空間のはざま
22 空間のはざま
みんなは青いもやの中に居た。
真っ暗な空間をランプが照らし、青く光っている。
「す、すごいです!この時空を飛び越える感じ、想像していた通りですね……!」
まなみが感嘆の声をもらした。
「わー!すごい!すごい!」
バナナは興奮して叫んでいる。
「あんまり騒ぐなよ、落ちたらやばいから」
隣にはキャンディーが居る。何だか嬉しそうだ。
『まもなく、11月1日、午前3時15分になります。注意事項をお知らせいたします。1、過去の自分に見られないこと。これは絶対条件です。もし見られてしまった場合、空間のはざまへと送られることになります。2、自分を知る者に見られるのもあまりよろしくありません。極力、見知らぬ者だけに会うか、人には会わないようにした方が良いでしょう。不祥事が起きた場合、どのような場合でも空間のはざまへ送られます。3、元の時間は、11月7日 午前2時40分です。その時間までに今まで居た場所を離れる場合は、居たという痕跡を消してください。では、タイムトラベルを楽しんで!』
アナウンスが入った。
「すごいプログラムやなぁ、キャンディーが作ったん?」
「いや、これはフライングストーンの記憶能力によって成り立っている。タイムマシンを作ると自動的に組み込まれるプログラムだ」
「な、なんか難しいねえ」
アップルが頭の上にはてなを浮かべている。
「そういえばさ、タイムトラベル中って、元の時間はどうなってるの?」
「その間も時間は進み続けている。だから用を済ませたらすぐに戻った方がいいな」
「なるほど~」
そうこうしているうちに、時空の膜を抜けた。
前方が光って、青空の下。
「出れた!!」
シュンっ!
タイムマシンが時空を飛び越え、過去の時間にやってきた。
その瞬間、
バーーーンッ!!
タイムマシンが大破した。
「しまったーー、やっぱり15分じゃもたないよなー、」
キャンディーがそう叫んで、みんなが投げ飛ばされた。
「キャンディー、執事はお嬢様を守るのが仕事じゃないのですか!?」
キャンディーは知らない間にバナナをかばっていた。
「!?俺何やってんだ!?バナナ、怪我はないな!?お嬢様、すみません、以後気を付けます」
「?」
バナナは頭の上にはてなを浮かべている。
チェリーは何故かニヤニヤと笑っている。
「さあ、急いで空港に向かおう!あの友好条約破棄までもう時間無いよ!」
「だな、急ごう!空港に向かうんだ!」
一行はロザンゼルズ空港へと向かった。
みんなで空港へ向かって走ってる途中、チェリーはニヤニヤ笑いながらキャンディーにあることを尋ねた。
「お、おい!そんなんじゃないぞ!断じて違う!第一、歳が……」
「あらあら、隠しても無駄だよ。分かる人には分かっちゃうよっ」
キャンディーの顔が真っ赤になった。
「他のみんなにもバレてると思うか……?」
「さあ……?」
そうこうしているうちに、ロザンゼルズ空港に着いた。
「お金は払いますから、特急ジェット機に乗りましょう!」
特急ジェット機で行くと、通常3日かかる飛行時間が、1日半で済むのだ。
「まなみナイス!」
ルーがグーサインを出した。
「さあ、急いで!今日の便がもう出てしまいますよ!」
超特急でチケットを買い、飛行機に乗り込んだ。
「ま、間に合ったぁ……」
「これ、しんどすぎやろ……」
汗だくになりながら座席に座る。
ルル語のアナウンスが入って、すぐに飛び立った。
「ギリギリセーフダッタンダナ」
「間に合って良かったですねー」
「ってかこれからひまじゃないー?」
「その前にめっちゃ人に会ってる気が……」
「知ってる人には会わないでしょう、大丈夫ですよ」
キャンディーが敬語口調に戻って言った。
その瞬間、
「おいおい嘘だろ!?」
キャンディーがいきなり焦り出した。
「ちょ、ちょい待て!何でいるんだ!?」
隣に居たバナナの影に隠れるが、キャンディーよりも小さなバナナには隠れれるわけもなく、
「ん?キャンディーか?」
「!!」
キャンディーは消えた。
「ええええええはやいよキャンディー!」
「その声はキティー?」
「!!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいなんでキャンディーのお父さんが……」
「まなみお嬢様?」
キティーとまなみが消えた。
「ちょ、ちょーっと待て!早すぎないか!?」
リールが騒ぐ。
「ショッバナカラミツカッテルジャネーカヨー!」
三人は空間のはざまへと消えたのだった。
→→→→→→→→→→→→→→→
「・・・とぉぉぉおお!」
「・・・・・・わぁぁぁああ!」
「・・・・・・・・・ひゃぁぁぁああ!」
・・・タンッ、ドスッ、ドーンッ
「いった~!さすが、キャンディー。慣れてるなぁ」
「俺が何回ここに来たと思ってるんだ」
キャンディーは歳の頃にタイムマシンを作ってから、何度もここに来ているのだ。
「ここに来るとめんどいんだよなー。元の時間に戻らないといけないし……」
「……結局改めてないじゃないですか」
その言葉に、キャンディーはビクッと反応した。これは、やばい。
「なーにしてんじゃボケぇ!お前なぁ、さっき『以後気を付けます』なんてサラッと言っとったけどなぁ!どこが気を付けてんや!なんも変わってへんやんけ!お?執事解約してもええんやで?」
こうなるとまなみを止めることはできなくなるのだ。
「は、はい……(あーめんど)」
「……あーめんどって思ったやろ!今そう思ったよな!?何なん?お嬢様なめきってるやろ!こんなんな、解約や!か!い!や!く!」
「あーはいはいごめんなさい解約だけはご勘弁を」
本当に面倒くさそうに言ったキャンディーに、
「では戻り次第解約手続きを発行しますので」
まなみはこう言い捨てた。
「い、いやちょっと待て!悪かった!悪かったから!解約だけはやめてくれ!親父に……」
「叱られとけ!」
「……」
喝を入れられキャンディーは黙るしかなかった。
「あーあ。大人しくしとけばよかったのに」
「年収減って研究費足りなくなるじゃねーか……」
「年収目当てですか!それなら余計にダメです!解約です!」
キャンディーは小声で言ったつもりだったが、まなみに聞こえていたようだ。
「地獄耳……」
「地獄耳でけっこうです!」
「……」
それからしばらく3人は、無言で歩いていた。
どれくらい時間が経っただろう。
「これさー、めっちゃくちゃ遠いやつだよねー?」
「ああ。あれ?お前来たことなかったっけ?」
「1回だけー。キャンディーとは違うから~」
「余計なお世話だ。せめて、れんくまに会えたら速いんだが」
「れんくま?」
れんくまというのは、空間のはざまに住む熊で、自称『空間のはざまのヒーロー』だった。
「ヒーローかどうかは知らないが、あいつに会えたらすぐ帰れる。会えなかったら……終わりもんだな」
「1ヶ月だっけ?」
「!1ヶ月!?そんなの嫌ですよ!絶対見つけてください!」
「解約なんだろ、自分で見つけろよ、とか言いたいけど俺も早く帰りたいんだよな……ってかフライングストーン無駄すぎるだろ!このまま現実に帰るんだったら俺たちの分意味ねー!無駄遣い!!」
キャンディーは頭を抱えて叫んだ。
「まあまあまあ、気楽に行こうよ!」
キティーがなだめる。
「ムカムカムカ……」
まなみは顔を真っ赤にしながらわなわなと震えている。
「ぜっーたい解約したる!」
まなみの大声が空間のはざまでこだました。




