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5話 薪拾いと収納



 5人が進んだ先には、透き通る水の流れる小川。


 川辺近くは砂利が積まれ、少し開けた場所となっていた。


「川だぁ! 水を確保ー!」


 はしゃいだ声を上げて、リオは駆け出す。


 時折魚が跳ねるような水音と、流れる水のせせらぎ。それ以外には何もない。


「莉緒ちゃん、近づきすぎないでよー」


 保護者のようなノノカの声掛けに、生返事を返して、数歩離れた位置から川の中を見つめる。




 ぐうぅぅぅ。




 静かな森に響いた、誰かの腹の虫の音。


 発生源の人物へ、一斉に視線が集まる。


「、、、腹減った」


「てーん? 緊張感なさすぎ!」


「川で魚釣れるかな? 腹が減っては戦は出来ぬっていうし。火が起こせたら焼いてたべれるし」


「火を起こすってい言っても、、、」


「サバイバル番組でやってたみたいな方法?」


「え、あのひたすら擦るやつ?」


「無理じゃない?」


 テンの空腹宣言を皮切りに、発言が飛び交う。


 顎に手を当て、傍から見たらぼーっとして見えていただろうリオが、ゆっくりと顔を上げた。


「、、、魔法」


「は?」


「え?」


「さっき、三谷と天に対して、陽ちゃんが『魔力多そう』って鑑定(仮)してたじゃん? ならこの世界は魔法使えるかなって」


「(仮)はウケる」


「あー確かに。でもさ、使い方とか分からないよ?」


「どっちにしろ、先に木の枝を集めようか」


「ついでに火を起こせそうな別の方法も考えながらね」


 ヨウスケとアンナの結論に3人が同意する。さらにアンナは言葉を続ける。


「遠くへ行かないこと。効率を考えて2チームに分かれるけど、莉緒ちゃんは迷子にならないでね?」


「なんで名指し」


「日頃の行い」


「反論できない」


 ノノカに追い打ちをかけられ、リオは項垂れるしかない。


 地図は読めるのに、と言葉にはせず言い訳しておく。


「んじゃ、グッパーしますか。2人と3人ね。せーの! グーとパー___」






       ***






「近くとはいえ、3人で大丈夫?」


「え、何で心配されてるの? こっち人数有利だよ?」


「遺憾の意」


「、、、そういうところじゃない?」


「なんか、同じチームなの不安になった」


 心底アンナの心配が分からないという態度のリオとテンに、ヨウスケは苦笑いし、同じチームになったノノカは呆れ顔である。


 公平なチーム分けの結果、アンナ&ヨウスケ、リオ&ノノカ&テンとなった。神様は何を考えているのやら。


「とりあえず時間は分からないから、両手で抱えられる分くらい集められたら、ここに戻ってくるでいい?」


「おっけー」


「了解」


「本当に気を付けてね」


「まかせなさい!」


「不安」


「遺憾の意」


 リオが皆に最終確認するも、アンナの心配は払拭できなかったようだ。


「あたしらはあの辺を見てくるね」


「じゃ。俺らはあっち行くか」


 リオが指をさしたとは反対側に視線を向けたヨウスケは、アンナを伴って歩き出す。ノノカとテンもリオに続く。


 さすが人数有利と宣言しただけあり、3人で黙々と拾っていると、それを持ち上げた天の腕いっぱいに木の枝が積まれていた。


 なぜ黙々と拾ったかというと、魔獣の気配を(さと)れるようにという、ちゃんとした戦略だ。


「、、、結構、集まっちゃたね」


「集中してたからね」


 3人は座り込んで、足元に積まれた木の枝を見下ろす。


「服がそのままなら、カバンとかもそのままにしてほしかったよね。女神め」


 女神への恨み節を発動したリオ。


「でも、何だっけ? 沢村さんがお願いしてた___『アイテムボックス』?」


 テンが人差し指の先を回して遊びながら呟いた瞬間、その指がなぞった軌道に沿って空間が突如として裂け広がる。


「え?」


「はぁ?」


「、、、なんで本人が驚いてるの?」


「いやいや、意味わかんないって! おれ何もしてない!」


 発動した本人が一番混乱している。


「これが『アイテムボックス』ようは、『収納スキル』かもね」


「これが?」


「天がさっき言ってたじゃん。『アイテムボックス』て」


「あれは思い出して無意識に声に出ただけだし、、、」


「試しに枝を何本か入れてみよう!」


 好奇心の湧いたリオが、数本を手に取ると、軽い調子で投げ入れていく。


「おいおいおい、どうやって取り出すんだよ!」


「そりゃ、手を突っ込んで?」


「誰が?」


「天がでしょ? 持ち主なんだし」


 さも当然と首をかしげるリオ。テンは開いた口が塞がらない。


「えぇぇぇ」


「覚悟決めなって」


「三谷は誰目線なの???」


「あたしが手を入れると、防犯機能が発動する可能性あるかもだし」


「そんな便利な機能あるんだ」


「いや、知らない」


「おい」


「少なくとも、持ち主を害する確率は低いでしょ。そもそも収納スキルが何かを害するって設定見たこと無いし」


「設定いうな」


「、、、どこ情報?」


「異世界漫画とかアニメとか」


「 「、、、」 」


 らちが明かないと覚悟を決めたテンは2人に見守られ、意を決してマーブル模様の覗く裂け目へ手を入れる。


 顔を逸らしたまま、少しずつ腕を伸ばし、何かないかと頻りに振ってみる。


 コツン___


 少し硬い感触に、確信したテンは腕を引き抜く。


 取り出した腕の先に握られていたのは、先ほど投げ入れられた枝の1本だった。


「おぉぉぉ!」


「やっぱり収納じゃん!」


「持ち運び楽になる!」


 やったー!とハイタッチする2人に、テンも混ざって喜ぶ。安全が分かれば強い味方であるのは確定だ。


 多分、沢村さんの喜びようからしてそうだろう、とテンは判断した。


 立ち上がったリオが背伸びをする。


「試したいことあるから戻ろう」


「試したいこと?」


「うん、、、魔法を少々、ね」


 集合場所まで距離はなく、目印の代わりに積んだ石の元に向かうと、まだアンナとヨウスケの姿はない。


 そこの横にさっそくテンは、木の枝を収納から取り出す。3人は向かい合い、記憶を頼りに意見を交わしながら、大きめの石で円を作り、それっぽい形に整える。


 中央に枝を交互に重ね、焚火の完成である。火はまだない。


「んで、試したい魔法って?」


「え、火魔法」


「だよね」


 ここまで準備すれば分かるとばかりにノノカは頷く。


「なら、おれからやってみたい!」


 名乗りを上げたテンは立ち上がる。その言動に素早く2人は距離をとった。


「、、、離れすぎじゃね?」


「ケガしたくない」


「同じく」


「成功するかもしれないじゃん!」


「成功しようが失敗しようが、近いと火傷するかもでしょ!」


「それはごめんね!」


「料理の仕事してるせいで、火との距離感バグってるの?」


「火との距離感て何?」


 ノノカの疑問を無視して、リオは視線をテンの手元に戻す。


 リオ本人も火との距離感なんて分からない。テキトー言っただけである。


 積まれた木の枝へ手のひらをかざしたテンは、念じているのか目を閉じ唸る。


 変化が起きないと悟ると、次は詠唱しだした。


「火よ出ろ!」


 変化なし。


「炎よ、いでよ!」


 変化なし。


「、、、火炎よ__」


「、、、どんどん規模がデカくなってる」


「待て待て待てっ!」


 バシンっ___


 思わずリオが駆け寄り、テンの頭を叩いて強制的に止める。


「バカなの!? こんな所で大炎上させる気か!?」


「痛ぁ」


「そんなに力込めてないわ!」


 痛がった素振りをするテンを睨んで、リオは溜息を吐く。


「次はわたしやってみていい? 天よりは少なそうだけど、魔力多そうて言われたし」


「、、、変な事しないでよ?」


 テンの例があり、ノノカに釘をさす。


「はーい」


「、、、遺憾の意」


「だまらっしゃい」


 テンと位置を交代し、ノノカが焚火の前に立つ。リオとテンは数歩離れ見守る。


 深呼吸したノノカが、両の手のひらをかまえる。


 すると、途端にノノカの長い髪がさらさらと揺れ始めた。


 リオとテンの目は、ノノカを包むようにして弱い風が吹いている光景が焼き付く。


「すごい、、、!」


「うん、すごい。すごいんだけど、これって、、、!」


「あ」


 感動していたリオに同意しつつ、テンが何かに気づく。


 2人の声に集中が切れたのか、安定して見えた風が一瞬にして離散し、焚火に積まれていた木の枝が周囲に散らばる。


「、、、不発かも。そもそもこれ、火じゃなくて風だわ」


 あっけらかんと言ってのけたノノカに、2人は肩を落とす。


 その後2回ほどトライするが、不発に終わった。




___________________


テン【スキル:収納 解放】

 

 スキル解放による効果で 


テン【スキル:容量Lv1 獲得】

___________________





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