6話 魔法と薬は使いよう
「よっしゃ、あたしの番!」
待ってましたとばかりに腕まくりするポーズを真似て、リオは焚火の前に立つ。
「がんばー」
「不安」
「三谷、シャラップ!」
離れた位置で、ぼそりと不安を漏らすノノカに言葉で噛みつく。
「こういうのはイメージだよ、イメージ」
「あー確かに。わたしさっきは木々の擦れる音を聞いて、心地いい風を想像してたかも」
「なんでそれ教えてくれなかったんだよ???」
「天の順番は終わってたじゃん」
「無慈悲!」
リオは視線を焚火に向けたまま沈黙し、指先に小さな火種が灯るイメージを膨らませる。
近くで騒ぐ2人は無視だ。
火種がイメージ出来たら、今度は焚火に燃え移る瞬間の炎の煌めきを思い描く。
すると__
ボっ!
「あ」
「だーかーらー、え!?」
「、、、ついた!?」
言いあっていたノノカとテンも、視界の端に灯った焚火をとらえ、興奮の声を上げる。
「~~~っ! やったぁぁぁ!」
一拍遅れて実感が湧いたリオは喜びの声を上げ、その場でとび跳ねる。
「まさか、沢村さんも魔力あるってこと?」
「使えてるんだから、あるんじゃない? ただ莉緒ちゃんの場合、魔力より俊敏?の方が適性あるのかもねってことなのかも?」
「おれ、魔力が取り柄なはずなのに、、、」
「どんまい」
「三谷も似たもんだろ!?」
「わたしは風ぽいの起こせたもん」
「、、、」
テンはその場で不貞腐れるように座り込んだ。
そんなノノカとテンを呼ぶ声がかかる。
「2人ともー、火を維持するの変わってー。あたし火キライ」
「 「まじで何なの!?」 」
必要とはいえ、火が嫌いなのに着火させたり、自分たちより魔力の有無が定かではなかったのに成功させたり。
そういった二重の意味がこもったツッコミが炸裂した。
それを気にも留めずに手招きするリオへ文句を言いつつ、テンがその場を変わる。
「え、すごい! 火ついてるじゃん!」
着火してから少し時間が経った頃。
火の番をしていたテンの元に、川の上流側の茂みから姿を現した人影が近づく。
何やら草を抱えたアンナと、木の枝を抱えたヨウスケだった。
「おつ~。え、何その草」
「陽ちゃんの鑑定で品定めした薬草」
「草じゃん」
「薬草」
「、、、はい」
アンナの圧にテンは敗北した。
「にしても、火はどうやって着けたの?」
「え、あーリオが魔法でボっ!と」
「、、、え???」
「ほら、あそこ見て」
テンの指さす先を見る。
そこでは___
「あー! 2人ともお帰りー!」
うず潮のように渦を巻く川のほぼ中央で、足首まで水につけたリオが、魚を素手で掴み掲げていた。
「 「???」 」
そばで見守るノノカも、何とも言えない表情をしている。
渦の中心にいるリオはともかく、ノノカが慌てていない為、アンナとヨウスケはとりあえずテンに視線を戻す。
気づかなかったが、テンの足元には大きな葉っぱを皿代わりに、魚が何匹か転がっている。
「一応、止めたよ」
「うん」
テンのやることはしました、と言わんばかりの説明が始まる。
「『サイズ的に嚙まれてもそんな痛くないでしょ。藻ぽいのを食べてる魚ばっかだからいける気がする』て」
「 「、、、」 」
「『糸がないから釣り竿作れないし。その辺の虫捕まえるのも危険』とも言ってた」
「俺を待って、鑑定してからって考えは、、、?」
「似たこと言ったら『いつ戻るか分からないし、思いついた方法を試したい。どっちにしろ食べる前に鑑定しないとだし』だって」
「、、、うん」
「天と三谷はよくやったよ」
「ありがとう」
経緯を聞いた2人は、ある意味で別れる前の不安が当たったことを理解した。
***
「はい、追加で5匹ね」
時間もかからずリオとノノカは3人の元へ戻ってくる。
魚の見た目はあまり元の世界で見ていたものと変わらない。
ここは異世界だということを自覚しきれていないこともあり、森に遊びに来ている気分になる。
「陽ちゃん鑑定よろしく~」
「おっけー」
「はい、莉緒ちゃんは正座」
「え」
ヨウスケに魚を渡すのを確認すると、アンナに肩を掴まれる。
リオは、助けを求めるも3人とも顔を合わせてはくれない。
「さ、先に足洗わせてくれない???」
「、、、はぁ、分かった。なんで川から上がるときに洗わなかったの?」
「え、川の水で洗うの汚くない?」
「、、、」
アンナは分からなくはないという気持ちを持ちつつ、少しだけ腹が立った。
何枚か用意していたらしい大きな葉っぱの上に乗ると、腰をかがめる。
「えーと、水が蛇口から出るイメージ、、、イメージはじゃばじゃば~と、、、」
ぶつぶつ唱えると、リオの指先から水球が生成され、そこから水が重力に従って流れ落ちる。
「マジで魔法だ、、、」
「すごい、、、!」
今までの常識ではありえない現象に、アンナとヨウスケは感嘆の声を上げる。
「でしょー。さっきの魚とりも、まほうで、、、あれ、、、? あたまがぼーとす、る、、、」
「莉緒ちゃん!?」
バタンっ___
「(おかしい、ちから、はいらない、かも、、、)」
意識がぼんやりとする。先ほどまで魔法を使うために出来ていた思考が回らない。
4人に名前を呼ばれている気がするのに、答える力が残っていない。
「え、急にどうしたの!?」
ノノカが狼狽える。
「『鑑定【リオ:魔力枯渇状態】』だって!」
「陽ちゃん! 魔力回復草てこれだった!?」
「それ!」
ヨウスケの鑑定結果に、アンナが即座に反応し、抱えて戻ってきた薬草の束から一房つかみ取る。
「くそ、水があれば! 千切って汁を飲ませるでもいける!? 莉緒ちゃん! 聞こえてる!? 意識は、、、ある!」
アンナがリオの意識状態を確認しながら声をかけ続ける。
「杏奈。水、出せた。陽ちゃんに鑑定してもらったら『飲用可、魔力による生成水』だって」
アンナの横から差し出された両手の中には、テン本人によって生成された水。
「ちょっ、天まで倒れたら!」
「沢村さんはかなり魔法を使っていたし、おれは魔力多いらしいし。これくらいなら問題ないと思う。現に何ともない」
「、、、ありがと! そのまま絞って汁を入れるから、莉緒ちゃんの口に落として」
「おっけー」
房ごと捻じって汁を数滴絞り出す。
「飲ませて!」
アンナがリオの態勢を整え待機する。
天が合わせた手のひらの底に隙間を作る。そこから流れ出した液体は、リオの口に注がれていく。
注いでは飲み込むを数回に分けて行い、全ての液体を飲み込ませる。
寝かせて見守ること数秒。
「ゲホッゴホッ、、、うぇぇぇ、にがいぃぃぃ」
「文句言うな!」
「よかったぁぁぁ」
「『鑑定【リオ:魔力不足状態】』 多少は回復したね」
「心配したよ」
「ごめんなさいぃ、、、」
「杏はさすが薬剤師! ナイスだったよ!」
「いえいえ~」
リオが反省し、無事終了と思った瞬間。
「じゃあ、莉緒ちゃん、そこに正座」
アンナの容赦ない声が響いた。
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アンナ【ジョブ:薬師 解放】
ジョブ解放による効果で
アンナ【スキル:調合Lv1 獲得】
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