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第六十六話 三者会談

領主夫人の裁判が終わった。


傍聴席の者たちも次々と退席し。


重苦しかった法廷にも、ようやく静けさが戻る。


しかし。


事件そのものは何一つ終わっていなかった。



ヴァルディア王国。


王城最上階。


限られた者しか入室を許されない貴賓室。


重厚な扉が静かに閉まる。


部屋の中には。


ヴァルディア王国国王。


オズワルド・エルンスト・フォン・ローゼンクロイツ。


聖王国サンクトゥス・セレスティア聖女。


セレスティア・ルクス・セラフィナ。


そして。


冒険者ギルド総マスター。


アルドリック・ヴァン・グレイ。


ヴァルディア王国。


聖国アウレリア。


冒険者ギルド。


三勢力の最高責任者が顔を揃えていた。


誰も。


すぐには口を開かなかった。


今回の事件は。


あまりにも規模が大きすぎた。


暗殺未遂。


暗殺ギルド壊滅。


領主館襲撃。


多数の死傷者。


ヴァルディア王国と聖王国サンクトゥス・セレスティアの外交問題。


一つだけでも国家を揺るがす事件である。


それが短期間で立て続けに起こった。


やがて。


オズワルドが深く息を吐く。


「……疲れた」


その一言に。


セレスティアは苦笑した。


「私も同感です」


アルドリックも肩を竦める。


「俺もだ」


三人とも。


珍しく意見が一致した。


しかし。


その空気はすぐに消える。


セレスティアは静かにアルドリックへ視線を向けた。


「では、本題へ入りましょう」


「冒険者ギルド総マスター」


「はい」


「リリア・エル・セラフィナは現在どこにいますか?」


部屋の空気が張り詰める。


アルドリックは少しも表情を変えなかった。


「知らん」


短い返答だった。


セレスティアは静かに加護を発動する。


真偽判定の加護。


相手の言葉が真実か虚偽かを判別する加護。


淡い光がアルドリックを包む。


数秒。


沈黙。


やがて。


光は静かに消えた。


セレスティアは小さく息を吐く。


(……真実)


アルドリックは。


本当にリリアの所在を知らない。


隠している訳でも。


庇っている訳でもなかった。


オズワルドも腕を組む。


「フィリアからの報告では」


「領主館で戦闘中、勇者と思われる人物が現れ、リリアを連れ去った」


「それだけだったな」


セレスティアは静かに頷く。


「はい」


フィリアから提出された報告書。


そこに書かれていた内容は極めて簡潔だった。


深いフードを被った人物が現れた。


リリアを抱き締めた。


そして。


転移陣を展開し。


リリアを連れて姿を消した。


それ以上は。


何も報告されていない。


フィリア自身も。


それ以上は何も語らなかった。


アルドリックは静かに口を開く。


「つまり、お前たちも知らないってことだな」


「はい」


セレスティアは素直に認めた。


「リリアの現在地は不明です。勇者の所在も依然として不明。私たちが把握しているのは、あの日、勇者と思われる人物がリリアを連れ去ったことだけです」


再び沈黙が流れる。


オズワルドは深く椅子へ身体を預けた。


「結局」


「今回最大の当事者二人とも、行方不明か」


誰も否定しない。


アルドリックも静かに腕を組み直す。


「……厄介な話だ」


部屋の空気は重い。


今回の事件は終わった。


だが。


リリアは行方不明。


そして。


勇者もまた。


依然として消息不明。


三人とも。


今回の事件が終幕ではなく。


新たな始まりであることだけは。


嫌というほど理解していた。


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