横難横死と笑えない雑魚。 その⑫
「こんどこそ殺してあげるんだよ、お兄様。【切断】」
空気の刃が僕に襲い掛かる。
しかしそれは、僕に直撃する寸前で霧消した。
「……?」
「だ、だれなんだよ!?」
ツヴァイちゃんが辺りを見回す。
「私のえーくんをそれ以上傷つけないでくれる?」
僕らの方に近づいて来る人影。
赤い瞳の少女。
「ミア……!」
「えーくん、その血……この子にやられたのね?」
「え? ああいや、これは」
僕が答える前に、ミアはツヴァイちゃんの顔面をぶん殴っていた。
グーで。
吹っ飛ぶツヴァイちゃん。
「なっ、なにするんだよ!」
「ずっと出番がなくてムカついたから」
「ふ、ふん。ちょうどよかったんだよ。ミア・ミザルを魔法で殺せばあたしの有用性もしょうめいされる!」
ツヴァイちゃんが【切断】と【貫通】を発動し、それらをミアめがけて放つ。
「ミア、あぶな――」
僕が言いかけたときには、既にツヴァイちゃんの攻撃は空中で跡形もなく消し飛ばされていた。
「魔法は五行――土火水木金の五つの要素から成り立っている。あなたの攻撃も魔法なら、逆位相の魔法をぶつけてあげれば無効化できるのよ」
「ミア・ミザル……」
ぎりっ、とツヴァイちゃんが歯ぎしりをする音が聞こえた。
『えーくん、私が時間を稼ぐわ』
「……ミア?」
『そもそも私のわがままで始まったことだもの。私が決着をつける。えーくんは逃げて』
「そういうわけにもいかないよ。僕とミアは一心同体、同じ穴のムジナだろ?」
『それ、意味わかって言ってる?』
「いや全く」
『間違ってはいないわ』
「あ、そう……」
「ミア・ミザル!」
ツヴァイちゃんが動く。
格闘に持ち込む気だ。
そうなるとミアに勝ち目はない。
クソ、動けよ、僕の体!
しかし、ツヴァイちゃんはそれ以上動かなかった。
いや、動けなかった。
大柄な男が彼女を背後から捕まえていたからだ。
「やめておけ――そこまでだ」
確かこの人、マショウとかいう名前の……。
「どうしてなんだよ! まだしょうぶはついていないんだよ!」
「ラフィ様が呼んでいる」
「!」
マショウの言葉に、急におとなしくなるツヴァイちゃん。
そんな彼女を地面に下ろし、マショウは僕らの方を見た。
「申し訳ない――余計なことに巻き込んで。案内する――我々の研究所に」




