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-決意の星はひときわ輝く-

 

「未来(みく)の……抹消……?」

「あぁ。あいつのせいで俺達の未来は狂ってしまった……」


 少し先の未来で欲しいものを手に入れた未来はその得体の知れない『力』を用いて世界政府を恐怖に陥れた。

 目的は『自分と楓汰(ふうた)だけの世界を作ること』だそうだ。

 困り果てた政府は彼女が『力』に目覚める前に未来人を送ることにした。

 そして、当時7歳にして天才と称された科学者、中村(なかむら)を過去に送り込むことに成功したがそこで更に恐るべきことを知ることになる。

 澤野(さわの) 未来は死んでいたのだ。

 けれど、未来に帰る手段を持たない中村は俺たちと出会い、普通に暮らすことにした。

 これが、中村の話した内容だった。


「正直、俺はお手上げなんだ……あんな怪物……」

「怪物って……」

「あいつは怪物だ。バケモノだよ。きっと『浄化の光』も効いていないだろうさ」

「中村、お前が持ってる薬は……なんなんだ……?」

「これか?基本は普通の薬だ。胃薬とか熱冷まシートとか」


 冗談を言う中村の目は曇ったままだった。

 どうにかして……俺が未来を止めないと……

 すると、突然ガタッと音がして真結(まゆ)が座っていた椅子が倒れた。


「ん…………ッ」

「んぐ…………ま、真結ちゃん……?」


 俺と中村の前に広がった光景は、真結と山本のキスシーンだった。

 これが『力』の譲渡方法だと知っている俺だが、流石に唐突過ぎて空いた口が閉じない。

 というか、真結の顔が凄く艶かしい感じで、あまりジロジロ見るようなものじゃないとすら思える。


「おい、なんだよこれ……なんでいきなりイチャイチャし出したんだよこいつら……ぶん殴っていい? 薬投げていい?」

「落ち着けって! あれは『力』を譲渡する方法なんだよ……なんだかちょっといかがわしい雰囲気出てるけど……!」


 俺と中村が小声で講義し合っていると、真結がやっと山本から離れた。


「いきなりごめん……でも、これで『力』渡せたよね……?」

「お、おう……」


 チャラい山本さんが動揺していらっしゃる!

 しかも顔が真っ赤よ!

 頭の中で奥様方がお話を始めたが、それは打ち切り。

 中村は苦笑いで硬直している。


 ピコーンと俺の頭の中で、何かが閃いた。

 だが、これは俺にはあまりにも耐え難い代償を必要とする方法だった。


「なぁ、山本……俺の『力』を使って未来が死なない過去を作ったら、未来は変わるのかな……?」

「お前……まさか……!?」

「可能……なんだよな……」

「あぁ。不可能じゃないと思う……でも、過去を変えたら俺たちの関係は……ッ!」


 山本の悲痛な叫びにハッとする真結と中村。

 きっと過去を変え、未来を助けてしまったら『力』なんて無かったことになる。

 そうなれば、『力』という共通点を持った俺、山本、真結、そして明日葉(あすは)は出会わないことになるだろう。

 未来が将来、世界を脅かすことが無くなるのだから必然的に過去に飛び立つことのなくなる中村とは出会うことすらなくなる。

 それは中学生の俺にはとてつもなく重い選択だ。


「それでも……それでも決めないといけないんだ……みんなのために」

「おい、冗談だよな……? お前、本気だったらぶっ飛ばすぞ?」

「本気だ……ッ!」


 バシンッ!と乾いた音が響いた。

 俺はジンジンと痛む左頬を押さえながら山本を見た。


「俺は……俺はこのみんなが好きなんだ! 無かったことにされるくらいなら、みんなと死んだ方がマシだッ!」

「山本……」

「みんなじゃない……明日葉は死んだんだ! 俺の目の前で死んだ……ッ! もうこんな思い、したくないんだよ!!!」


 山本の反論を無視した俺の涙ながらの叫びに、みんなが黙り込む。


「ごめん……でも、俺にはこうするしか……これ以外なにも思いつかないんだ……」

「そんなこと……」

「やめとけ。どーせこのバカは止められないさ」

「でも……俺は……俺たちは……」

「わかってる……わかってるさ」


 俺の気持ちを理解してくれた中村が山本を止める。

 俺はその気持ちに感謝しつつ、それを口に出せずに外へ出た。




「今日も1日平和……か……」


 独り外へ出た俺はそう呟いた。

 もしかしたら今日にでも死んでしまうかもしれないのに、世界は空気を読まずに快晴の空を見せつける。

 大通りを歩く人たちも、みんな笑顔で仲睦まじく話し、消えてゆく。

 何も無い日常。

 それを平和というのだろう。

 それなら俺は平和じゃないな……

 少し歩いた先にあるコンビニに寄ろうか……

 それとも、本屋さんにでも寄ってまだ読んでいる本の続きでも買おうか……

 普段ならどちらかを選んでいただろうが、今はそんな気にはなれない。

 ふと空を見上げると少し薄暗い程度の夜空に星が瞬いていた。

 帰ろう……俺の仕事はそこからだ……

 俺は手をグッと握り、家へ向かった。




 ポッカリと宙をたゆたう感覚。

 少し久しい感じがするな……

 真っ暗な世界に、いつも聞こえる少女の声は無かった。


「明日葉……いないのか……?」


 代わりに違う少女に問いかける。


「いますよ……私はいつでも楓太さんの心の中に……」

「明日葉……俺……」

「わかっていますよ……でも、楓太さんなら乗り越えられる……だって、私の大好きな楓汰さんなんですから……!」

「……ッ! 明日葉…………ありがと…………」


 明日葉の言葉は、ひとつひとつ俺の心の中に染み込んでいくようだった。

 俺は近くにあった数字列に触れ、未来と俺が幼かった頃を強くイメージする。

 明日葉を失わない世界を創るために。

『力』によって、誰も傷つかない世界を創るために。

 俺は過去を書き換えなければ……!


「じゃあ、行ってくるよ」

「はい! がんばってくださいね」


 明日葉の眩い笑顔を最後に、俺の意識は過去へ飛ぶ……


次話から私が執筆する作品はあとがきを無しとさせていただきます。


ご理解のほどをよろしくお願いします。

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