見つかっちゃった!
23 見つかっちゃった!
「え、この人がキャンディーのお父さん!?」
「そうだよ。前に会ったことあるもん」
残ったみんなは驚いた。
「そういえば何となく似てるような……」
「ってかバレたらあかんよな、静かにせな」
ひそひそ話す九人に、話の元であるキャンディーの父が近づいてきた。
「ちょっ!やばいって!」
「君たち、キャンディーの知り合いかい?」
みんなはあたふたしながら作り笑いを浮かべた。はたから見れば、明らかに何かを隠してるように見えるそぶりだった。
「う……」
うんっ!と言おうとしたチロの口をルーがふさいで、
「いえ、違いますよ?キャンディーとかいう名前、聞いたことないでな?」
ルーが誤魔化して、みんなに確認する。
「うん。飴ちゃんみたいやね」
なんとか誤魔化した。……が、
「ん?そこの君、どこかであった気がするんだけど……」
チロを見ながらそう言った。
冷や汗をたらりと流しながら、ルーは必死に誤魔化す。
「い……いや、ちゃいますちゃいます、人違いやとおもいますよ!」
それでもキャンディーの父は引き下がらない。
「君、名前は?」
「チ……はふっ」
急いでルーはチロの口を塞いで、
「チ、チエミです!」
かわりに答えた。
「いや、君にじゃなくてこの子に聞いてるんだけど……」
(言ったらあかん、言ったらあかん、言ったらあかん……!)
というみんなの視線が刺さったようで、チロは、?と思いながらも
「名前はチエミだよ」
と言った。
「チエミか……チエミって名前は聞いたことないな。人違いか、ごめんね」
そう言って、キャンディーの父は去っていった。
はぁー……
みんなはため息をついた。
「めっちゃ恐かった!これさ、バレたらみんな空間のはざま行きやったんやんな!?」
「やばいとこやったでなー!」
「チロ、チエミじゃないよ?」
「チロは黙っといて!」
その時、今まで黙って何かを考えていたフーが立ち上がり、キャンディーの父の方へ向かった。
「やっぱり、嘘はよくないよ」
そんな独り言を呟いた。
「あっ……ちょっ…フー!よくはないけど…!」
「ナニヤッテンダ!」
気付いたチェリーが止めた時には、もう遅かった。
キャンディーの父は、やっぱり!という顔をして、
「やっぱり君たちキャンディーの知り合いか!あー、チロか!あの警察夫妻の娘さん!まなみお嬢様の家で一度会ったんだな」
その瞬間……
ひゅん!と、みんなが消えた。
バナナとキールだけを残して。
「わあああぁぁぁ……ってええええ!?なんでバナナ消えてないの!?どゆこと!?」
「オレモダ〜!」
☆ ☆ ☆
「くうかんくうかんくうかんのはっざ……」
「わわわわわわわーーーー」
空間のはざまに大音量の叫び声が響く。そりゃあそうだ、一気に7人もの空間のはざま未経験者が来たのだから。
「うるさいなぁー。でも久々のお客さん!」
ドォーーーーン!!
音がした方に行ってみると、七人が目を回しながら積み重なっていた。
「ようこそ!空間のはざまへ!」
手を広げて、笑顔でそう言ったのは、自称「空間のはざまのヒーロー」の、れんくまだった。
「僕にお任せあれ!すぐに現実の世界に戻してあげるよ!」
れんくまはフーくらいの大きさの熊で、首に赤いバンダナを巻いていた。
「誰?」
やっと落ち着きを取り戻したアップルが尋ねた。
「ぼくは空間のはざまのヒーロー、れんくまだよ!」
「いやいや、いちいちそんな変なポーズいらんから……」
ルーが苦笑いしながら言った。
「ずっとここに住んでるの?」
「ずっとじゃないけどずいぶん長い間ここにいるよ!で、どこに行きたい?」
「え?日本の東共だけど……、え?」
この時は誰もチェリーにつっこまなかった。みんな、ここに来ると戻る時には現実に戻ることを忘れていたのだ。
「おっけー、東共ねー!」
何だかよくわからないが、れんくまに連れていってもらうことにした。
「じゃあこれに乗って〜」
と言って取り出したのは絨毯。何が起こっているのか未だにわかっていない七人は、言われるがままに乗ってみる。
「落ちないようにしっかりつかまっててねー!一瞬だから!」
乗ってる時間は、れんくまが言った通り、『一瞬』だった。
みんなが絨毯に乗った途端、景色が変わった。
絨毯から降りて、『東共・ソルドワールドタワー』の前に立った時、チェリーは自分の犯した過ちに気が付いた。見渡す限りソルドだらけ。ルワノは一人もいなかった。
「わ、私……場所間違えたみたい……」
ここにいると大変なことになりそうだ。
「ここ、現実の世界だよね……?」
アップルがどうしよう、と青ざめる。
「やばいよこれぇぇぇー!」
絨毯をくるくると巻いていたれんくまは、
「ん?間違ってたの?でもここから他の場所に送ることはできないからね……ごめんね。じゃあ、また会うかはわからないけど、またねー!」
「え、あ、ちょっ…!」
れんくまは、そう言って消えた。
「れんくまって、どうやって時空飛び越えてるんやろ……?」
「さあ?」
「そんなことより今はこの状況の対処法考えねーといけねーぜ!」
みんなはうーん、と腕組みをして、考えた。
「あ!あのさー、」
ルーがポンッと手を打った。
「まだほとんど使われへんねんけど、うち、実はちょっと魔法使えんねん……」
「えっ!?」
「どんな!?」
この言葉にみんなは驚いた。
「いや、使える時と使われへん時があるんやけど、移動もできるんちゃうかな……って」
みんなは喜び、リール、コール、そしてチロの三人は「あっ!」と何かひらめいたような声を出した。
「そうよ、そんな難しそうな魔法なんか使わなくたって、"にんぽう"があるじゃない!」
コールがうんうんと頷きながら言った。
「何で俺たち忘れてたんだ」
にんぽう?と、にんぽうを知らないアップルとルーが首を傾げたが、
「チロ前に使ったから覚えてるよ〜」
というチロの一言で思い出した。
「ああ、前にチロを消したあれか!にんぽうっていうんだ!」
なるほど〜と、二人は大きく頷いた。
「そうと決まれば早く行くよ!」
『にんぽう、大坂へのじゅつ!』
ボワッ…
煙を残し、七人は東共から消えた。
──その様子を遠くで見ていた人物が一人。黒いサングラスを掛け直し、その場を立ち去った。




