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第二十三話 知らない間の大活躍

翌日。


休暇を終えたミサは、いつも通り冒険者ギルドへ出勤した。


「おはようございます」


営業スマイル。


完璧である。


だが。


出勤して早々。


「ミサ」


奥から声が飛んできた。


ギルドマスター、ガルドだった。


「何でしょう?」


「ちょっと来い」


嫌な予感しかしない。


ミサは内心でため息を吐きながら、ギルドマスター室へ向かった。


部屋へ入るなり。


ガルドは開口一番こう言った。


「お前、領主館で何やった?」


「何の話ですか?」


即答だった。


ガルドが眉をひそめる。


「本当に知らねぇのか?」


「だから何の話です?」


ミサは首を傾げる。


その反応を見てガルドも察した。


どうやら本当に何も知らないらしい。


「お前が会った新米騎士いただろ」


「ああ」


訓練場で自主練していた騎士。


あの若者のことだろう。


「その騎士がどうかしたんですか?」


「騎士団大会で優勝した」


「そうですか」


反応は薄い。


「剣断ちなんて二つ名まで付いた」


「へぇ」


やはり薄い。


ガルドは額を押さえた。


「もう少し驚け」


「努力してましたし」


ミサは素直に答える。


「結果が出たなら良かったじゃないですか」


本当にそう思っていた。


だからこそ。


ガルドはため息を吐く。


「で?」


ミサが尋ねる。


「それと私に何の関係が?」


「お前が教えたんだろ」


「何をです?」


「纏いだ」


そこでようやく話が繋がった。


「ああ」


ミサは納得したように頷く。


「少しだけですよ」


「少しか?」


ガルドが睨む。


「小僧の纏い、薄刃化してたぞ」


その瞬間だった。


ミサが初めて少しだけ目を丸くした。


「……薄刃化?」


「出来たんですか?」


今度は本当に驚いていた。


ガルドは呆れた顔になる。


「お前、本当に知らなかったのか」


「知りませんよ」


ミサは肩を竦める。


「私が教えたのは武器に魔力を纏わせるコツだけです」


「剣の強度を上げられれば上出来だと思ってましたし」


「良くて切れ味が少し上がる程度かと」


ガルドは深いため息を吐いた。


「結果は名剣をぶった斬る化け物だ」


「へぇ」


ミサは素直に感心した。


「それは凄いですね」


しかし。


その反応もどこか他人事だった。


ガルドはそんなミサを見て言う。


「興味なさそうだな」


「別に私の成果じゃありませんから」


即答だった。


「出来たのは本人です」


「私は一回見せただけですよ」


ガルドは腕を組む。


「普通はその一回で出来ねぇんだよ」


「そうなんですか?」


「そうなんだよ」


ガルドは呆れた。


だがミサは本当に知らなかったらしい。


少し考え込み。


そして答えた。


「なら才能があったんでしょうね」


あっさりした結論だった。


「少なくとも私の予想以上だったのは確かです」


訓練場で会った時。


真面目な騎士だとは思った。


だから多少は上達すると思っていた。


だが。


まさか形状変化にまで辿り着くとは思っていなかった。


纏いそのものが難しい。


剣に魔力を維持するだけでも十分に難しいのだ。


だからこそ。


「頑張ったんですね」


ミサはそう言った。


心からの感想だった。


ガルドはその顔を見る。


無自覚なのではない。


単純に興味が無いのだ。


教えたことがどう育ったか。


その結果がどうなったか。


そこに執着しない。


出来たなら出来た。


出来なかったなら出来なかった。


その程度にしか考えていない。


そして何より。


ミサはその成果を自分のものだと思っていなかった。


「お前らしいな」


ガルドは苦笑する。


「そうですか?」


「そうだよ」


ミサは首を傾げる。


結局。


話はそれで終わった。


ガルドもこれ以上追及する気は無い。


ミサも特に聞くことは無い。


「じゃあ戻りますね」


「おう」


ミサは立ち上がる。


そして扉へ向かった。


「それにしても」


扉の前で足を止める。


「優勝ですか」


少しだけ笑った。


「良かったじゃないですか」


それだけ言い残し。


営業スマイルの受付嬢へ戻っていった。


扉が閉まる。


部屋に一人残されたガルドは椅子にもたれかかった。


「本当に興味ねぇんだな……」


苦笑する。


だが。


それもまたミサらしい。


教えたことを誇らない。


成果を横取りしない。


努力した本人を評価する。


だからこそ。


あの騎士も口を割らなかったのだろう。


「ま、好きにしろ」


そう呟き。


ガルドもまた仕事へ戻るのだった。


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