予兆
「ぅぅぅうわああ!」
「ゃぁあああああ!」
二人は空間のはざまへと飛ばされていた。
「いったー!……ここが空間のはざま?バナナたちあのおじさんに会ったことなかったのになんで来たんだろ?」
「オオカタアノケンキュウヤロウガナニカシラソウサデモシタンダロウサ」
ここは辺り一面真っ白。天井も、床も、前も、後ろも、右も、左も。出口なんてない、とでも言われているような、そんな白さだった。
「出口……どっち?」
バナナが帰れるの?と言うように呟いた。
「ワカラナイ……オレモコンナトコクルノハジメテダ……」
暫く二人で呆然としていた。
何分か経った頃、
『……ナ!バナナ!おい!返事しろよ!』
『はっ!』
どうやらキャンディーからテレパシーがきたようだ。
『やっと気付いた……。おい、今お前らは周り全部真っ白な世界にいるよな?』
『うん』
『んじゃ、めいいっぱい大きな声で”れんくま”と叫べ。すぐにこっちに戻れる。場所を聞かれたらキャンディーの研究所って言うんだ。わかったな?』
返事をするまでもなく、キャンディーのテレパシーはあちら側からプッツリと切れてしまった。
「……ナンダッテ?」
「なんだかよくわかんないけど、れんくまって人を呼べばいいらしいよ。誰だろね、れんくまって」
れんくまという人物に心当たりはなかったが、二人はとにかく叫んでみることにした。
「れんくまー!!」「レンクマー!!」
ありったけの声を出したが、二人の努力は虚しく何の反応もなかった。
「どうかしちゃったのかな?」
適当な方向に暫く歩きながら叫ぶ。
どれだけ歩いただろう。足に少し疲れが出てきた頃、微かだが物音が聞こえてきた。
ガッシャーン ガッシャーン
「なんか壊れる音がする」
不審に思って音のする方へ歩き続けた二人の目の前に、急に赤い色が飛び込んできた。
「助けて……」
それとともに、小さな声が聞こえた。
赤い色の周りには、何もないはずの空間に瓦礫の山が散乱していた。赤い色の正体は、血だった。
「だ、大丈夫ですか……?」
恐る恐る、バナナは瓦礫の山に声をかける。
だが、返事はかえってこなかった。
「ダレニヤラレタンダロウ……?」
キールがそう言った時だった。
「ギャァーオ!」
突然の叫び声。驚いて振り返ると、遠くの方に何やら靄掛かったものが見える。小さくて、丸い耳がついていて……
「フー……?」
フーがたましい化していることを知らないバナナは、叫びまくっているフーに近付いた。
「あ……だめ!」
どこからかそんな声が聞こえてきたが、バナナの耳には入らなかった。
「いたっ……」
「バナナ!」
バナナは小さな悲鳴をあげ、足を抱えて倒れた。
キールはそんなバナナのもとに駆け寄る。それと同時に、腕を抱えたくまが瓦礫から出てきた。
「オマエガ……レンクマ?オマエモアイツニヤラレタノカ?」
フーを警戒しながらキールが言った。
「う、うん。呼ばれたからお仕事だって思って飛んでいこうと思ったんだ。でもあのちっちゃなくまのたましいが……僕を変な針で……」
「モウダイジョウブナノカ?」
「うん。刺された所が大事に至らない所だったみたい。止血したら痛みも治まったし多分大丈夫だと思うよ。体はちょっとだるいけど」
「ソウカ……ソレナラヨカッタ。トコロデオマエ、ゲンジツノセカイニオレタチヲツレテイクコトッテデキルノカ?」
「できるよ、それが僕の仕事だからね」
そう言ってウインクすると、くまは絨毯を取り出し、バナナを上に乗せた。バナナの足からは依然として血が流れ続けている。何箇所か刺されたのか、血の流出が激しいようだ。バナナが倒れていた場所は、血の海のようになっていた。
「イッタイナニガオキテルンダ……?」
キールが独り言を呟いた時には、もう既に目的地へとたどり着いていた。
これからが本当の戦いだと気付くのは、もう少し後の話。




