2、吸血姫と天才皇太子の出会い②
第2話です。宜しくお願いします!
「サミュエル皇太子殿下、お初にお目にかかります。トライトン王国第3王女、シルヴィア・トライトンと申します。本日は我が王国まで足をお運び頂き、誠に有難う御座います」
目の前の少女ーーシルヴィア・トライトンは、ゆったりと上品に淑女の礼をとり、言った。
黒曜石のように艶めく黒髪がさらりと垂れ、ルビーのような輝きを放つ赤目が伏せられる。
宝石のような、煌びやかな儚さを纏う姫だった。
「初めまして、シルヴィア王女。アルデンブルク帝国皇太子、サミュエル・クロエ・アルデンブルクと申します。本日は突然の訪問に応えて頂き、誠に有難う御座います」
「存じ上げております。私も次期アルデンブルク皇帝とお会い出来た事、心から嬉しく思います」
まずは形式的な挨拶を交わした後、俺達はソファに腰掛けた。
「では、私達はこの辺で。どうぞごゆっくりお寛ぎ下さいませ、皇太子殿下。ラナ、行こう」
ミハエル陛下が、ラナと呼んだ美女を連れて部屋から出て行く。
部屋にはシルヴィア王女と俺の、2人きりになった。
最初に口を開いたのは彼女だった。
「皇太子殿下、この紅茶はお口に合いましたでしょうか?」
「ああ、悪くない。何だろう、この華やかな香りが他とはまた違っているな」
「良かったです。トライトン南部でしか摘むことが出来ない特別な茶葉なんですよ」
「へえ、何という銘柄だろう」
「ええと、確か…」
彼女との会話はとても楽しかった。
今まで婚約者候補として多くの令嬢と話してきたが、シルヴィア王女は彼女らとは違った。
自国についての豊富な知識。
人の興味を惹きつける会話力。
権力者に対して媚を売らない謙虚な態度。
純粋無垢な彼女の性格が、話していてひしひしと伝わってきた。
正直言ってとても好感が持てた。
ミハエル陛下が言っていた通り器量も良い。
言葉遣いも態度も仕草も、淑やかで気品があった。
今まで会ってきた令嬢の中で、彼女が1番次期皇后に相応しい。
俺は本気でそう思った。
しかし。
(…弱いな)
彼女を婚約者とするには、決定打が足りない。
いくら性格が良いとしても、綺麗事だけで皇后はやっていけない。
(有力候補ではあるが…彼女を婚約者とするのは難しいだろうな)
話し始めて早々に俺は彼女を諦める事を決めた。
名残惜しくはあるが、自分の目で、次期皇后に本当に相応しい令嬢を選ぶのが、皇太子の役目だ。
そこに個人的な主観が入ってはならない。
恋愛感情や下心などもっての他だ。
皇族に、自由な恋愛など許されない。
むしろ、自分の意思で選べるだけ俺は幸せだと思わなくてはならないのだ。
そしてシルヴィア王女との対面は終わった。
彼女のように、話していて暇をしなかった令嬢は初めてだった。
「本日は有難う御座いました、皇太子殿下。お気をつけてお帰りくださいませ」
「こちらこそ有難う、ミハエル陛下。良い一日だったよ。また来させて貰えると嬉しい」
「有難いお言葉に御座います」
来た時と同じように、ミハエル陛下が正門で深く頭を下げて言う。
彼の双子の妹(もうどちらがラナでどちらがラナじゃないのか分からない)とシルヴィア王女もそれに合わせて頭を下げた。
俺も軽く礼を告げ、ミハエル陛下の横に佇むシルヴィア王女に声を掛けた。
「シルヴィア王女。今日は本当に楽しかった。また一緒に話せる日を楽しみにしているよ」
「勿体ないお言葉です、皇太子殿下。私も大変楽しゅう御座いました」
そう言って彼女はにっこりと微笑んだ。
そして従者にエスコートされ、俺が馬車に乗り込もうとした、その時だった。
「皇太子殿下!身をお屈め下さい!鎌鼬です!!」
ミハエル陛下の焦ったような声が、後ろから聞こえた。
その途端、俺の身体に、刃物で割かれた様な衝撃が走った。
サミュエルのONOFを早く書きたい今日この頃です。




