いつかこれを確かめたかったんだ。早くキティーに話したい…!」
「あなた研究者のわりに体力あるようだけど、何かスポーツでもやってたの?」
「小さい頃に1ヶ月ずつサッカーと野球習わされたぐらいだと思うけど」
「……超人ね」
「親父がね」
疲れすぎてそんな話は全く耳に入らないバナナは、汗を拭いながらサクに尋ねた。
「ねえあと何段のぼればいーい?」
「そうね、ざっと2000段ぐらいかしら」
「えっ、えっ、嘘って言って!ね、キャンディー、またサクの冗談だよねっ!」
すがりつくバナナを見て思わず笑ったキャンディーは、そのまま笑いながら言った。
「いや、これは本当」
「やだあーーーーーー!!!!」
延々と続く階段中に、バナナの声がこだました。




