↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝5.000pv!【拾い物】しか能がない俺、役立たずと勇者パーティーを追放されたので、みんなが捨てたものを拾って生きていく  作者: 音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/73

十五人目

ロブが村に来て、十四人になった。

 残り一人が、いちばん遠かった。

 トビーが最後に挙げた名前は、ミルク一家だった。

 夫婦と娘の三人で、三年前に南の農村へ移り、去年そこを追われて、それから消息が途切れている。

「三人来れば、十七人になります」

 リディアが帳簿を叩いた。

「余裕を持って要件を満たせます。ですが、行方がわかりません」

 期限まで、あと九日だった。

   ■

 俺は宿場町のギルドに戻って、掲示板の前に立った。

 依頼を出すことにしたのだ。

 人探しの依頼で、報酬は銀貨五枚。俺たちが出せる限界だった。

 依頼票を書いていたら、後ろから声がした。

「――ノア?」

 振り返ると、セリアが立っていた。

 前より痩せていたが、顔色は前より良かった。

「セリアさん」 「あなた、また村の話?」 「人を探してます。三人」

 俺が依頼票を見せると、セリアは名前を読んで、少し目を細めた。

「ミルク……この名前」

 彼女は思い出そうとして、それから、はっとした顔になった。

「教会よ」

「え」 「領都の教会の、施療院。去年の冬、南から流れてきた家族が入ってた。夫が肺をやられてて」

 セリアは早口になった。

「わたし、そこで奉仕してたの。カイルが動けない間、することがなくて」

 俺は依頼票を握った。

「今も、いますか」 「わからない。でも、聞ける」

 セリアは頷いた。

「わたし、行ってくる」 「いや、それは」 「ノア」

 彼女は俺の言葉を遮った。

「三年前、わたしが何もできなかったのは、わたしが弱かったからじゃなくて、何をすればいいか思いつかなかったからなの」

 セリアは自分の胸を押さえた。

「今、思いついた。だから、行かせて」

   ■

 四日後、ミルク一家が村に着いた。

 夫は痩せて咳をしていて、妻は夫を支えていて、娘は十二歳くらいで、母親の袖を掴んで離さなかった。

 彼らを乗せてきた荷馬車の御者台に、セリアが座っていた。

「馬車代、いくらでした」

 俺が聞くと、セリアは肩をすくめた。

「銀貨四枚」 「払います」 「いい。わたしが払いたかったの」

 彼女は御者台から降りずに、村を見回した。

 井戸端でカル爺さんが座っていて、その隣でティナが薬草を刻んでいた。

 鍛冶場ではミカとロブが並んで金槌を振っていて、二人の打つ音が、ずれながら重なっていた。

 畑ではドルグとトビーが畝を起こしていて、その脇でゼロが黙々と石を運んでいた。

 ゼロが持ち上げている石の量は、明らかに人間の三倍あった。

 広場では、リディアが木箱を机にして帳簿をつけていて、ボロがその上で寝ていて、時々払い落とされていた。

「……ノア」

 セリアが呟いた。

「ここ、何なの」 「村です」 「そうじゃなくて」

 彼女は口ごもって、それから言った。

「……みんな、顔が違う」

「違いますか」 「うん」

 セリアは笑った。

 少し泣きそうな笑い方だった。

「わたしが知ってる『使われてない人』の顔じゃない」

   ■

 その夜、リディアが帳簿の頁を開いて、みんなの前で読み上げた。

「ロスタ集落、現在人口」

 彼女は指で数えた。

「ノア、ティナ、ミカ、ドルグ、リディア、ゼロ。以上六名」

 ボロが「我を数えろ」と抗議して、無視された。

「カル、トビー、トビーの弟二名。以上四名、合計十名」

 彼女は次の頁をめくった。

「ロブ、以上一名。合計十一名」

 ミルク一家の三人が、居心地悪そうに身を寄せていた。

「ミルク家三名。合計、十四名」

 ――十四。

 広場が、しんとした。

 一人、足りなかった。

「……あと一人」

 ティナが呟いた。

「あと一人だけ」

 期限は、明後日だった。

 誰も何も言えないまま、焚き火の薪が爆ぜた。

 その沈黙を破ったのは、御者台に座ったままだったセリアだった。

「……あの」

 彼女は手を挙げた。

 全員が振り返った。

「あの、これ、聖女って、人口に入りますか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。