↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/73

目録

雪が緩みはじめた頃、大聖堂から使者が来た。

 運んできたのは、木箱ひとつだった。

 中には、羊皮紙の束が入っていた。

 表紙に、こう書いてあった。

 『王暦五七〇年 焼却文書目録 第七文書庫最下層』

 ティナが箱の前で、動けなくなった。

   ■

 目録は、素っ気ないものだった。

 焼いた文書の題名と、点数と、そして――所有者の名前が並んでいた。

 『継ぎの手引 三巻   所有 ミルカ・ヴェン』

 『器継ぎ覚書 一巻   所有 ヨナ・アルデ』

 『骨接ぎ法 二巻    所有 サラ・トゥル』

 名前が、四百七十三並んでいた。

 ティナは、最初の頁から、指でなぞって読んでいった。

 三十人ほど読んだところで、彼女の指が止まった。

「――ノアさん」

 彼女は言った。

「アルベールが、あります」

 俺は覗き込んだ。

 『継ぎの心得 一巻   所有 ハンナ・アルベール』

「……ハンナ」

 ティナが呟いた。

「わたし、教会に拾われた子なんです」

 彼女は言った。

「捨てられてたところを拾われたって聞いてました。だから、アルベールは教会がくれた名字だと思ってました」

 彼女は言った。

「――教会が、なんで、この名字をくれたんでしょう」

 俺は答えられなかった。

 ティナは、目録を抱えた。

「四百七十三人」

 彼女は言った。

「わたし、この人たちの名前、全部読みます」

 彼女は言った。

「読んで、書き写して、教室の壁に貼ります」

 彼女は顔を上げた。

「――三百年、誰にも呼ばれてないので」

   ■

 目録と一緒に、手紙が入っていた。

 アルドリックの字だった。

 短かった。

 『目録を送る。写しは作らせていない。原本だ』

 『聖庁には、失われたと報告した』

 『――ノア・ガラット。私の問いに、答えが出た』

 『私は急いでいる。理由を知りたければ、来なさい』

   ■

 俺は三日後、領都へ発った。

 同行はティナとゼロだった。

 セリアは施療所を離れられず、リディアは帳簿があり、ドルグとフランは村の守りがあった。

 出発の朝、ミカが俺に何かを押しつけた。

 布に包まれていたのは、短刀だった。

 鞘も柄も飾りがなく、刃は短い。

「なにこれ」 「小刀。切る用」

 彼女は言った。

「戦う用じゃない。紐切ったり、木削ったり、そういうの」

 彼女はそっぽを向いた。

「継ぎ目、六本ある」

 俺は刃を見た。

 細い金の線が、六本走っていた。

「屑鉄から作った。全部、村で出た屑」

 彼女は言った。

「ロブさんが打った鍬の折れたのも、入ってる」

   ■

 領都に着いたのは、五日後だった。

 大聖堂の白い塔が見えたとき、ティナが立ち止まった。

「……大丈夫です」

 彼女は言った。

 俺は数えかけて、やめた。

「今日は、数えなくていいですよ」

 俺が言うと、彼女はちょっと笑った。

「ノアさん、それずるいです」

   ■

 控えの間に通された。

 アルドリックは、椅子に座っていた。

 前より、さらに痩せていた。

 顔色が、紙のようだった。

 彼は俺たちを見て、それから、ティナを見た。

「――目録は、届いたか」 「届きました」

 ティナは頭を下げた。

「ありがとうございます」

「礼を言うなと言った」

 アルドリックは言った。

「私は、返しただけだ」

 彼は言った。

「盗んだものを、三百年後に返した。それは善行ではない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。