161話 冷膳さんそれで良いのか?オイ!
冷膳さん完全復活!
俺はホッと胸を撫で下ろした。
・・・やっと元気になってくれて良かったよ。
≪そうね。でも実際には完全復活じゃないから、引き続きマイナスの刺激には気をつけなさいよ?≫
・・・え、そうなの?もう元気そうだけど?
≪そう見えるだけよ。まあ実際、元気にはなってるんだけど、それは上辺だけで、心の傷が癒えた訳じゃないんだからね?≫
・・・分かった。じゃあそっとしておいた方が良いな。
俺は冷膳さんへ笑顔を返した。
「元気になって良かったよ!なあ?ネル」
「そうだな・・・冷膳、良かったな。まあ私の旦那様に任せておけばザッとこんなもんだよ!」
ブルーネルはそう言って胸を張った。
そりゃブルーネルも絶望的な状況から俺に助けられた訳だし、共感出来るんだろうな。
でも、冷膳さんはなぜか『旦那様』って所に反応していた。
「旦那様・・・か・・・2人は本当に結婚してるんだな・・・」
「改めて言われるとなんだか照れるな。けどまあ本当の事だよ・・・じゃあ、俺達はそろそろ部屋を出るよ。何かあれば部屋の外にいるから、遠慮なく呼んでいいからな?行こうか、ネル」
そう言って部屋を出ようとすると・・・
「待って!」
冷膳さんに呼び止められた。
「ん?どうした?」
「まだ・・・一緒にいて欲しいんだけど?・・・ダメかな?」
「でも3人もいたら窮屈だろ?」
「狭くないよ?ってか、今は窮屈な方が良い」
「じゃあ、ネルに付き添って貰うか?」
「違うんだ・・・海月に・・・居て欲しい」
「え?俺にか?」
「・・・うん」
≪この子、カガリと離れるのがかなり辛いみたいね。またマイナスの刺激が高まって来てるわよ?≫
・・・俺と離れたくないって、どういう事だよ?なんでネルじゃダメなんだ?
≪どういう事って、そりゃ好きって事でしょ?チャンスじゃない!ここで一気に口説いてゲットしちゃいなさい!≫
・・・だから口説かねえってば!
≪まーた良い子ぶっちゃって!さっき、この子の笑顔にドキッとしてた癖に!≫
・・・そりゃ仕方ないだろ?めちゃくちゃ可愛いかったんだからさ!
そんな脳内会話をしていると、ブルーネルがとんでもない事を言い出した。
「じゃあ冷膳、お前も旦那様と結婚するか?」
「え?」
「そうそう冷膳さんも俺と結婚・・・って、はあああぁぁぁ???ちょっと何言っちゃってるんだよネル!?」
「だって旦那様と一緒に居たいって、つまりそういう事なんじゃないのか?それに旦那様、さっきコイツの笑顔にドキッとしてただろ?・・・満更でもないんじゃないか?」
「・・・見てたのかよ?」
「海月・・・満更でもないって・・・ホントか?」
冷膳さんが期待に満ちた眼差しで見つめてくる。
・・・ヤバイ、可愛い!
「い、いやいや、そりゃ確かにドキッとはしたけどさ、だからって何でイキナリ結婚って話になるんだよネル?」
「ドキッとは・・・したんだ・・・」
冷膳さんが今度は頰を赤らめて上目遣いに俺を見つめて来た。
・・・ちょっと!だからそんな可愛い仕草しないで!本気でグッと来ちゃうから!!
俺はこんな事態を引き起こしたブルーネルへ耳打ちした。
『ネル!なんて事言い出すんだよ?冷膳さんは今、不安定な精神状態なんだぞ?そんなマイナスな話したらダメなんだよ!』
『マイナス?どこが?むしろ喜んでると思うぞ?・・・それに前から言ってるだろ、私は別に旦那様を独り占めする気は無いって。現にホリー、滝座瀬、三津島との婚約だって許しただろ?もう1人冷膳が増えた所でそう変わらないしさ』
『けど・・・ネルは本当にそれで良いのか?』
『旦那様の元いた世界じゃどうなのか知らないけど、この世界じゃ一夫多妻は普通だし、旦那様程の男なら妻が5人でも少なすぎるくらいだぞ?問題は無いさ。ただ、私の事も平等に愛してくれなきゃ駄目だからな?』
『それは・・・任せろ!』
・・・アール、冷膳さんの様子はどうだ?
≪ブルーネルの言った通りよ。結婚の話が出てからプラスの刺激が出続けてるわ。それもめちゃくちゃにね!≫
・・・そうか。
正直、本当にこんな解決の仕方で良いのか分からないけど、俺は冷膳さんに聞いてみた。
「じゃあ冷膳さん、俺と結婚・・・する?」
「・・・する!」
・・・即答かよ!マジで?・・・ぶっちゃけ冷膳さんは、とんでもない高嶺の花だぞ?・・・俺ってば、いくらなんでもモテ過ぎだろ!夢じゃないだろうな?
あまりのトントン拍子振りに、俺は自分で結婚を言い出したにも関わらず、なんだか不安になって来た。
「れ、冷膳さん、結婚だよ?付き合うとかじゃないよ?俺たちって、さっき会ったばっかだし、今までほぼ面識も無いし・・・本当に良いの?嫌なら全然断って良いんだからな?」
「嫌な筈無いし・・・海月は命の恩人だし・・・それに『落勇者』の称号を消してくれた。私にとっては、命の恩人以上の存在だよ。それに、海月にはずっとお詫びしなきゃって思ってたんた。だからって仕方無く結婚する訳じゃないぞ?私が海月と、その・・・結婚、したいんだ。そりゃ元々は罪悪感から始まった気持ちだけど・・・でも、ずっと海月の事を心配してるうちに、いつの間にか気になる男子になってたんだよ・・・さっき、海月がこの部屋を出るって言ったとき、何だか凄く切なくなったんだよ・・・『行っちゃヤダ』って、そう思ったんだ。私、確実に海月に恋してるよ」
「あ、ありがとう・・・嬉しいけどさ・・・それと結婚はまた違うと思うしさ・・・もっとじっくり考えたって良いんだよ?」
「イヤだよ!だって、師匠はもう海月のお嫁さんなんだろ?・・・じゃあ私も同じじゃないと乗り遅れるじゃん!・・・私だって、恋しちゃったからには、海月の特別で居たいよ・・・海月と師匠がイチャイチャしてるのを指を咥えて見てるなんてイヤだ!」
「でも、俺達まだ高校生だぞ?それに一夫多妻制だぞ?嫌じゃないのか?」
「そりゃ高校生だけど・・・海月がそれを言う?それに、私は一度『落勇者』になったから、もう日本へは戻れないんだ。海月と同じだよ。この世界で生きるんだから一夫多妻制だって受け入れなきゃだし・・・それにやっぱり、海月と結婚したいよ」
「分かったよ。冷膳さんがそこまで考えてるんなら…」
「菜綱って呼んでほしい!」
「な、菜綱・・・結婚しよう」
「はい!」
一切の溜めも無く秒速で頷いた菜綱の笑顔は、それはもう、めちゃくちゃ可愛いかったよ。
・・・ホント俺ってば、次から次へとだよな。
正直、勇者召喚された40人で俺が一番この世界に順応してるんじゃないかと思った。
そんな俺に菜綱はイタズラっぽく言った。
「あ、でも、エロい事は段階を踏んでからだからな?」
「りょ、了解」
「へえ、冷膳お前、意外にウブなんだな?」
「ウブって・・・もしかして師匠はもう・・・?」
「そりゃ新婚旅行だからな。当然だろ?なあ、旦那様?」
「ま、まあ・・・」
・・・ネルってば、そんなドヤ顔で俺に振らないでくれるかな?恥ずかしいだろ?
≪カガリったら、さっきからもう、タジタジね≫
・・・アール、何とかしてくれよ?
≪無理ね。こういうのにも慣れておかないとハーレムは築けないわよ?≫
・・・だからハーレムなんて築くつもり無い・・・事もないか。もう既成事実はだいぶ積み重なって来てるし・・・
そんな事を考えている間に、菜綱が何やら決意に満ちた顔をして宣言した。
「な・・・なら私もやる!」
「やるって・・・何を?」
「エロい事に決まってるじゃん?師匠がやってるのと同じ事をしてあげるんだよ!」
「いや、なにもそんなに対抗しなくても・・・」
「良いの!もう決めたから!ダーリンは楽しみにしてて!」
「ダ、ダーリン?」
「師匠が『旦那様』呼びだし・・・じゃあ私は『ダーリン』かな?って」
「ま、まあ良いけど・・・もう一回呼んでみて?」
「あー、気に入ったんだ?・・・ダーリンっ!」
・・・な、なんか・・・良い!
「ダーリンより旦那様の方が良いだろ?な、旦那様!」
「ダーリンの方が良いに決まってるじゃん?ね、ダーリン!」
「旦那様!」
「ダーリン!」
「旦那様!」
「ダーリン!」
「りょ、両方最高だけど・・・」
≪カガリ、あんた今、とんでもなく蕩けた顔してるわよ?見せてあげようか?≫
・・・やめて、恥ずかし過ぎる!
けど、なんだかとっても甘〜い時間だったよ。
ずっと続けば良いのに・・・
そんな甘々なひとときの後、ふと菜綱が真剣な顔に戻った。
「なあダーリン。実は、もう1人『落勇者』を助けて欲しいんだ」
「ん?誰?」
「委員長だよ・・・多分、私と同じで今頃『落勇者』にされてると思うんだ」
「委員長か・・・」
どうやら、俺の元片思い相手がピンチらしい。
それにしても、菜綱といい委員長といい、城で一体何が起こってるのだろうか?
菜綱に問いただしたいんだけど・・・
・・・俺から聞くのはトラウマに触れるかもだし、マズイんだよな?
≪さっきカガリのプロポーズを受けてから、菜綱の中でプラスの刺激が湯水の如くノンストップで出まくってるのよね。今なら多少マイナスの刺激を受けたって問題無い筈よ≫
・・・湯水の如くって・・・それって、俺との結婚がそんなに嬉しいって事かな?
≪当然でしょ?カガリったら超愛されてるじゃない!良かったわね!≫
・・・ありがとう・・・多分、俺からもプラスの刺激ってのがドバドバ出てるんだろうな・・・
≪うーん、カガリからはプラスの刺激と・・・あとはエッチな刺激もドバドバ出てるわね≫
・・・そ、そりゃ、エロい事を『楽しみにしてて!』とか言われちゃったんだぞ?男ならそりゃ期待するだろ?
≪この幸せ者!≫
・・・からかうなって!
と、とにかくだ!
俺は城で一体何が起こったのかを菜綱に問いただしたのだった。
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