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第一人者  作者: 近衛 キイチ
第二章
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戦いに興味を示す少年

 春の中頃、防衛線に出ていたジョルジュが戻って来る、奥方に対するご機嫌取りの積りか、浮気を疑われないための行動であろうかと初めの内は思っていた、だがしかし、城主の帰還と共に巷に一つの噂が流れ始める。

 噂好きの使用人から聞いた話では、ライオネルが死亡したという事なのだ、そうは云ってもそこは噂話、無条件で信じ切る事などできる訳がない、自分は何も発さず噂の事も知らない振りをする。


 同じ噂話を幾度も繰り返していると、それが真実であると錯覚するのか、酒の席で誰かが嘯いたのか、ライオネルの死亡という内容から、魔獣の大軍が各防衛線から撤退した、との話へと変わっていた。

 噂を真実であると勘違いした城下の民は、何の確証も得られていないのに、広場に集まりライオネルの死を祝う合唱を始めたという。


 城下での騒ぎによりようやく街の噂を知ったジョルジュ、広場に集まる民衆に兵を送り込み解散させるとライオネルの死亡を否定、その代わりに腹心であるボナリウスの死亡と魔王の軍勢がキルキアから撤退した事を伝えたのだ。


 かつての傭兵隊長の名前を知り、その男の功績を知り恐れていた民衆だが、時の経過と魔獣の軍団とライオネルへの恐怖心により、ボナリウスの死がどれ程重要なことなのか民衆は理解しなかった。

 説明ても意味を解さないと知っていたジョルジュは、敢えて帰還後に説明しなかったのだろうが、気分を高揚させた民衆は、武力によって訳も分からないまま解散を命じられた事で、その喜びは王に対する怒りに変化、幾人かの扇動家により暴徒になる。


 侍女達は城の中を駆け回る大騒ぎ、外の民衆と繋がっているかも知れないと疑われ、使用人が中庭に集められて監視される、自分はアンネリーゼと共に居る事を許されるが、城主の命により姫様と共に城壁の上から戦闘を観察する様に言われた。


 迫り来る民衆の数は六百程であろうか、城下に住む人々の数からいえば数百分の一程度なのだが、城に住み込む騎士と従士の数は合わせて九十、兵卒を入れても二百に満たない、迫り来る民衆の方が圧倒的に多い、しかも彼らが戦列を組み大通りを進行しているのを見れば、城が建つ丘の上からでも民衆に対して恐怖心が生まれる。


 丘と城下を隔てる河に架かる橋で戦闘が行われるのだが、幾ら一度は兵役の際に訓練を受けているとは言っても、常日頃から殺しの訓練を行う騎士団や傭兵に丸腰の者が敵う訳もなく、そもそも指揮する者がいない民衆側は、橋の中央で待ち構える槍兵に押し返されてしまい、河の浅瀬を捜し出して渡河を試みるが、待ち構えていた騎兵の急襲を受ける。


 河の中に入らずに岸辺で戸惑っていた民衆の多くは、前方で行われる虐殺に恐怖して逃げ出したために、城壁は一切傷つけられる事なく、首謀者と目された者は途轍もなく残酷な拷問の後、広場にて公開の絞首が行われた。


 城主の命により、城壁の上から民衆を攻撃する騎士団の様子を見ていたアンネリーゼは、泣きながら父に譲歩を懇願するが、父親が普段は見せない戦場で指揮をするその声色に圧されてからは、一刻も早く戦闘が終わる事を願って祈り続けていた。


 民衆と傭兵達の戦闘を見ていて、自分は思わずにはいられない。大した武器も持たずに一体何をやっているのか。と、無理に河を渉ろうとすれば、思う様に身動きが取れない所を騎兵に突き殺されるのは当然ではないか、運よく河を渉り切ったとして、武装する兵にどうやって向かってゆくのか、浅瀬が在る岸辺で一か所に集まり順番を待っていれば、どんなに数が多くても全く意味がない。

 何故、彼らはそれに気付かずに只ひたすらに前進する、このやり方は後ろに控える者が恐怖して逃げ出すのを促すだけではないか、籠城戦に持ち込まれたらどうだろうか、彼らに勝ち目はあるのか、三倍の数を揃える事が出来ても、それを運用する事が出来なければ、単なる人命の消耗でしかない。

 では自分ならばどうする……

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