表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/64

第41話 黒い壁

この土地の朝の空気も冷たかった。


タングニョーストが鼻を鳴らした。

タングリスニルも首を振る。

二頭のヤギは霜のついた草をむしって食べている。


シャク。シャク。

「よく食うなぁ。さっきからエンドレスだ」俺が言うと、

「働く前は食うものだ」トールが厳かに言った

そして、ヤギの手綱を軽く、クイックイと引く。


「行くぞ」

ヤギが歩き出した。

荷車がギシィ...ときしむ。

前ではスクリューミルがすでに歩き始めている。

ドォォン。ドォォォン。

巨人の足音が遠くで響く。


それでも昨日より揺れは弱い。

歩く速度を合わせ、静かに足を下ろしてくれているらしい。


レスクヴァが荷車の横板から身を乗り出して、

「やっぱり、あの巨人優しいよね」

「気まぐれだ」ロキが言う。

「気まぐれでも優しいよ」レスクヴァはニコニコしている


しばらく進んだ頃だった。

遠くの地平線に、黒いものが見えてきた。

最初は黒っぽい影のように霞んでいた。

「山...かな?」俺は目を細めて見る

「でも、変」雪乃も横で見ている

「変?」

「線がまっすぐ」雪乃が腕を前に伸ばし、左から右に指先で虚空に水平の線を引いた

言われてみると確かにそうだ。山なら、もっと形がガタガタしている。

そしてあれは一直線。

得体が知れない。不気味だ...



荷車は進み続ける。

スクリューミルは、ためらうこと無く、その黒いものに近づいていく。


でも、近づいているはずなのに、それは大きさがほとんど変わらない。

「まだ遠いんだな」俺はつぶやいた

「大きいんだ」ロキが笑った。


まだ距離が遠かった時、地平線との境が曖昧だった巨大な黒い壁のような存在は、

ようやく下の方も見えてきた。


山脈のようなスケールの城壁だ。

水平で垂直の長い壁。

黒っぽい巨石を積み上げた、とてつもなく高い壁。

まっすぐ空へ伸びて、上の方は雲の中に消えている。

どのくらいの高さなのだろう。見当がつかない。


そして...門があった。

巨大な門。

大巨人のスクリューミルがその前に立つ。

しかし、門はさらに大きい。

「でかい...」俺は見上げてつぶやいた。開いた口が塞がらない

「おっきいねぇ」レスクヴァもぽかんとしている


スクリューミルがゆっくりと振り向いた。

「ここだ」声の振動が落ちてきた。


「ウトガルドか」ロキが目を細めた

スクリューミルがそれにうなずいた。


トールが何も言わずミョルニルの槌を持ち直す。

しかし、少しだけ眉をしかめている。


ここに入るのか?

入って良いのか?人間が...

俺は城壁の扉に圧倒されながら思った。


雪乃が隣で小さく言った。

「城...なのかな」

その声は落ち着いている。怖がってはいない。ただ観察している。

怖いものを知らないのか、それとも怖いものに耐えてきた強さなのだろうか?

いつも雪乃は控えめで言葉数も少ないのに、時々不思議な強さを感じる...


その時。

門が動き始めた。

わずかに間を置いて、

ギイィイィィィ...

重く深く、きしむ音が轟いた。

そして

ゴゴゴゴゴ...

振動で地面が激しく震えた。


巨大な門が開いていく。隙間がゆっくり広がる。暗い城の中が見えた。

そして、スクリューミルが歩き出す。

ドォォン。ドオォォン。ドォォン

門をくぐる。


俺たちは荷車でその後ろを進み始めた。

門の下に入ると、中は薄暗かった。

昼なのに暗い。

高い壁が太陽を遮り、内側には明るさが届かない。


門を抜けた先は広場だった。

広い。東京の皇居の広さは知らないけれど、そのくらいの広さがありそうだ。

広場の中ほどに、ビルみたいに大きな椅子が並んでいる。

その前に巨大な焚き火が煙を上げている。


「無駄にデカいわ!こんなに広くで何するの?」レスクヴァがつぶやいた

「巨人のだからな」ロキが笑った

俺は雪乃を見た。

雪乃は周りを見渡している。

好奇心だろうか、その瞳に光が瞬いている。


ロキが小さく言った。

「面白い場所だぞ、ここは」


俺も城の中を見渡した。

ここでは何かが起きるのかもしれない。

悪い予感か恐怖なのか、胸がドキドキしてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ