1、吸血姫と天才皇太子の出会い①
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「初めまして、サミュエル皇太子殿下。本日は我がトライトン王国までご足労頂き、誠に有難う御座います。私、国王のミハエル・トライトンと申します。どうぞお見知りおきを」
そう言って、トライトン国王は正門で深く頭を下げた。
随分と腰の低い国王だ。
彼の第一印象は、そんなものだった。
「有難う、ミハエル陛下。貴殿の出迎え、心から感謝申し上げる」
「私めには勿体ないお言葉。さ、殿下を茜の間へ」
控えていた執事が静かに前に出てきて、俺は丁重にエスコートされた。
何だ、落ちこぼれ王国だとか言われてたけど、そこらの公国よりしっかりしてるじゃないか。
俺はされるがままに部屋に促され、アンティーク調のソファに腰掛けた。
調度品も悪くない。
使用人の質も悪くない。
へえ、噂も案外アテにならないものだ。
俺はミハエル陛下が腰掛けたのを確認し、声を発した。
「本日は突然の訪問にも関わらず、このように出迎えてくれて有難う。さぞかし準備は大変だっただろう?すまなかったな」
「我が国のことなぞまでお気遣い下さる殿下の御心、心より尊敬致します。流石は次期アルデンブルク国王にいらっしゃる」
流石にへりくだりすぎでは無いか。
俺が微笑を浮かべると、ミハエル陛下は労うように眉を下げた。
「殿下は今が一番忙しい時期でしょう。何かと物事が急になってしまうのも致し方ありません。どうかお気を遣わず、此処でだけでも寛いでいって下さい」
「有難う、ミハエル陛下」
俺が笑みを浮かべると、ミハエル陛下は何とも爽やかに笑った。
ミハエル陛下は御年27歳と、国王にしてはかなり若い。
何でも先王が突然崩御したらしく、20代にして国王即位という異例の事態に発展したそうだ。
その為まだ王妃は迎えておらず、ミハエル陛下と彼の3人の妹でトライトン王国を支えているのだ。
そして俺は、彼の末妹に会いに来た。
彼女が、俺の婚約者候補だからだ。
「そうだな…。ここ最近はゆっくり寛げる時間もなくて。お言葉に甘えて寛がせて頂こう」
俺がゆったりと脚を組むと、ミハエル陛下も背もたれに背中を預けた。
「婚約ですか…。私にもそんな時期がありました。結局決まらなかったんですがね」
彼は薔薇のような赤い髪をかき上げ、懐かしむように目を細めた。
「何故決まらなかったんだ?貴殿ならば選び放題だろうに」
「いや、中々御令嬢が集まらなくてですね…。何せこんな田舎の小国ですので」
ミハエル陛下は自嘲するような渇いた笑みを浮かべた後、上半身を勢いよく前に倒した。
「如何なんです?もう婚約者の目処は立たれているんですか?」
悪戯っ子のように聞いてくるミハエル陛下。
仮にも、今から妹を婚約者にと勧める国王には見えない。
「いや、それが全然駄目なんだ。皆皇后の地位に目が眩んでいるだけに過ぎない、媚しか売ってこないんだ」
「ああ、お察し致します…」
彼はくつくつと笑い、目尻を拭った。
「まあうちの妹は無いでしょうね、紹介しといて何ですけれども」
「其方の妹…シルヴィア王女は妃教育は受けていないのか?」
「いいえ、しっかり受けておりますし、中々の器量良しでございますよ。ただ…こんな田舎の王女が大国の皇后になど選ばれる筈が無い、と…」
「いや、皇后は身分で決めるものじゃない。御令嬢の素質で決まるものだ。私は偏見は持たないよ」
「有難きお言葉です、皇太子殿下」
陛下はまた目元に皺を寄せて笑った。
「しかしうちの妹が田舎者で皇后になど相応しくない事は事実で御座います。殿下、どうか婚約者候補などと気負わず、ただの話し相手として接してやって下さい」
「有難う、ミハエル陛下。心に留めておくよ」
こうして談笑していると、扉がノックされた。
入ってきたのは、ミハエル陛下と同じ赤髪の美女。
歳は20歳前後だろうか、はつらつそうな女性だった。
恐らくこの人が、ミハエル陛下の双子の妹のどちらかだろう。
トライトン王国の人達は皆、赤髪らしい。
「サミュエル皇太子殿下、お待たせ致しました。シルヴィアの準備が整いました」
おいで、シルヴィ。
彼女が呼ぶと、扉の奥から俺と同い年くらいの可愛らしい少女が現れた。
俺は言葉を失った。
「殿下、ご紹介致します。我が妹、トライトン王国第3王女シルヴィア・トライトンに御座います」
ミハエル陛下の声も、何故か遠くに聞こえた。
トライトン王国の王都に来てからは、誰を見ても赤い髪色をしていた。
しかし目の前の少女ーーシルヴィア・トライトンは、目にも鮮やかな黒髪を持っていた。
あ、あったかい目で読んで頂けると嬉しいです…(小声)…!




