表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/79

第六十七話 総マスター来訪

数日後。


静かな村へ、一台の馬車が到着した。


冒険者ギルド本部の紋章が刻まれた馬車。


それを見たギルド職員たちは一斉に姿勢を正す。


馬車から降りてきたのは。


冒険者ギルド総マスター。


アルドリック・ヴァン・グレイ。


そして。


その隣には。


右腕であるエルフ、フィリアの姿もあった。


ギルドへ入るなり。


アルドリックは受付にも寄らず、一直線に奥へ向かう。


執務室。


ノックもそこそこに扉を開ける。


「よう」


書類仕事をしていたガルドが顔を上げた。


「アルドリックか……」


アルドリックは椅子へ座ることもなく言った。


「ちょっとツラ貸せ」


「……分かった」



三人はギルド裏手の訓練場へ移動する。


周囲には誰もいない。


それを確認すると。


フィリアが杖を取り出した。


淡い光が広がる。


防音結界。


盗聴防止。


探知阻害。


複数の魔法が重ね掛けされる。


「これで大丈夫です」


フィリアが頷く。


アルドリックも腕を組んだ。


細かい前置きは苦手である。


だからこそ。


いきなり本題へ入った。


「ガルド……お前、勇者を匿ってたそうだな」


ガルドは黙って頷いた。


否定する意味はもう無い。


アルドリックは苦笑する。


「まさか俺のギルドで勇者が受付嬢やってるとは思わねぇよ。灯台下暗しってやつだな」


ガルドも苦笑するしかなかった。


「俺も最初は勇者に受付嬢が務まるとは思っていなかったがな」


「だろうな」


アルドリックは納得する。


勇者。


世界中が探していた人物。


その本人が。


地方の小さな村で受付嬢をしている。


誰が想像するだろうか。


アルドリックは隣へ視線を向けた。


「フィリア。王都で何があった?」


フィリアは静かに答える。


「領主夫人の裁判が行われる為、事前に領主館での勇者が現れた事については、話してありました。裁判後にガルドさんが勇者を匿っている事について話しました」


ガルドは黙って聞いている。


その件については。


既にフィリアから事前に伝えられていた。


アルドリックが眉をひそめる。


「何で話した?」


フィリアは真っ直ぐ答えた。


「どのみち、この件はガルドさんと総マスターが話し合う必要がありました。もし総マスターだけが何も知らなければ、誤解から戦闘へ発展する可能性もありました」


アルドリックは数秒黙った後。


小さく笑う。


「まあ、そうだろうな。確かに、何も知らねぇ俺なら力尽くで探そうとしたかもしれねぇ」


「その可能性は高かったでしょう」


フィリアも否定しない。


だからこそ。


先に話した。


アルドリックは再びガルドを見る。


「で、当の本人はどうしてる」


ガルドは短く答えた。


「寝てるよ」


「……寝てる?」


「ほとんど一日中な」


ガルドはため息を吐いた。


「あの日からだ。転移術式やら何やらで、反動で内臓をやられてな……起きても数時間が限界だ。仕事なんざ到底無理だ。今は寝て、少し起きて、また寝る生活を繰り返してる」


「看病は?」


「エリナ嬢が全部やってくれてる」


フィリアは静かに頷いた。


「そうですか……」


ガルドは続ける。


「あと、リリアもまだ起きねぇ」


アルドリックとフィリアの表情が変わる。


「別室へ寝かせてる。ミサが領主館で撃ち込んだ術式弾の影響だろう。意識は戻らねぇし、呼び掛けても反応無しねぇしな」


部屋は静まり返る。


アルドリックはゆっくり息を吐いた。


「勇者は寝たきり。リリアは昏睡状態……本当に、ろくでもねぇ事件だな」


誰も、その言葉を否定できなかった。


【作者からのお願い】

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマーク登録をお願いします。

本作を評価していただけるととても励みになりますので、嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ