バナナを救え!
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「バナナ!」
キャンディーは研究室前に現れたれんくまの絨毯へと駆け寄った。
絨毯は赤い血にまみれ、バナナの隣で必死に止血をしているキールの羽も、赤く染まっていた。
それを見るなり、キャンディーはバナナを抱きかかえ、キティーの方へ叫んだ。
「キティー!でんげん旧薬を持ってきてくれ!」
「それがさっきから探してるんだけど、ないんだよ!」
「嘘だろ!?あれがなかったら……」
カチャカチャと瓶が音をたてている。
「私も探してますが、見当たりません!」
キティーとまなみの言葉を聞いて、キャンディーの血の気が失せた。
付けっ放しにしていたテレビから、ピコン、ピコンというけたたましい音が流れ出した。
「きたか……」
キティーはテレビを睨みつける。
『臨時ニュースをお伝えします。全国各地で……』
今までやっていた昼のグルメ番組からパッと画面が切り替わり、ニュース番組になった。
気になったまなみがチャンネルを変えてみる。
『えー、それでは、今日の一番!のコーナーです……あ、ちょっと待ってください!臨時ニュースが入ってきました!えー、全国各地で謎のたましいが暴れているようです。証言者によると、このようなルワノのたましいで、小さな針を持ち攻撃してくるようです。原因は不明、病院は受け入れ態勢を整えているもようで……で、でました!謎のたましいです!!見て下さ……今、刺されました…い、痛い…で、す……と…とても……』
「も、もしかしてこれがさっき言ってた……?」
「その通り。Level 5のたましい精神病患者特有の症状さ。一番身近にある凶器を持って、所構わず刺していく。相手が失血死、またはたましい精神病患者が出す毒素が身体中に回って毒死するまで刺し続ける傾向がみられる。今回は大坂駅の近くの病院から注射針のぶっといやつをくすねてきたみたいだね」
その瞬間、キャンディーはそうだ、と思い出したようにキティーを振り返った。
「キティー、ひやくとフライングストーンを持ってきてくれ!キールはキティーが持ってきたひやくを247ml、正確に量ってこの大水槽に入れてくれ!おじょうさまは濡らしたバスタオルを用意するんだ!キティー、フライングストーン10個を『くだ機』で砕いてくれ!」
「キャンディー、まさか……」
「そのまさかだ。津波計画を実行する」
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
行く当てのないルー、チロ、チェリー、アップル、チイタ、リール、コールの7人は、わけもわからず大坂駅の周辺を彷徨っていた。
ルーはフーの抜け殻を担ぎながら、フーがこうなった理由を必死に思い出していた。何か大変な事が起こっていたのだろうけど、一向に思い出せない。あのサングラス野郎が自分達に何かをしたということぐらいしかわからなかった。
リールとコールは何かの研究員だそうだが、ルーたちと同じように、ほとんど何も思い出せなかった。研究していた内容さえ、忘れてしまっているようだった。
「とにかくさ、いっぺんその研究所とやらに行ってみない?ほら、帰巣本能ってあるやん、本能に従って家に帰れるみたいな」
チェリーがそうきりだした。
「いいないいな、そうしよか。それくらい二人も覚えてるやろ?」
「いや、それが……」
「全く思い出せないのよ……」
「なんやて!?」
そうこうしているうちに、一人の悲鳴が聞こえてきた。
いや、一人じゃない。もう少し大勢の……
それは見覚えのある顔の魂だった。15人はいるだろうか。魂は針のような物を持って、ルワノを追いかけていた。
「これは……フー!」
はっと気付いたように、ルーが叫んだ。
「そういえばチイタが来て魂抜けてたよね!」
思い出したようにアップルが言う。
フーの魂はプスプスと次々にルワノを刺していき、その度に刺されたルワノが刺された箇所をおさえて倒れこんだ。
「一体何が起こってるんだ……!?」
気付けば大坂中は呻き声をあげるルワノでいっぱいだった。ソルドはもう大坂には居ないのだろうか、と思わせるほど、見当たらなかった。
周りのルワノを全て刺し終えたフーは、7人の方へと向かって来た。
「やばいやばいやばい」
チイタが真っ先に逃げる。
「まってー!」
チロがそれを追いかけていく。
あとの5人も続いて逃げる。
目を炎のように燃やしたフーの魂が、猛スピードで追いかけてくる。
→→→ →→→ →→→
バタン!
ドアの締まる音がした。
心電図の音がピコン、と小さく鳴っている。
バナナの命が危ない──キャンディーの頭にはそれしか浮かんでいなかった。
ひやくとフライングストーンパウダーででんげん旧薬に近い薬を作ってバナナに飲ませたのだが、時すでに遅し、バナナは既に瀕死の状態だった。
──「助けてくださ……あれ、見たことある顔……」
入ってきたのは、よく見慣れた顔。
「チロ!チイタも来たんですか!みんな戻ってきたんですね!」
まなみは少しだけ顔をほころばせる。
「……まなみちゃんだ!」
少し間を置き、パッと輝く笑顔でチロはまなみに飛びついた。
そんなチロをすぐに引っ剥がし、
「今それどころじゃないんです。バナナが死んでしまいそうで……」
「えっ!?バナナが!?」
どうやらみんな仲間の事は思い出したようだ。アップルが駆け寄ってきた。
「フーが変なことになったろ?」
部屋の奥から出てきたのはキティーだ。
その時、バーンッとドアが大きな音をたてて開いた。
その瞬間、勢い良く炎が部屋へと飛び込んできたのだった。




