横難横死と笑えない雑魚。 その⑨
うぅ。
容赦ない。
つーか、普通に強い。
魔法で僕を攻撃してるあたりから考えると、既に【強化薬】は使用済みらしい。
さて、どうしよう。
『えーくん、大丈夫なの!?』
突然僕の頭に響いてきたのは、ミアの声だった。
「ああ……、ミア。いや、ちょっと変なのに絡まれててね。自称僕の妹って人なんだけど」
『敵なの?』
「そう、敵だ。そっちは無事?」
『私は大丈夫。ねえ、えーくん。私に手伝えることは無いかしら』
「……あのさ、ミアのいるところから敵の位置って分かる?」
『探知魔法を使えば分かるわ。それで?』
「ピンポイントで使ってほしい魔法があるんだけど」
『……タイミングを指示してくれれば可能よ』
「オッケー」
「お兄様、ひとりでしゃべってるなんて気持ちが悪いんだよ!」
空気の刃が僕の目の前に突き刺さった。
かと思えば、ツヴァイちゃんの鋭い突きが僕の目を襲った。
体を逸らして躱し、右手で払いのける。
同時に僕は一歩下がってツヴァイちゃんから距離を取った。
「ごめん。あ、そうそうツヴァイちゃん、よく独り言をいう人は早死にしやすい傾向にあるらしいよ。だから僕はきっと早く死ぬ。よかったね、ツヴァイちゃん」
「……お兄様」
ツヴァイちゃんと目が合う。
黒色でハイライトのない、死んだ魚みたいな目だ。
「なんだよ」
「あの……あんまり卑屈にならないほうがいいんだよ、きっとお兄様にだっていいところがあるんだよ」
「慰めるなよ! 余計なお世話だよ! 悲しくなるだろ!」
ええい、調子狂う。
「まあ、お兄様が早く死ぬというのはきっとただしいんだよ。今ここであたしが殺すんだから」
ツヴァイちゃんの周囲に出現した刃と鉛の球が、一斉に僕に襲い掛かる。
僕は躱そうとした、が、僕の背後には槍のような木の枝が迫っていた。
「悪いけど、無駄だよ」
【切断】の結界を発動し、ツヴァイちゃんの攻撃全てをかき消す。
そして僕はツヴァイちゃんめがけて【貫通】を放った。
ツヴァイちゃんは避けもしなかった。彼女の腹部に穴が開く。
「ことばを返すようで悪いけど、お兄様。そのこうげきはムダなんだよ」
ツヴァイちゃんの言う通り、彼女の傷が塞がり始める。
だけど。
「本当に無駄かどうかは、やってみなきゃわからない。――ミア!」
『了解、えーくん』
地面から壁が生える。
ミアの土魔法だ。
壁がツヴァイちゃんの背後を防ぐと同時に、その壁から太い枝が生える。
枝は、ツヴァイちゃんの体に空いた穴を塞いだ。
ツヴァイちゃんの体が治るより先に。




