キティーの計画
ボオーーー!
研究室は突如、熱い炎に包まれた。
「熱っ!……フー!!」
入ってきたのは、紛れもなくフーだった。小さなフーの魂は、注射針のような凶器を振り回しながら炎をはいて現れた。
「こんな炎噴くなんて研究結果にあったっけ!」
「わからん!なんせこの病気の患者見たのすら初めてだからな!」
みんなを安全なところへ避難させようと、キャンディーはフライングストーンを保管している倉庫の扉を開けた。この倉庫は頑丈なつくりになっていて、いざという時に身を守るための場所になっているのだ。
「早く!ここに入るん……っ」
急にキャンディーの声が途切れた。
「キャンディー!?」
「もしかして刺された……!?」
「……そのようだ……ほ、崩壊薬が含まれてるかも……しれない…」
「なんだって!?崩壊薬!?」
バタンっ!
キティーは勢い良く扉を閉めた。
どうやらフーは入って来れなかったようだ。
一同はほっと溜息をもらした。のもつかの間、キャンディーの体が震え出した。
「やばい!このままじゃ肉体分離を起こしてしまう!」
「肉体分離!?」
「たましい精神病患者の出す毒素と崩壊薬はとっても相性がいいんだ。この二つが結びつくと、細胞崩壊が促進される」
「何それ,わけわかんない……」
アップルはそう言って青ざめた心配そうな顔でキャンディーを覗き込んだ。
「キャンディー、君のやりたかったことが実現するチャンスかもしれないよ。ここまで来たらいっぺんバナナと一緒に行っといでよ」
「……はぁ?何言ってん…!?」
何をするでもなく、にっこりとキャンディーに笑いかけるキティーに、ただ見ているだけしかできない周りの9人は疑問を持った。
「確かR3兄弟は研究者だったよね?」
だが、そう言って振り返ったキティーの顔は、真剣そのものだった。
「ああ、そうだが……」
「なら崩壊薬についてちょっとは知ってるよね?」
「俺たちはその道の研究者じゃあないんだけどな。名前と効力ぐらいは」
「よかった。それなら薬の名前と薬品についてぐらいはわかるよね。じゃあそっちのおっきいくま…」
「俺はリール。横のうさぎはコール。兄ちゃんの名前は知ってんだろ?」
「ああ。リールはこの倉庫の一番奥にあるおっきい水槽に水が張ってあるから、そこに常定薬を5滴、水軽液を9滴、軽抵抗薬を7滴、それからそこにあるビーカーに入ってる液体を入れて来て!」
「あいよ!」
事は思ったより深刻なようだった。
何よりもキティーの顔がそれを物語っていた。
リールはすぐに水槽の方へ向かう。
「で、コール!君はすぐそこにある階段を降りて、一番奥まで進んで。そこに水槽の底部と、水槽の内部の成分を分析するためのパソコンがあるから、僕が行くまで成分計算をやっておいて欲しい。できる?」
「計算は得意よ」
コールもすぐさま階段を降り、言われた場所に向かった。
「キール、君は僕の手伝いをしてほしい」
「ワカッタ」
キャンディーの体は、見ていられないほど崩壊が進んでおり、今に死んでもおかしくなさそうだった。バナナに至っては、手を握っているアップルがはっきり感じ取れるほどに体温が低下していた。
「キティー!バナナがっ!バナナがっ!」
「2人はそのままにしといてやって。大丈夫。そっちは大丈夫なんだ。問題は……よし、キール、着いて来て!君たちはそこでバナナとキャンディーのそばに着いていてね!たぶんもうすぐ……いや、とにかく動かないで!」
キティーはそう忠告すると、キールとと共にどこかへ消えた。
何が起きているのかさっぱりわからないルーたちは、まなみから説明を受けた。
「そんな……!」
「……俺のせいじゃないからな!」
「起きたことを悔やんでも仕方がありません!私たちにできることを探しましょう!」
「でも何やったらいいん?」
「……」
何もできずに気分の沈んだまなみ、ルー、チェリー、チロ、チイタは、アップルの泣き声で後ろを振り返った。
「まさか……」
「もう2人とも息してないよぅ……キャンディーバラバラになっちゃったし…わぁあぁ……」
目いっぱいに涙を溜めたアップルは、近くに寄って来たルーに抱きついた。
「アップルはバナナと親友やったもんな……」
そう言ったルーの目にも涙が浮かぶ。
バナナとキャンディーの体から、もやぁ…っとしたものが浮かび上がった。きっと2人の魂だ。キティーは大丈夫だなんて言っていたけど、大丈夫じゃなかったじゃないか。涙をルーの服に滲ませながら、アップルはそう思った。
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所変わってこちらは空の上。
「えっ、バナナ、死んだんだよね…っ!?」
「そうだ。ここは──」
「ようこそ、天国へ」




