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祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


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わたしを拾ってください

誰も、すぐには言葉が出なかった。

 セリアは自分で言っておいて、自分で真っ赤になって、両手で顔を覆った。

「あ、いえ、その、変なこと言いました、忘れてください」 「セリアさん」 「ごめんなさい、わたし、その、パーティーがあるので、カイルもまだ足が」

 早口になっていく彼女に、俺は聞いた。

「カイルさんの足、どうですか」 「……先月、歩けるようになった」

 セリアは顔から手を離した。

「二週間前から、また潜ってる」 「そうですか」 「わたしは、行ってない」

 彼女は自分の膝を見た。

「潜る前の晩に、カイルが言ったの。『セリア、お前は残ってろ』って」

 焚き火の音だけがした。

「理由は言われた。『前より弱くなった』って」

 セリアは笑おうとして、失敗した。

「実際そうなの。あの日から、わたし、治癒の詠唱が三回に一回失敗するようになって。手が震えるの。……ノアが追い出された日から、ずっと」

 ティナが、そっと彼女の隣に座った。

「一ヶ月、教会の施療院で奉仕してた。パーティーには席があるけど、誰も呼びに来ない。宿代はカイルが出してくれてる」

 セリアは膝の上で手を握った。

「……捨てられてはいないの。捨てられてはいないんだけど」

 彼女は言葉を探して、それから、小さく言った。

「置いてある、って感じ」

   ■

 俺は、その言葉を聞いて、少し考え込んだ。

 俺のスキルには縛りがある。

 持ち主に大切にされているものは拾えない。それは何度も確かめた。

 カイルはセリアを捨ててはいない。宿代を出して、席を残している。だから、たぶん――

「セリアさん」 「うん」 「一回、試させてもらっていいですか」

 俺は手を差し出した。

 セリアは戸惑いながら、その手を取った。

 俺は目を閉じて、いつもどおり、口の中で言った。

「拾う」

 ――何も起きなかった。

 視界も変わらなかった。当たり前だ。

「……駄目でした」

 俺が言うと、セリアの顔が、ぐしゃりと歪んだ。

「駄目、なんだ」 「はい。あなた、捨てられてないです」

 俺ははっきり言った。

「俺のスキル、捨てられたものしか拾えないので。触っても何も視えないってことは、あなたはまだ、あの人たちのものです」

 セリアが、両手で顔を覆った。

 嗚咽が漏れた。

 俺は少し待ってから、続けた。

「だから、セリアさんが自分で戻ってこないと、無理です」 「え」

 彼女が顔を上げた。

「拾えないので、来てもらうしかないです」

 俺は言った。

「うちは人が足りません。明後日までにあと一人いないと、村が取り上げられます」

 俺は手を差し出したままだった。

「セリアさん、うちに来てください」

   ■

 セリアは、長いこと黙っていた。

 焚き火に薪が足されて、火の粉が谷の空に昇っていった。

「……わたし、治癒が三回に一回失敗するの」

 彼女は言った。

「三回に一回成功するんですね」

 ティナが即答した。

「わたし、四千回やって一回も成功しませんでした」

 セリアが、ぽかんとした。

「三回に一回はすごいです。すごすぎます。ここ、怪我人だらけなんです。ミカちゃんは火傷するし、トビーくんは転ぶし、ドルグさんは無理するし、ノアさんは自分の傷を言わないし」

 ティナは指を折って数えた。

「わたし、人は治せないんです。物しか繋げないんです。だから、三回に一回でも人を治せる人が来てくれたら、すごく、すごく助かります」

 セリアが、涙をこぼしながら笑った。

「……ずるい」 「え?」 「そんな言い方されたら、断れないじゃない」

 彼女は御者台から降りた。

 降りて、俺の前に立って、深く頭を下げた。

「セリア・フォルトです」

 声が震えていた。

「聖女です。三回に一回、失敗します」

 彼女は顔を上げた。

「――わたしを、拾ってください」

 俺は首を振った。

「拾えません」

 セリアの顔が固まったので、俺は慌てて付け足した。

「捨てられてないので。だから、拾うんじゃなくて」

 俺は言い直した。

「――ようこそ」

   ■

 その夜、村の広場に、十五人が並んだ。

 リディアが帳簿を開いて、最後の一行を書き込んだ。

 ペンを置いた彼女は、眼鏡を外して、それを袖で拭いて、かけ直した。

 拭く必要があったのかどうかは、誰も聞かなかった。

「――ロスタ集落、人口十五名」

 彼女は言った。

「要件、充足しました」

 ティナが叫んで、ミカが金槌を掲げて、トビーが弟たちと跳ね回って、ロブが顔を覆って、カル爺さんが荷車の上で「馬鹿もんが」と言いながら泣いていて、ドルグが空を仰いで、ゼロが「記録します」と言って、ボロが「腹が減った」と言った。

 俺は、その全部を、少し離れたところから見ていた。

 十五人。

 全員、どこかで一度、要らないと言われた人間だった。

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