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第一人者  作者: 近衛 キイチ
第四章
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ウリンダロス

 半人半蛇の魔獣が住むローレン諸島を脱してから、予定よりも三日程遅れた物の十日後には地図に在る通り無人島に到着し、そこで真水と肉を補給する事ができた。

 曇りの日もダムロの宝物箱の中から見つけた太陽の石で方角を確認し、縄の結び目で速度を計測しながら快調に進んだのだが、自分が乗っているのは大型の帆船ではなく小さな船、食糧は十分に有るのだが四十日目には次に見えるはずの島の影を発見できず、少し悪くなった水を酒で割りながら飲まなくてはならなくなる、途中あのハッボス号を破壊した怪物の背を遠くに確認し、船底に息を潜め隠れていた時には、ローレン諸島を出てきた事を深く後悔し始めていた。


 最後に補給を行ってから二十日以上が経った、嵐により帆柱は折れ船室も飛ばされてしまった上に、水を入れた樽は流され残った樽も壊れて雨水を防げずにその中身は腐っていった。

 太陽の光に皮膚は焼かれてひび割れて血を滲ませてゆき、空腹と喉の渇きにもがき苦しみ、最後には鼻からの出血と耳鳴りが止まらなくなる。

 よく考えなければならなかった、神殿の壁にはめ込まれた地図の縮尺が正しいのか、こんな船で大洋にでる事が如何に無謀であるのか。

 このまま干からびて死ぬのが早いか餓死するのが早いか、いずれにしろもう体は動かない、この船がこの海の上で停止しているのか波に流されているのか確認できない以上、遅かれ早かれ嵐に巻き込まれて沈みゆく運命だ。

 目を閉じる、何も考えたくなかった、目を開けている気力もなかった。



 目前に蛇の輪郭を持つ顔があった。

 視界の全てを覆い隠そうとする程に巨大なその顔、唇も鼻もなく頬まで裂けた口は笑う様に口角を上げ、その目は人間のものに酷似しておりこちらを見つめていた。

 瀕死の自分を見て笑っているその怪物を見ても感情は生じず、動く事のできない自分はただその目を見ていた。

「――――――」

 怪物は何事かを呟く、獲物を捜す蛇の様に舌を出しながら。


方解石

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