裏切り者
神々の息子レムリニアス
その血を引き聡明で賢明で正真正銘の王達は
その醜い身体以上に穢れたライオネル・ネイ・ベイルの本性を悟る
文明から遠ざけられた魔の森に逃げ込んだライオネル
快楽と飽食を待ち望んでいた彼の男
絶望から魔王にその魂と肉体を売り渡した
魔王の依代となったライオネルは人間世界に侵攻を始める
賢明で聡明なる王達により
迫りくる魔王の軍団は魔の森に留められる
誰もが魔王を恐れレムリニアスの再臨を待ち望んだ
混迷する戦況の中に現われたのは
自らを予言の者を名乗るアービエル・ネイ・レムリニアス
その言葉と才能に人々は騙され彼を崇拝する
民衆へと成り下がった市民を操るアービエル
偽者は魔王と手を組み平和を齎す
由緒正しく正統な王達は人々を説得する
民衆とは愚かな存在
歌いながら自らの首に縄を掛け喜んで処刑台に進む
魔王に魂を売った卑怯で下劣な大将軍アービエル
世界の果てまで遠征する
世界の全てを主に差し出すために
人類の平和を叫びながら剣を振るう
世界が闇に包まれようとするとき
ウルの女王エメラルダが起ち上がる
聡明で賢明なる王家の血を引く女王
あらゆる偽りを見抜き世界を救うために起った
東の果てに出ていた大将軍は驚きの余り逃げ出す
現実は何と非常か
エメラルダの行為に賛同するのは一部の人間のみであった
愚かな人間共は偽りの善政に騙される
恐怖に怯え逃げ出していたアービエル
惨めにも大軍を率いて女王を打ち破った大将軍
美しく清らかで正義の旗を振った最後の人エメラルダは処刑された
この戦いが最初で最後の機会であったのに
人々は希望が打ち砕かれるのを喜んだ
次は自分達が処刑される番だとも知らず
人々は平和が来たと喜んだ
彼方此方に軍団が駐留し
魔の森から土地を求めて魔獣が進出してきたとき
無智で愚かな人々は気が付いた
自分達の森や畑は魔獣を食わせるために残されたのだと
人類に抵抗する術はない
大将軍から法の番人となったアービエル
腹心のキュキュンベルと共に粛正してゆく
牢獄は無実の人々で溢れ返り
獄司と刑司が高給取りとなる
喜んだのは魔王の支配を受け入れ富を蓄えた人間のみ
人々は大将軍を怨み彼の名を言う事も恐れる
そんな彼の者の権力は魔王から与えられたもの
自らの手でその権力を手に入れた訳ではない
最期には彼も魔王により粛清され闇へと消えていった
ライオネルはその醜き本性を現す
気紛れに魔獣の軍勢を使い人々を殺す
ひとつまたひとつと街が焼き払われる
人々が逃げ惑い焼かれる姿を見て魔王は笑う
人々が賑わう市場は魔獣の物となり
人々が語り合う広場は処刑場となった
嗚呼人々は絶望の淵に落とされ虐げられてゆく
彼の楽しみのために人間は殺されその肉は魔獣に貪り喰われる
今日を生き延びても明日には誰かが消えていなくなる
隣人が消えても気にしてはならない
子供が戻らなくても気にしてはならない
広場に転がる死体から家族を探そうとも思わなくなった
家族全員が殺される訳ではないのだ
一人の犠牲で家族が生き残れる
魔王の施しに人々は感謝さえする
そして今日も誰かいなくなる
人々から夢が消える
余りにも絶望した毎日を過ごす内
人々は自分達が絶望しているのかも分からなくなった
人は自分自身では正常な心を失っているか判断できない
人々は家畜の様に殺されるために生きて行くのだ
しかし人類はその中でも幸福を見つける
幸福にしがみ付き偽りの平和を享受する
生きて行くしかない
嗚呼英雄は何処にいる
早く我々をこの地獄から救い出してくれ
それとも貴方はいないのか
魔王が存在するというのに貴方は生まれてこないのか
なぜ我々に希望を与えたのだ




