↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/71

金髪の男を泊める

翌朝、カイルが井戸端で寝ていたのを見つけたのはティナだった。

 悲鳴が村中に響いた。

「知らない人がいます! 金髪の! 顔がいいです!」 「情報の順番がおかしいです」

 騒ぎを聞きつけて出てきた面々の反応は、それぞれ違った。

 ドルグは腕を組んで、じろりとカイルを見下ろした。

「お前が、坊主を捨てた男か」 「そうだ」 「ふん」

 それだけ言って、ドルグは畑に行った。何もしないことで示す種類の男だった。

 ミカは金槌を持ったまま近づいて、カイルの腰の剣を見て、鼻で笑った。

「その剣、刃こぼれしてる。研いでない。柄の巻きも緩んでる。あんた、道具のこと何も考えてないでしょ」 「……そうだな」 「認めるんだ」 「認める」

 ミカは面白くなさそうな顔で戻っていった。喧嘩を売って買われなかった子供の顔だった。

 リディアは事務的だった。

「情報の対価は」 「要らない」 「無償の情報は、いちばん高くつきます」

 彼女は眼鏡を押し上げた。

「後日、必ず何かの形で請求されます。私はそういうものを何度も見てきました」 「じゃあ、代わりに一つ頼む」

 カイルは頷いた。

「うちの親父の名前は、表に出さないでくれ。潰すなら、アルバンとグラス商会だけにしてほしい」

 リディアは彼を見て、それから計算板を弾いた。

「――妥当な取引です」

   ■

 ボロだけが、最後まで態度を変えなかった。

 彼はカイルの三歩手前で立ち止まって、毛を逆立てて、低く唸った。

「我は、この男を認めぬ」

 背中まで銀色になった毛が朝日に光って、犬ほどだった体は、いつのまにか中型犬を超えていた。

「認めぬぞ。小僧を捨てた匂いがする」

 カイルは膝をついて、ボロと目線を合わせた。

「じゃあ、認めるな」

 彼は言った。

「認められる筋合いはない」

 ボロは唸り続けていたが、やがて、ふん、と鼻を鳴らして、そっぽを向いた。

「……気に食わぬ」

 彼は歩き出しながら、ぼそりと言った。

「気に食わぬが、認めぬままでいてやる。認めてしまえば、お前が楽になるだけだ」

 カイルは膝をついたまま、しばらく動かなかった。

「……厳しいな」 「神獣なので」

 俺が言うと、カイルは声を出して笑った。

   ■

 結局、俺はその日の夕方、カイルの装備を見た。

 時間がないと言っておいて見たのは、彼が村を出る前に、剣を鞘に納める手つきを見てしまったからだ。

 鞘に入れる前に、彼は布で刃を拭った。

 三年間、一度もやらなかった動作だった。

 やり方はぎこちなくて、拭く方向が逆で、そのままだと刃の脂が柄のほうへ寄ってしまう。

「――カイルさん」 「なんだ」 「拭くの、逆です」

 俺は布を受け取って、切っ先から鍔へ、一方向にすっと引いた。

「こっちです。汚れを刃先に集めないと、鞘の中に残るので」

 カイルは、俺の手つきを見ていた。

 じっと見ていた。

 三年、一度も見なかったものを、初めて見る目だった。

「……もう一回、やってくれるか」

 俺はもう一度やった。

 彼はそれを覚えて、自分でやって、途中で手が止まって、また俺を見て、やり直した。

 三回目でようやく形になった。

「これでいいのか」 「いいです」

 俺は剣を返した。

「あと、留め具は毎朝見てください。朝、装備を着けるときに一度、指で全部触るんです。目じゃなくて、指で」

 カイルは自分の指を見た。

「三年、お前がやってたのは、それか」 「はい」

 彼はしばらく黙って、それから、こう言った。

「――四十日後に、また来る」

 彼は松明を拾い上げた。

「認可が下りてなかったら、俺が親父を殴りに行く。下りてたら、金を払って装備を見てもらう」

 俺は笑った。

「どっちも歓迎です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。