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第40話 巨人の背もたれ岩

大巨人スクリューミル歩き続ける。

ドォォン。ドォオン。ドォォン。ドォオォン

スクリューミルの足が地面を踏むたび、大地がゆっくり縦に揺れる。

最初は驚いた振動も、しばらくすると体が慣れてくる。

船の上にいるみたいだ。


そしてヤギの荷車はきしみ、進み続ける。

タングニョーストが鼻を鳴らす。

脚はまだ少しかばっているが、歩みは安定している。


「頑張ってるなぁ」俺がつぶやくと、

「ヤギは丈夫だ」トールが短く言った

そして、

「ここには草がある。休憩だ」と言ってヤギの歩みを止めた


タングニョースト、少しずつ回復してるのかな...


ヤギが枯れ草をむしって食べ始めた。

シャク。シャク。シャク。シャク...

雪乃がその様子を見て微笑む。

その横顔を見て、俺は何だか安心した。

さっきまでは巨人の足跡の池で遊んでた彼女、

今はヤギたちを見て楽しんでいる。

この人、順応性があるみたい。心がタフだ...

こんなに繊細な雰囲気なのに。


前を行くスクリューミルが、急に止まった。

ドォン!!!

地面が大きく上下した。

俺たちの荷車もぐらりと揺れた。


「止まった」シャールヴィが前方を見上げる


巨人はゆっくり振り向いた。

低い雲の影の中で、巨大な顔がこちらを見ている。

「おれも休む」重たい声が空気を揺らした。


そしてスクリューミルは、近くの大岩のそばに腰を下ろした。

ドドォォォン

今度はもっと地面が揺れた。


その大岩は、俺たちにすれば丘か小山だが、巨人にとってはどうやら座椅子らしい。


「背もたれ岩か」ロキが目を細める

「デッカいもんね」レスクヴァが目を丸くして笑う


スクリューミルが背から袋を下ろした。

ドォォォン。

袋はやっぱり巨大だ。


スクリューミルはその袋を枕がわりにして、岩にもたれた。

「ウトガルドは遠い」ぼそりと言ってから、静かになった。

寝たのかと思ったが、目は開いている。

どうやらただ休んでいるだけらしい。

俺たちはその少し離れた場所で荷車から降りて休憩の準備を始めた。


シャールヴィがすぐ火の準備を始める。

石を並べる。そして乾いた草。細い枝。

カチカチカチッ。火打石が鳴り火花がはじける。

乾いた草に小さな炎が生まれた。

そして、炎はすぐに育った。


「早いな」俺が言うと、

「普通、普通♪」シャールヴィが得意げに笑った


袋から取った肉を火にかける。

ジュッ、ジュジュジュ〜ッ

脂が落ちて、火がメラメラと暴れる。

いい匂い。


ロキがどこからともなく現れた。

そういえば、さっきまでいなかった。


「いつも食事の準備が出来た頃に現れますね」俺が言う。

「腹の勘だ」ロキが肉をひっくり返す。

ジュウゥゥゥ...

レスクヴァは焚き火のそばにしゃがみ、肉の焼ける様子をじっと見ている。

目がきらきらしている。

「まだ?」

「まだだ」

「まだ?」

「まだだ」

シャールヴィが笑って答える。


雪乃は火に手をかざしている。

焚き火の光で、目が輝いている。

ボブの髪が風に揺れて、白い首筋が現れた。

乱れた髪を指で耳にかける。

何でもない仕草なのに、ドキッとしてしまった。

気付いたのか、雪乃がこっちを見た。

目が合う。

「あ...」俺は慌てて肉を見るふりをした。

雪乃は不思議そうな顔をして少しだけ笑った。


その時...

ゴゴゴ...ゴゴゴ...

低い音が轟いた。

地面がわずかに震える。


俺たちは顔を上げた。

スクリューミルが体勢を変えただけだった。

巨人は腕を組み、こちらを見ている。

「小さいの」重低音の声の振動が落ちてくる。

「食っているのか」

「食っている」ロキが答える。


スクリューミルは少し考えた。

「いい匂いだ」

「お前の袋の肉だ」ロキが笑った


巨人はしばらく沈黙してから言った。

「そうか」


それだけだった。


焚き火の上で肉が焼ける。

ジュウ...


煙がゆっくり空へ流れて行く。

遠くでは巨人が休んでいる。

巨大な影が夕方の空を覆っている。


俺は肉を更にかじった。

熱い。でも美味い。今度はマグロのステーキみたいな味だ。

雪乃が隣で小さく息をはいた。

「おいしいね」

それを聞いて、俺はまた嬉しくなった。

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