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第65話 白い隙間

黒いドロドロが根を這い上がって来る。

じわじわと近づく。止まらない。

足の裏に振動が来る。

嫌な感じだ。


遥か頭上の白い隙間。

そして...ここからあそこまでには、ヨルムンガンドの巨大な胴が幾重にも巻いている。

それを登って行かねばならない。


トールが振り向いた。

「登るぞ」


人間の俺たちはどうやって...


「颯太」

振り向く。

雪乃がこっちを見ている。

立っているのも苦しそうだ。

でも、目ははっきりしている。

俺はうなずく。


トールがマントの両端をつかんで胸の前で結ぶ。

慣れた手つき。

「入れ」


マント袋...あの中か。

一瞬ためらう。

でも...

「行こう」

雪乃がふらつきながら入るのを支えてから俺も続く。


中は狭い。密着する。

今はそれどころじゃない!

トールが立ち上がる。

体が持ち上がりバランスが崩れ雪乃が俺の前で横倒しになりかける。

そっと起こし、肩に手を回して支える。


トールがヨルムンガンドに手をかけ、グイグイ登る。

速い。上下に振られる。

雪乃の息がすぐ近くにある。

「大丈夫?」

「うん」

懸命に耐えている。

トールはヨルムンガンドの一番上に巻いている胴に到達した。

近くでシャールヴィとレスクヴァの声が聞こえる。

ウトガルド城の巨人のテーブルをヒョイヒョイ登った彼らだ・


ヨルムンガンド一番上に降ろされた。

足がぐらつく。

目の前には根の間の広い隙間。奥は白く輝いている。

シャールヴィとレスクヴァそしてヤギたちも集まって来た。


トールを先頭に白い隙間に入る。

しかし、ヤギたちが動かない。

シャールヴィが手を伸ばす。

「来い」

ヤギが一歩出るが足を踏ん張り、入ろうとしない。

シャールヴィとレスクヴァが宥めるが、ヤギたちは首をのけ反らせて拒む。


来ない。

「駄目か...」レスクヴァがつぶやく

下を見ると、黒いドロドロがヨルムンガンドを呑み込むようにして上がり、もうすぐそこまで来ている。

時間が無い。


「これまでか...」シャールヴィがヤギの顎をなでる

「ありがとう」レスクヴァの目が濡れている

雪乃もヤギの頬を撫でた。

ヤギが鼻を鳴らす。

そして、向きを変え、根の束を駆け上がって行く。


この白い隙間は、ヤギたちには入れない世界なのか。

生き延びてくれ......


「行こう」シャールヴィの声が揺れている

俺はうなずき、皆、白い隙間へと入った。

中は高さはあるが幅は狭い。

壁が近い。白く乾いている。


奥から音がする。ドク...ドク...

脈みたいな音。

空気が違う。冷たくて重い。


後ろを見ると、黒いドロドロが入口まで来ている。

でも、そこで止まっている。

「入って来ない...」

「全部ではない」ロキの静かな声


前を見ると人の影。複数いる。

道を塞いでいる。


敵なのか? 足が止まる。

その時、雪乃が俺の腕をつかんだ。

「行こう」

その一言で足が出る。


トールが進む。

影たちにぶつかる。

俺たちも続き、影の中を抜ける。

体中に触れる。

冷たい。曖昧な形。

無数の手が体に触れて来る。

でも、俺たちは止まらない。


白い隙間の奥へ。

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