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幼馴染を助ける為、異世界を行く  作者: 秋葉月
第2章 城塞都市編
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第2章 12.驚嘆



「ご、ごめんなさい……」


「いや、こっちも悪かった」


 日が沈み、闇が世界を覆い尽くさんとする中、宏人とメリダは互いに向き合い謝罪の言葉を口に出した。

 パチパチと音を立てて燃える焚き火をすぐ側に置き、二人は殆ど同時に頭を下げる。赤く光る炎に照らされて宏人達の顔を明るく照らした。


 その様子をルヴィクとアンは不思議そうに、マルクスは何故だか満足気に見ている。


「何があったんだ?マルクス」


「さあ、知らないけど……」


 じゃあ、なんでそんなドヤ顔してるんだ?という疑問を抱くルヴィクだが、すぐに自分を納得させる。どうせ何も考えていないと。ただ気分でそういう顔をしているんだろうな、と。


「俺が原因なのに、メリダに変な思いを抱かせてしまったんだ。俺が悪いんだ」


「で、でも、それに不用意に踏み込んだのは、私で」


 その間も、二人は未だに謝罪のキャッチボールをしている。まるで水掛け論のように。

 その様子を見て耐えかねたのか、アンが丁度焼けていた数少ない魚を二人に差し出す。


 突然、目の前に魚を差し出され困惑気味であった二人だが、アンの鬼気迫る表情に反射的に手に取ってしまった。


「いい加減にしろぉ!どっちもどっちやろ!なら、謝った時点で終わりや」


「アンの言うとおりですよ、ヒロトさんメリダ」


 大声でアンがそう叫び、腕を組んで座った。そして付け加えるようにルヴィクがそう声をかけた。

 その二人の言葉に宏人とメリダはそれ以上の謝罪を諦める。


「そう、だよな。せっかくの食事だし、こんな感じじゃ空気も悪くなる、か」


「で、ですね」


 宏人が言葉に詰まりながらそう言うと、メリダはそれに同意するように何度も頭を縦に振っている。


 それから幾分か時間が経ち、宏人は視線を落とす。手に持ったこんがりと焼けた魚を一瞥し、勢いよくかぶりついた。ほんのりと焦げた匂いがする中、薄い塩味がいいアクセントになっていた。

 ふと隣を見てみると、メリダも同じように魚を食べている。細い骨を何本か手で避けながら小さな口で噛り付いていた。


 それを安堵した気持ちで宏人は見る。

 先程の件は完全に宏人の失態だった。それなのに彼女を変な気持ちにさせてしまった。だからこそ、宏人は見ていて申し訳なくなったのだが、今の表情を見るにその件についてはもう安心できるようだ。


 それよりも、一生懸命に魚を食べるメリダは本当に微笑ましい。宏人は

 その視線をどのように受け止めたのか、目の前に座るアンが冷やかすような声色で宏人に声をかける。


「なんだい?仲直りしたら、すぐに色目を使うのかい?」


「ヒロトさん、何を見ているんですか?」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ、こちらを見てくるアンとルヴィク。その言葉を不思議に思うメリダとマルクス。そしてその言葉に顔を赤くする宏人。



 この日、森に五人の笑い声が最も響き渡った瞬間であった。



 ◆



 ー一週間後ー



「これが、城塞都市ベイルート……」


 宏人は眼前に聳える巨大な壁を見上げながら、そう呟いた。


 森を抜け、宏人達一行が辿り着いたのは、高さ五十メートル程の巨大な壁に囲まれた都市だった。

 それこそ、宏人達のいるカールス大陸に存在する国『ルト・アクア王国』その最南端に位置する城塞都市ベイルートであった。


「話には聞いてたけど、やっぱ百聞は一見に如かずか」


 ここに来るまでにルヴィク達から話は一通り聞いている。なんでも、この壁は宏人達の出てきた森、ビルスク大森林から時折出現する魔獣対策に築かれた壁であり、建設以来壊れた事はないのだとか。つまりこれはこの都市の象徴であり、市民にとっての平穏の証なのだ。


 壁を見上げながらそう聞いた内容を頭の中で反芻していると、後から続いてきたルヴィク達が苦笑しながら話しかけてきた。


「やっぱり実物は違いますよね」


「俺らも始めて見たときは、驚いたよな」


 そう話し始めたが、壁に驚嘆している宏人には届かない。

 元々インドア派だった宏人だがこの世界に来てからは、元の世界とのギャップのせいか外の景色に感動するようになってきた。

 初めて景色に感動したのは、夜空だろうか。鍛錬からウルスラグナの隠れ家に戻る際、ふと見上げた時に空に浮かぶ星々に心を奪われた。


 あれだけの星々の輝きは日本では見た事はなかった。

 そう思うと自然と心が湧き上がったものだ。


 そして今、宏人はその時よりも心躍っていた。

 子供のように目を輝かせながら、壁を見上げる宏人を見て更に苦笑するルヴィク達。


「さあ、そろそろ中に入りましょうか」


 そのルヴィクの一言で、宏人はようやく我に帰った。



 森を抜け、少し西に歩くと小さな人だかりが確認できた。

 どうやら町に入るための検問をしているらしい。

 宏人達もその列に並び、町に入る準備に移った。


 堅牢な城壁が聳える中ポツンと空いた大きな穴、その奥には活気溢れる街の様子を見ることができた。

 そしてその少し手前では小さな窓口から身を乗り出した人物と馬車を走らせている行商風の男が会話をしている。


 その様子を興味深く見ていた宏人だが、ルヴィク達が何やら準備をしているのを見て、問いかける。


「何をしてるんだ?」


 その問いに答えたのはメリダだった。


「あ、私たちはプレートがあるので、それを使って入るんです。ヒロトさんは持ってないですよね」


 首を縦に降る宏人。


「じ、じゃあ多分今回発行されるので、それを受け取るだけでいいと思います」


「プレートって何だ?」


「プレートは、こんな金属の板で、その人の魔力波長の刻まれた板の、事です。魔力波長は人によって違うので、これで個人の特定ができるんです」


 そう言って自らの鞄から一枚の金属の板を取り出したメリダ。薄く小さなプレートだった。イメージで言えば、ハッ◯ーターンを一回り大きくして薄さを半分にした感じだろうか。そんなものが鈍い光を放ちながら、メリダの手の中に収まっていた。


 宏人はそれに対して感嘆の意を示す。

 魔力波長が個人によって異なるのは、魔導書から知っていたが、このような応用方法があったとは考えなかったからだ。恐らくは指紋のような立ち位置にいるのだろう。


 唯一の懸念材料はその魔力波長の刻み方だが、全て聴いてしまうと面白みが欠けるので、口に出そうとしたメリダを手で制する。


 そしてそれから数十分が経った頃、ようやく長かった列が短くなっていき、ついに宏人達の番となった。

 ルヴィク、アン、メリダ、マルクス、宏人の順に並び四人が各々のプレートを差し出していく。そして次に出てきたのがバレーボールほどの大きさの水晶だった。

 それに一人ずつ手をかざしていく。こっそりと『魔力眼』を発動させ様子を見ていると、各人魔力をその水晶に流し込んでいるようだった。


 魔力を流し込むと、水晶は数拍おいてから光り震えだした。それを確認すると門番らしき人物は次々に街の中へと通していく。


 そして、とうとう宏人の番となった。


「はい、プレート出して」


 適当に門番らしき人物はそう言った。恐らく何度も繰り返した言葉なのだろう、面倒くさいという感情がありありと伝わってきた。


「えー、プレート?は持ってないんです」


「あー初めて?そうかそうか、じゃあちょっと奥に来て」


 そう言って街の方向とは別のところに設置された扉へと案内される。何故か悪いことをしたかのような扱いだが、初めてはこんな風にされるのだろうか。

 門番とは別の男が、扉を開けたところに一人立っていた。男は何も言わずに奥へと進んでいく。多分、付いて来いと言っているのだろう。宏人はそれに付いていく。


 案内されたのは、石でできた小さな部屋だった。

 真ん中に木製の椅子が二つ置いてあり、それで挟まれるように四角い机が一つ置かれている。

 さながら取り調べ室のように。


 ますます不安になってきた。片方の椅子に座らされ、静かな部屋で一人 (正確には二人だが)待たされる。


 それから少し経ち、入ってきた扉の奥から足音が聞こえる。だんだんと近づいてくるそれは、宏人のいる部屋へと近づいているようだった。

 そして、足音が止み扉がゆっくりと開く。奥から出てきたのは背の低い、それでいて肉付きの良い豊かな髭を蓄えた一人の男だった。


 男は手に持った一枚の金属の板と門番の男に差し出された水晶を大事そうに抱え、宏人の前へと腰掛ける。

 そしてゆっくりと口を開いた。


鉱人族ドワーフのセドリックだ。プレートを持っていないとの事なので、今回作らせてもらう。説明はいるか?」


 その言葉に宏人は小さく頷く。それを見てセドリックは一枚の板を差し出してきた。

 鈍い光を放つそれは、メリダ達の持つプレートと同じ金属だとすぐに分かった。


「この金属は魔力を流し込むと、その波長によって特定の形に変形する性質を持つものだ。極僅かな変化だが、それをこの水晶にかざすことで読み解くことができる。後はこの水晶に魔力を流し込むことで、同一の魔力波長か調べるわけだ」


 そこでセドリックは言葉を止める。

 そして一拍置いた後宏人に向き直し、


「まあ、言ったところで分かりにくいだろうから、試すのが一番だな」


 そう言って金属の板を宏人に手渡す。 宏人はそれに躊躇わず魔力を流し込んだ。

 そのままセドリックが止めるまで数秒の間流し込み、止めた後セドリックへと差し出した。

 手渡された金属の板をセドリックは水晶にかざす。すると水晶が淡く光り出した。


「これがあんさんのお前さんの魔力波長だ。次にこの水晶に魔力を流し込んでくれ」


 言われるがままに水晶に手を当て魔力を流す。魔力を流し込まれた水晶は先ほどと同じように光り出した。


「よし、成功だ。後はこの金属を小さく形を整えて完成だ。このプレートは街での身分証になるから、絶対に無くすなよ。まあスられたところで使うことはできねぇが」


 セドリックは手に持った金属の板を道具を使わずに形を変えていく。鉱人族ドワーフは金属や鉱物を扱うのに長けており、恐らくは魔法の類で金属を変形させているのだろう。


 そしてメリダの持っていたプレート程の大きさになった頃、セドリックはプレートを宏人に手渡してきた。

 よく見ると両端に小さな穴が空いている。そこから紐を通すことができるようだ。


「ありがとう」


 プレートを手に取り、短く感謝を伝える。

 それに対してセドリックはただ笑みを浮かべるだけだった。



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