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横難横死と笑えない雑魚。 その⑩


「……これはどういうことなんだよ、お兄様」

「傷が元通りになるなら、その前に傷跡を埋めちゃえばいいと思ってさ。それなら治らないだろ?」

「あさぢえなんだよ」

「浅知恵でも君の動きは止まっている。さて、降参するなら今の内だよ」

「こうさん? どうしてなんだよ」

「そう言うなら、少しずつ痛めつけてあげるよ。それで、ごめんなさいお兄様って言わせてやる」

「へえ。やってみるんだよ」

「じゃあお言葉に甘えて」


 僕は【切断(キル・ユー)】と【貫通(メーク・ホール)】を発動した。

 さて、どこから狙おうかな。

 右端から少しずつ削っていくか。

 それとも左端……。


 ん?

 あれ?

 なんだこれ?


 鼻血だ。

 気がつけば、僕は鼻血を流していた。

 いや、鼻血だけじゃない。目や口からも血が出ている。

 この感じ……【死線(デッドライン)】?

 でも攻撃を受けた覚えはない。なら、どうして?


「……いいタイミングなんだよ」

「何が? 君が何かしたのか?」

「それはちがうんだよ。だけど、いつかはそうなるはずだったんだよ」

「ごめん、分かるように言ってくれない?」

「お兄様にも理解できるくらいかんたんにいえば、つまり……スキルのつかいすぎなんだよ」

「使いすぎだって?」

「そう。スキルの処理にお兄様のあたまがたえきれなくなったんだよ」


 気がつけば、僕の周囲に出現させたはずの【切断(キル・ユー)】と【貫通(メーク・ホール)】が消えていた。

 それどころか、景色が回っているような気もする。目が眩み、足元がおぼつかない。


「今まで大丈夫だったのに、なんで?」

「なんにでも終わりはあるものなんだよ、お兄様。そしてラフィ様はこのタイミングさえ予想していたんだよ」


 ひどい頭痛だ。

 そういや、マショウとかいう大男も言ってたな。

 スキルを併用できる人間が普通であるはずがない――。


「……最初から、君たち有利の戦いだったってわけ?」

「ま、そういうことなんだよ。だからお兄さま、ここはもうあきらめるしかないんだよ」


 ツヴァイちゃんが自分の腹に刺さった木から無理やり自分の体を外した。

 ツヴァイちゃんの脇腹が裂け、血が噴き出る。

 だけどその傷もすぐに元通りになった。


「やれやれ、そう力任せになんでもやられちゃ、こっちも打つ手が無くなる」

「さいしょから詰んでたんだよ、お兄様は」

「そうだね……勝負は決まった」


 僕は地面に座り込んだ。

 頭痛と眩暈で、立っていることさえ辛かった。


「こうさんなんだね、お兄様。あたしが楽にしてあげるよ」


 ツヴァイちゃんが僕の方に一歩踏み出す。

 そこを狙って、僕は【切断(キル・ユー)】を発動した。

 頭が割れるように痛い。

 が、その甲斐あってツヴァイちゃんの体には無数の傷がついた。


「お兄様……っ! おうじょうぎわがわるいんだよ!」


 ツヴァイちゃんの顔が怒りに歪む。

 そして彼女は、僕の方へ突っ込んできた。


「この手で殺してあげるんだよ!」

「……もう一度言うけど、勝負は決まった(・・・・・・・)


 その瞬間、ツヴァイちゃんの足元が崩れた。


「君の負けでね、ツヴァイちゃん」




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