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第39話 巨人の歩幅

大巨人...スクリューミルが歩く。

ドォン。ドォォォン。ドォオン

一歩ごとに、地面が縦に揺れる。


俺たちはその少し離れた後ろを進んでいた。


ヤギの荷車が軋む。

ギィ...ギギィ...

タングニョーストはまだ脚をかばっているが、歩けないほどではないらしい。

不自由なりに確実に進んでいる。


前を見る。スクリューミルの背中が遠い。

割合近くにいるはずなのに、遥か彼方のようにも見える。

ここは距離の感覚が以前よりもっと変かもしれない。


足音ふだけはリアルにものすごい。

ドォオォォン。ドォオォォォォン

その振動が遅れて体に伝わる。

周りの地面の砂が跳ねる。


「止まない地震みたいだね」雪乃がスクリューミルを見上げ、震える大地を見下ろして言った

「すごい!揺れるね〜〜〜!」レスクヴァは楽しそうだ

荷車の上で飛び跳ねている。


「落ちるぞ」ヤギたちを操るトールが珍しく振り向いた

レスクヴァは慌てて座った。


スクリューミルは歩きながら、時々こちらを振り向く。

その動きだけで、空気が流れる。

「小さいの......遅いな」大気を震わせて太い声が落ちてきた

「お前が速過ぎる」ロキが笑った


スクリューミルは何か考えているようだ。

あれほど巨大でも、どこか人間味がある。

そして...

歩幅を小さくした。

ドォン。ドン。

さっきより揺れが弱くなった。

「優しい!優しい!優しい!」

レスクヴァが歓声を上げて、荷車の上でぴょんと跳ねた。


「ただの気まぐれだ」ロキが無関心な顔をして言った


周りの景色はなかなか変わらない。

低い丘。大岩。がれ場。枯れた草。

そして、スクリューミルの歩く道には深い足跡が残る。


俺はその一つを覗き込んだ。

穴。雨が降ったら池になるな。

あの深さ!俺が落ちたら、出られないかもしれない。


「水!」レスクヴァが荷車から飛び降り、スクリューミルの足跡の大穴を駆け降りて行った!猫が走るように軽快に


なんて女の子なんだ!


つられて俺と雪乃とシャールヴィも足跡の斜面に足を踏み入れ、レスクヴァのいる穴の底に降りた。

少し水が溜まっている。

手を突っ込んでみる。

「おー、冷たい!」

「入るなよ〜」シャールヴィが呆れた顔をする

しかし、レスクヴァはもう膝まで入っている。

バシャパシャと両手で水をすくってこっちに飛ばして来る。

プールかよ。


雪乃が横に来て笑った。

その笑い声は小さい。でも、何だか暖かい。

ツヤツヤしたほっぺたに横髪が幾筋か張り付いている。


俺は思った。この旅は危ないことばかりだ。

人間離れしたデカい人、雷を落とすし。巨人。巨獣、寒さ、凍結、裂け目。大巨人...

どこだか知らない世界。

でも...

隣に雪乃がいる。

それだけで少し安心する。


スクリューミルは、遠くで立ち止まった。

こちらを見ている。

「小さいお前ら」

声が遠くから降って来る。

「遅い」


「景色を見てる」ロキが答えた。


スクリューミルはまた考えている。そして言った。

「景色?」


「お前には分からんだろ」ロキが笑う。


スクリューミルはしばらく動かず...

そして、肩をすくめた。

それだけでも山崩れみたいな迫力だ。


そして...

「ウトガルドは遠い」スクリューミルがボソリと言った。

ドォン。ドォオン。ドォン。ドォオォォン

また歩き始めた。


ヤギが踏ん張り、荷車が揺れ、ギシッときしみ動き出した。


俺たちはまたスクリューミルの背中を追った。

巨人の歩幅は大きい。

その足跡は、まっすぐ北へと向かっていた。

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