↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/71

徴発

 王国軍が来たのは、その四日後だった。

 騎馬が十二騎、荷馬車が六台。

 先頭の将校は若く、鎧が新しく、そして疲れていた。

「王国軍第二補給隊である」

 彼は馬上から言った。

「戦時徴発令に基づき、当集落の食料および燃料を接収する」

 村の広場に、百四十人が集まっていた。

 その全員が、荷馬車を見ていた。

「――徴発の対象は」

 リディアが前に出た。

「食料の全量、および黒炭の全量」

 将校は言った。

「代価は、戦後に国庫から支払われる」

「戦後、というのは」 「戦が終わった後だ」

 彼は言った。

「それ以上のことは、私も知らん」

   ■

 リディアが帳簿を開いた。

「現在、当集落の人口は百四十二名です」

 彼女は言った。

「そのうち百二十九名は、国境方面からの避難民です」

 将校の顔が、わずかに動いた。

「食料の全量を徴発された場合、この百四十二名は三日で飢えます」

 リディアは言った。

「戦時徴発令、第五条。徴発は、当該地の住民の生存を害しない範囲で行うものとする」

 彼女は言った。

「――全量徴発は、違法です」

 将校は舌打ちした。

「では、半量だ」

「半量でも、二十日で尽きます」 「二十日あれば十分だろう」 「何がですか」

 リディアは聞いた。

 将校は答えられなかった。

「あなたは、二十日後に戦が終わると保証できますか」

 彼女は言った。

「保証できないなら、それは『生存を害しない範囲』の判断ではありません」

   ■

 将校が、馬から降りた。

「――嬢ちゃん」

 彼は言った。

「俺は、六つの村を回ってきた」

 彼は言った。

「どの村でも、同じことを言われた。『食えなくなる』と。全部本当だ」

 彼は言った。

「だが、俺が食料を集めなければ、国境の一万二千人が飢える」

 彼は言った。

「一万二千人が崩れたら、次に飢えるのはこの村だ」

 彼は疲れた顔で言った。

「――俺も、選んでるんだよ」

 俺は、その言葉を聞いて、セリアを見た。

 彼女は広場の端に立っていた。

 顔が白かった。

 三百人の列の前に立って、三人を選んできた人間の顔だった。

「――選ばなくていい方法があります」

 セリアが言った。

 将校が振り返った。

「なんだと」 「食料は、渡します」

 彼女は言った。

「その代わり、条件をつけます」

   ■

 セリアが提示したのは、三つだった。

「ひとつ。食料は半量ではなく、四割渡します。ただし、黒炭は全量渡します」

 彼女は言った。

「黒炭は、この村でしか出ません。炭より三倍持ちます。冬の陣地で、これは食料と同じ価値があります」

 将校が息を呑んだ。

「ふたつ。この村を、負傷兵の後送先に指定してください」

 セリアは言った。

「街道沿いで、井戸があって、屋根が三十軒あって、手当てのできる人間が十四人います」

 彼女は言った。

「国境から歩いて十二日。荷馬車なら八日。今、負傷兵はどこに送られていますか」

 将校は答えた。

「……領都だ。十六日かかる」

「その間に何割が死にますか」 「――半分だ」

「ここなら八日です」

 セリアは言った。

「みっつ。後送先に指定されれば、この村には軍の補給が回ります」

 彼女は言った。

「四割渡した食料が、戻ってきます」

 将校は、長いこと黙っていた。

 そして、こう言った。

「……嬢ちゃん、あんた何者だ」 「聖女です」

 セリアは言った。

「三回に一回、失敗します」

   ■

 荷馬車が黒炭を積み込んでいるとき、街道の方向から、一騎が駆けてきた。

 馬から飛び降りた男は、金髪で、左足をわずかに引きずっていた。

「――ノア!」

 カイルだった。

 鎧は泥だらけで、顔に切り傷があった。

「無事か」 「無事です」 「村は」 「百四十二人います」

 カイルは村を見回して、それから、口を開けたまま固まった。

「……増えてるな」 「増えました」

 彼は笑おうとして、失敗した。

「ノア。時間がない」

 彼は言った。

「第四砦が落ちた。昨日だ」

 彼は言った。

「帝国の先鋒が、街道を南下してる」

 カイルは俺の肩を掴んだ。

「――四日で、ここに来る」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。