表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/65

第42話 巨人の広間

門の内側の広場は、思っていたよりも静かだった。


風がゆっくり流れている。

巨人の焚き火から煙が、石の壁の上の方へ立ち昇り、消えていく。

広場の石は黒く、よく踏み固められている。


スクリューミルはそのまま城の奥へ歩いていく。

ドォォン。ドォォォン

城の中でも振動が伝わる。

高い城壁から音が少し遅れて返ってくる。


広場の奥には建物があった。

巨人の建物なのだろう。

石を積んだ長い建物。

がっしりした形で屋根は低く見えるが、高層ビルのように高い。

洞窟みたいに黒い入口が口を開けている。


「ねぇ、あの奥に入るの?」レスクヴァが口を尖らせて聞いた

「まぁ、入るだろうな」ロキが肩をすくめる


スクリューミルが入口の前で止まって振り返った。

「来い」


トールがヤギを止めた。

「皆、降りろ」

俺たちは荷車から降りる。不安が湧き起こる。

石の地面が冷たい。靴越しから底冷えが伝わる。


ヤギたちはその場で草を探し始めた。

巨大な敷石の隙間から白くて元気のなさそうな草が必死に生えている。


ヤギと荷車を置いて、俺たちはスクリューミルの後ろを歩いた。

入口をくぐると、奥はさらに薄暗い。

なぜか、外よりもさらに冷え冷えとした空気。


石の匂い。煙の匂い。そして...

肉の匂い。


目が慣れてきた。

そこは広間だった。

長い石の床。天井は高い。

遥か頭上に梁が何本も渡っている。


そして広間には椅子が並んでいた。

巨人の椅子だ。

一つ一つが、ビルのように大きい。

さっきの椅子より造りが上等な感じ。


「あんな大っきな椅子、座れないよ〜」レスクヴァが呆れた顔で言った

「登れば座れる」ロキが笑った


その椅子の列が巨大な石のテーブルを囲んでいる。

まるで巨大な船のようだ。

大巨人が何十人も食事できそうな大きさ。

まだ距離が遠いから、テーブルの上の物がなんとか見える。

テーブルの上にあるのは食べ物のようだ。


テーブルに目をやっていたら、

広間の奥に、巨人たちがいることに気がついた!

十人...いや、もっといる。

うわぁうわぁ!怖い。トール、スクリューミルはどうするつもりなんだ!?


背の高い影が広間に並んでいる。

巨人達がこちらを見た。

暗い眼差し...

巨人たちが何かボソボソと話し始めた。

彼らにとっては小声なのかも知れないが、幾つものボソボソ声が重なって、空気を重く複雑に振動させる。細くと頭が痛い...


ところが...

なんと!レスクヴァが巨人達に手を振った!

「こんにちは〜!」


巨人の一人が眉を上げた。

スクリューミルが広間の中央まで歩く。

ドォォン。ドドォォン。

その音で巨人たちの会話が止まった。

奥の椅子に、誰かが座っていた。

その椅子には威厳が漂っている。

黒光りする木材を力強くそして美しく削り上げた模様が彫ってある。

そこに座っているのは、まさに王なのだろう。巨人の王。


スクリューミルよりも少し細いが、背はもっと高そうだ。

長い顔。鋭い眼差し。まるで木彫りの彫刻のように荒々しく、そして厳かな顔立ち。

その巨人がゆっくり言った。

「スクリューミル」声は低く、静かだ。


スクリューミルが答える。

「客だ」

そして、こちらを指した。


広間の巨人たちがざわめいた。

「人間か?」

「神もいる」

「雷の奴だ」

トールを見ている。

神?トールは神なのか!?


巨人たちのつぶやきを制するようにロキが言った。

「歓迎はしてくれるのか?」そして顔を歪め、ヒッヒッヒと笑っている


奥の王らしき巨人が目を細めた。

「もちろん。...ここはウトガルドだ」


広間の空気が変わった。

巨人たちの目が光る。

まるで何かを待っているみたいだ。


「ここは...試される場所のようね...」雪乃が小さくつぶやいた

俺はゾッとして彼女を見た。


雪乃は巨人たちではなく、

奥の巨人...

巨人の王を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ