158話 冷膳さんに話を聞くぞ、オイ
「まずは1つ1つ話して行こうか。なんか誤解もあるみたいだしさ。それに俺も聞きたい事は色々とあるし」
「うん、分かった・・・なんか、いきなり私の想いを一方的に捲し立ててゴメン・・・」
「いいって。それより、ここは鉱山じゃないぞ。確かに、冷膳さんの言う通り、最初は鉱山で奴隷みたいに働かさせれてたよ。でも、何とか反撃して抜け出したんだ」
・・・てか、逆に鉱山を支配しちゃってるけどね。
「そりゃ良かったよ!・・・じゃあ、その後ラクロアに捕まったのか?」
「ラクロアに捕まった?それ、さっきも言ってたよな?ラクロアって後任の騎士団長だよな?」
俺はブルーネルを見ながら聞いた。
「ああ。私がクビを告げられた時、そう聞いたぞ。まあ元々奴は代々、騎士団長の家系だからな。魔王が降臨している間だけは、勇者の全面的なサポートの為に、名目上副団長に下がって魔王討伐に向けて騎士団を一致団結させる役割を担うってだけだ・・・私はその間、勇者を魔王を倒せるレベルに鍛え上げる為に臨時で雇われていただけだからな・・・私が居なくなれば、ラクロアが団長になるのは筋だ」
ここで初めて、冷膳さんは俺の隣にいるのがブルーネルだと気がついたらしい。
「師匠?・・・もしかして師匠なのか!?」
「そうだ。1日だけのな・・・師匠と呼ぶからには、すぐに気付いて欲しかったがな」
「だってさ・・・あの目の・・・メラメラしたやつが無いから・・・」
どうやら、ファルの事らしい。
「ああ。確かにお前等といた時は常にファルが居たからな。今はな、引っ込んでいてもらってるんだ」
そうなのだ。
ブルーネルの従魔である『炎脈』ファルガヤスク、通称ファル。
今や俺の仮の契約従魔でもあるファルは、ギーグランデとの戦いの際に、強制的に従魔界へと戻らされてしまったのだ。
その後、ブルーネルが元に戻った翌日、すぐに召喚するのかと思いきや、今まで召喚していないのだ。
どうやら、従魔界にいながらも、ファルとは意思疎通が出来ているみたいで、『今は俺と2人きりで居たい』って理由で、召喚して無いらしいのだ。
これはファルも合意の上らしい。
因みに俺は仮契約なので今はファルと意思疎通は出来ない。
あとでブルーネルから、ファルから俺への伝言を聞かされた。
『我がいない間、思う存分、ブルーネルと楽しい時を過ごすがいい!!』
・・・ファルの奴、気が効く奴だなオイ!何処かの誰かさんに聞かせてやりたいよ!
≪私は観察者だから問題ないのよ!あなた達の子作り作業もバッチリ見ててあげるからね!≫
・・・くっ、このド変態め!
≪別にエロい目線で見てないから安心して!≫
・・・安心できるかっての!まあ、諦めちゃいるけど。
以前、そんなやり取りがあり、ファルはずっと居ないのだ。
冷膳さんは目の前の女性がブルーネルだと認識して、一瞬、嬉しそうな顔をしたが、すぐに険しい表情へと変わった。
「まさか・・・師匠もラクロアとグルなのか?」
「ん?それはどう言う意味だ?」
・・・なんだかさっきから冷膳さんと会話が噛み合っていないな。
どうやらそのラクロアってのが原因らしい。
「冷膳さん落ち着いて。俺たちは別にラクロアに捕まってる訳じゃないよ?てか俺、ラクロアって奴に会ったことすらないんだけど・・・」
「でも・・・それじゃあ何で海月が師匠と一緒に居るんだよ?!師匠がラクロアとグルで、海月を捕まえて・・・それで私も捕まえたんじゃ無いのかよ?!」
「うーん、だいぶ違うんだよな・・・俺がネ、、ブルーネルと出会ったのは、俺が鉱山を出て自由の身になった後なんだ。冒険者ギルドで偶然出会ってさ。それで色々あって・・・なあ?」
俺は続く言葉が照れ臭くて、ブルーネルを見た。
ネルは俺の様子を見て察したらしく、話を引き継いでくれた。
「ああ。私はスピーリヒル騎士団長をクビになって、元々やっていた冒険者に戻ったんだ。そしてある日偶然、ダン、、カガリと出会ってな。そこから・・・まあ、その、なんだ・・・結婚したんだ」
「・・・は?」
冷膳さんは顔をポカンとさせた。
そしてブルーネルは、もう一度ハッキリと告げたのだった。
「私は、このカガリと・・・結婚!したんだ」
「・・・・・はああぁ??!!」
冷膳さんは信じられないって顔で俺を見た。
「・・・まあ、その、アレだ・・・事実だ」
「・・・嘘、だろ?」
「本当だ。そして今はカガリ、いや、旦那様と新婚旅行の最中なんだ」
「そんな・・・結婚なんて・・・早すぎだろ?海月アンタ、まだ高校生じゃん?何で結婚なんてしてんだよ?!・・・これじゃあ・・・入る余地・・・無いじゃん・・・」
冷膳さんはそう言うと、ガックリと落ち込んだように俯いてしまった。
・・・そりゃ高校で結婚が早すぎるってのは分かってるけどさ、でも、それって地球での常識だし、それに、何で冷膳さんがこんなに落ち込んでるんだ?
俺にはさっぱり意味が分からなかった。
てかラクロアの話は良いのかよ?
「と、とにかく、俺とネルは別に捕まえたとか捕まったとかそんな関係じゃなくてだな。冷膳さんを助けたのだって、街で偶然『落勇者』の噂を聞いてさ、それで探してみたら砂漠で倒れているのを見つけたんだよ。だから、冷膳さんも、別にラクロアに捕まったって訳じゃ無いよ?冷膳さんは今、自由なんだよ?」
「ネル・・・ブルーネルの『ネル』か・・・」
冷膳さんはなにやらブツブツと言っていた。
・・・ダメだ、聞いちゃいない。
「あのー、冷膳さん、大丈夫?もう少し後に話す??」
「じゃあ・・・」
「え?」
「じゃあ・・・なんで2人は私に敵意を向けないんだよ?」
「敵意?」
「私には『落勇者の呪い』がかかってるんだ!街とか村とか、すれ違う人とか、みんながみんな私に敵意を向けて追い払って来たのに・・・師匠がラクロアの一味だから、海月がラクロア達の手駒になってるから・・・『呪い』を消す薬を飲んで平気な顔してるんじゃないのかよ?!」
「ああ、アレってやっぱり『落勇者』絡みの侵食だったんだな・・・それは、俺の魔法障壁の力で防いでるんだよ」
「防いでる?あの呪いを・・・海月の力で?」
「ああ」
「じゃあ、海月が捕まってる訳じゃなくて・・・それで私を助けてくれたってのも・・・本当なのか?」
「そうだよ」
「じゃあ・・・海月は、私の命の恩人って事か?」
「まあ、そうなるかな」
「その海月の魔法障壁があれば、私は・・・この世界で1人ぼっちにならなくても・・・良いって事・・・なのか?」
「そうだよ。冷膳さんは1人ぼっちじゃない。俺が見つけたからには、1人にはしないよ!」
「・・・う・・・う・・・海月ぃぃぃ!!!」
そう言うと、またしてもガバッ!と勢いよく俺に抱き着いてきた。
俺は、さっきの不意打ちと違って今度は優しく受け止めてあげる事が出来た。
「わあああああぁぁぁ!寂しかったよぅ!!辛かったよぅぅぅぅ!!悲しかったよぅぅぅぅ!!・・・」
「よしよし」
俺は冷膳さんの背中を優しくさすってあげた。
泣きじゃくる冷膳さん。
パッと見、かなり気が強いタイプだと思ったけど、意外と涙もろいんだな。
「・・・本当は私・・・絶望して・・・もう死んでも良いやって思って・・・そんな時、目の前に砂漠が広がってて・・・ついフラフラっと入ったんだよ・・・まさか、また誰かと一緒に居られる日が来るなんて!・・・海月ありがとう!・・・ありがとうぅぅぅ!!」
・・・よっぽど精神的に参ってたんだな。こんな事になるなんて、一体何があったんだよ?
俺は事情を聞きたかったが、冷膳さんは泣きじゃくってるし、精神的にも、今は急かさない方が良さそうだ。
「取り敢えず、詳しい話はまた冷膳さんが落ち着いてからにしよう。今はゆっくり寝て、とにかく体を休めた方が良い・・・ネル、行くぞ」
「そうだな」
そう言って冷膳さんをベッドに寝かせて部屋を出ようとしたのだが、冷膳さんはガッチリと俺に抱き着いたまま、離してくれなかった。
「嫌だよ!せっかく海月と会えたのに!せっかく、人と一緒に居られるのに!・・・離れるなんて絶対嫌だよ!!」
どうやら、1人になるのが怖いようだ。
「分かったよ。なら、一緒にいよう」
こうして、俺とブルーネルは、冷膳さんの部屋で過ごす事にしたのだった。
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