-再会の星は暗く輝く-
無音。
視界いっぱいに広がる白。
普段とは違う世界。
うっすらとした意識の中、俺はその世界に浮かぶだけ。
「ここは・・・?」
声を出してみるが、返答はない。
一体なにが起こったんだ・・・。
コンコンと靴を鳴らす音が聞こえた。
「誰だ・・・?」
聞いてみたが、しばらく何も聞こえなかった。
そして、どこかで匂ったことのある香り。
「も、もしかして・・・」
俺がそこまで言ったところで、目の前に現れた『少女』は口を開いた。
「久しぶりですね・・・楓汰さん。」
優しい、とても優しい声だった。
「あ、明日葉・・・?」
俺の声は震えていた。
「そーですよ。死んじゃってごめんなさい・・・」
少女、明日葉は悲しげな笑みを浮かべた。
「どうして・・・?」
俺は自分が泣いていることに気づいた。
「私は、自分が死ぬのがわかっていました・・・」
明日葉は切なそうに語り出した。
そこには俺への積極的な行動の理由も含まれていた。
「私の『力』は上手く制御できませんでした。だから、突然知らない人から声が聞こえることがありました。その時に出会ったのが未来のあなた、楓汰さんでした・・・もちろん、私は出会う前だったので楓汰さんのことは知りませんでした。」
不思議な気分だ。
未来の俺が明日葉に会ったということは、今の様に号泣していたのだろう。
「未来の楓汰さんは私に教えてくれました。私が未来で出会うこと。同じ『力』を持っていること。そして、私が殺されること・・・そこまで聞いて、なぜ泣いているのか理解できました。」
そこで言葉を区切った明日葉は、1歩俺に近付いて、手をとった。
そして、強く握った。
「実際に私は楓汰さんと出会い、『力』を持っていることを知り、恋に落ちた・・・その想いは今も変わっていません。けれど、私は殺されてしまう。だから、私は決意しました。そして、その決意の結果が今です。楓汰さん、あなたには私の『力』が宿っています・・・これは過去の人から聞いた話です。過去にも『力』を扱う人が少なからずいたようです。彼らには『力』の受け渡しが可能でした。その方法は・・・キスでした・・・だから、私はあの観覧車の中で楓汰さんに『力』を譲りました・・・」
明日葉はゆっくりと語った。
手に込められる力がだんだんと強くなっている。
「これも全部過去の人に聞いたものなんです。そして、楓汰さんが今話している私は、殺される少し前の私なんです。あなたは過去の私と話をしているのです。」
俺は唖然として明日葉を見る。
明日葉はまた悲しげな笑みを浮かべた。
「俺は・・・君を助けられなかった・・・」
「仕方ないのです。私はそういう運命なのですから。」
「守る事もできたかもしれないのに・・・」
「私が楓汰さんを守りました。」
「君が好きだったかも知れないのに・・・」
「私は今も楓汰さんが大好きですよ。」
「俺は・・・俺は・・・」
嗚咽を漏らしながら泣く俺の背中を明日葉は優しく撫で続けた。
意識がだんだんと微睡んでゆく。
嫌だ・・・もっと一緒にいたいんだ・・・
俺は消えつつある意識の中で強く願った。
けれど、何も起きない。
「私はいつも楓汰さんを見守っています。あなたならなんだってできます。」
最後に明日葉の優しい声を聞いて、俺は意識を再び落とした。
目を開けると、見慣れた天井があった。
「起きたか・・・おい、何泣いてるんだ。」
中村が心配そうに俺を見る。
「いや、なんでもないんだ。少し・・・夢を見ていた。」
俺が曖昧に言うと、中村は少し不満そうな顔をしてその場を去っていった。
きっと山本たちでも呼びに行ったのだろう。
しばらくすると、大勢の足音が聞こえた。
「楓汰!大丈夫か?!」
寝室のドアを叩き開け、山本は大げさに俺の体を揺らした。
「大丈夫!大丈夫だから!痛いって・・・痛いって!!!」
何故か枕で俺を殴る山本に大声で怒鳴っておく。
「ご、ごめん。つい嬉しくて・・・」
山本は舌をぺろっと出して右手を頭にコツンと置いた。
ぶっとばしてやろーか・・・!
「見て見て~クッキー作ったの~!」
ことりがクッキーが山盛りに乗ったお皿を満面の笑みで持ってきた。
なんだかお泊り会みたいになってない!?
「じゃあ、作戦会議といこうか!」
山本はクッキー片手にそう言った。
サクサク・・・サクサク・・・
クッキーを頬張る音だけが研究室に響く。
「何を作戦会議するんだよ!」
つい叫んでしまった。
「そう言われても・・・中学生になんとか出来る問題じゃないとか・・・」
山本が申し訳なさそうに首を引っ込める。
「ならはじめからやるなよ!!!」
ダメだ・・・このままでは拉致があかない。
「俺が知ってる事を全部話す!ことりは信じられないかもしれないけど、頑張って理解してくれ。」
「わかった」
ことりはブンブンと首を縦に振って頷いた。
「俺は夢の中で何度も死んだはずの幼馴染みに会った。その幼馴染みが『力』の支配者だ。ある程度、俺たちの『力』を制御できるらしい。」
「なっ・・・!?」
山本が驚いた声を上げた。
「そ、それじゃあ、私たちの『力』は無意味なの・・・?」
真結が震えた声で言った。
「それはわからない・・・」
「そんな・・・」
みんなが沈む中、1人だけ首を傾げているのはことりだ。
「それと、もう1つ。『力』の受け渡しが可能らしい。方法はその・・・キス・・・することだ。」
真結とことりが顔を紅くし、山本と中村が爆笑した。
「ハハッ俺は絶対お前にあげねーからな!」
山本が爆笑しながら言う。
「いらねーよ」
俺は心底嫌そうに言った。
「ん・・・ッ!?」
突然、山本が胸を押さえだした。
「おい、どうした?」
中村が山本を揺すりながら言った。
「クッキー・・・食べたら・・・いけ・・・な・・・・・・」
山本はそこまで言って倒れた。
「おい!しっかりしろよ!山本!」
俺は叫んだ。
けれど、中村は残酷な事態を告げた。
「脈・・・ない。死んでる・・・」
中村が泣きそうな声で言った。
「いやぁぁぁあああッ!!!」
真結が悲鳴をあげる。
俺はただ呆然と山本を見ることしかできなかった。
「アハハ・・・」
聞こえたのは微かな笑い声。
「フフ・・・アハハハハ・・・ッ!」
笑っているのはことりだった。
「ことり・・・?」
俺は震えた声で言った。
「残念だけど・・・私、ことりちゃんじゃないの!」
突如、ことりの姿がグニャリと歪んで、その場に未来が現れた。
「お、お前・・・!また俺の大切な人を・・・ッ!」
俺は未来の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「これでまた『私だけ』のものに一歩近づいた・・・アハハハハッ!」
未来はそれでも笑い続ける。
「お前だけは・・・お前だけは絶対に許さない!」
俺は未来を睨みつけた。
「ひっ・・・何言ってるの・・・?みんな居なくなったら、あなたは私のものだよ?私だけのものに・・・」
未来が怯んだように言った。
「なるわけないだろッ!お前みたいなやつのものに誰がなるって言うんだッ!だれがッ!!!」
「嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!!」
俺の罵声に、未来は壊れたかのようにその場に膝をついた。
「そんなの嘘だ・・・ッ!楓汰は私だけのものなんだ・・・私だけのッ!」
突如、未来の体にノイズのようなものが走る。
「アァ・・・ッ!」
真結が頭を押さえて倒れ込んだ。
「真結・・・ッ!?・・・ッ!!!」
俺にも凄まじい頭痛が襲いかかる。
「もう・・・終わりにしよ・・・楓汰・・・」
最後に聞いたのはやけに落ち着いた未来の声だった・・・
第12話です。
時々楓汰がキャラ崩壊してますね。
すいませんm(*_ _)m
次話も頑張るのでよろしくお願いします。




