横難横死と笑えない雑魚。 その⑪
「落とし穴――!?」
「今だ、ミア」
『分かったわ』
ツヴァイちゃんの落ちた穴を大量の土が塞ぐ。
ミアの土魔法だ。
ちなみにこの穴は、マショウのときと同じように、【貫通】で敵に気付かれないよう地面の下を掘っていたものだ。
「聞こえてないと思うけど、ツヴァイちゃん。一応説明しとくね」
僕は深呼吸して息を整えてから、言葉をつづけた。
「君が死なないのは、治癒能力が高いからじゃない。ただ、体が元に戻ってるだけなんだ」
そうじゃなきゃツヴァイちゃんの白衣が元に戻るはずがない。
それから、ツヴァイちゃんの体が治るのと同時に彼女の周囲の草木も元通りになっていた。僕らの戦闘の影響で切り刻まれたはずの草木が。
「つまりさツヴァイちゃん、スキルなのか魔法なのかは置いといて、君は周囲の物を元通りにする能力を持ってるんだろ? だとしたら」
息が切れる。
体が重たい。
「……だとしたら、傷ついた君を掘った穴の中に落としたらどうなるんだろうね? 君の体は傷を元に戻そうとする。同時に、穴は元通りに埋まろうとする。……君は一生穴の中ってわけだよ、ツヴァイちゃん。まあ、死体は土の中がお似合いだろ?」
どうやっても死なない敵なら、どうやっても出られない場所に閉じ込めてしまえばいい。
「さて、残すはあんただけだよ、えーと……アイさん、とか言ったっけ?」
僕は立ち上がり、隅の方でしゃがみこんでいた女の人に声をかけた。
女の人は怯えたように顔を上げ僕の方を見ると、
「こ、降参、です」
と両手を挙げた。
そうか。
降参か。
助かった。
僕ももう動けそうにない。
「降参なら、僕の代わりにミアをあんたたちの研究所に連れて行ってあげてくれない? 僕は少し休ませてもらうことにするよ」
もういい、疲れた。
先に町の宿に戻って休もう。
そんなことを考えながら、僕がアイさんに背を向けた時。
「……どこへ行くんだよ、お兄様」
聞いたことのある、聞きたくない声。
振り返るとそこには、土まみれのツヴァイちゃんが立っていた。
「あっれー、おっかしいな。なんでいるの?」
「【貫通】と【切断】であたしのまわりを切りさいて脱出したんだよ。あやうく窒息するところだったんだよ、お兄様」
「そのまま……埋まっててくれればよかったんだけどね」
僕はツヴァイちゃんと向き合った。
土で汚れてるとはいえ、ツヴァイちゃんの体には傷一つない。
……僕に打つ手はもうない。
死ぬしか、ない。




