初の声出しは陰キャムーブから
「まさか、NEOの方から機材の方を貰えるとは思いませんでした」
『と言ってもマイクとかだけですけどね。ママのパソコンは高性能でしたし、私としてはもっと贈りたかったんですが⋯』
「いや、勘弁してください⋯⋯」
今俺の目の前にあるマイクですら数万もするのに、もっと送られたら何を返したらいいのかもうわかんなくなる。
『さっきも言った通りママとの雑談配信ということなんですけど、大丈夫ですか?』
「はい、胃薬はもう飲みました」
『そこまで緊張してたんですね⋯!?』
そりゃあもちろん。
俺にとっては人生初の配信だし、今までろくにSNSで何も呟かなかった俺がついに声出しするわけだから気になっている人もいる⋯⋯はずだし?
「夜空さんって今までこんなプレッシャーに耐えてきてたんですね⋯⋯」
『多分、ママが緊張しすぎなだけかと思いますよ⋯⋯?』
軽く雑談を交わしていると、配信開始まで残り3分を切った。
『そういえばママはVTuberにはならないんですか?』
「遠回しに死ねって言ってますか⋯⋯?」
『言ってませんよ!?』
こんな緊張をほぼ毎日しろだなんて言われたら俺死んじゃう。
『こほん⋯⋯ではママ、私のタイミングに合わせて挨拶をお願いしますね?』
「が、がんばります」
全て夜空さんの話に適当に乗っかってたら平気なはず⋯!
そうして、配信が始まった。
『今日も綺麗な夜空ですね、こんばんは。夜空ノ永遠です』
《曇りだけどいい夜空!》
《とてもとても曇り⋯》
《いつでもどこでも永遠ちゃんが配信を始めたら夜空は雲を貫通して輝くもの》
『だって曇りの時だった用の挨拶なんてありませんし⋯それよりですね、今日はタイトルにも乗ってある通り特別大大ゲスト回です!』
《メタい》
《特別ゲスト、誰だろう?》
《コラボしたことない先輩とか?》
『ふふん、みなさんたくさん驚いてくださいね、今日のゲストは⋯⋯私の自慢のママ!冬先生です!』
《おぉ!?》
《冬先生ついに声出しするんや》
《どんな声か若干気になってたから嬉しい!》
まずい、まずすぎる。
なんて言いながら配信に入ればいいか全く考えてなかった、えっと⋯⋯
『⋯ママ?』
少し経っても出てこないからか、少し心配そうな声を俺にかけてくる。
普通に会話に乗っかってるだけだと思い込んでたけど、そっか最初は頑張らなきゃなんだよな。
「あ⋯⋯はい、ママです」
『大丈夫ですか?』
「大丈夫です、ちょっと緊張しちゃって⋯⋯」
夜空さんの声を聞くと知り合いだからか、心のざわつきが少し収まった気がする。
やはり持つべきものはリアルのお知り合いってことだな。
『そうですか?よかったです』
横目に見えるコメント欄がしばらく動きがなくなり気になり、チラりと見る。 もしかして、あまりの陰キャムーブにみんな言葉を無くしてたり⋯⋯?
《え、え!?》
《冬先生って女性⋯!?》
《こんな可愛い声が⋯冬先生?》
《声わっか!》
《ていうか、永遠ちゃんは知ってたの!?》
『ふふっ、はい。私はちゃんと通話もしましたし、なんと2回も二人でお出かけをしたのです』
「2回目は偶然では⋯?」
自慢げに言う夜空さんはどこか楽しそうに見えて、安堵の息を吐きながら訂正する。
『それはそうですけど⋯⋯一緒に遊びに行ったじゃないですか』
《やけに最近楽しそうだったのってそういう》
《いつの間にか冬先生のことママ呼びになってる!?》
《冬先生の話最近しなくなったのって⋯⋯》
『はい!本人と話せるようになって、今日まで秘密にしておこうかと、それにママはたまに私の配信もご覧になってるようですので⋯⋯』
「あ、はい。嬉しかったです」
『ママ?あんまり言われると恥ずかしいんですよ?変なこと言ってたりしませんよね私⋯!?』
そういえば夜空さんは恥ずかしがり屋だったな、いつもぐいぐいきてたから忘れてた。
『あ、そうです!マシュマロでも食べましょうよ、今日のためにリスナーさんたちにお願いしてたんです』
「えなにそれ聞いてないんですけど」
《前言ってたやつだ》
《送ったやつ焼かれるといいな〜》
《先生の声に動揺が混ざってるぞ》
だってほんとに聞いてなかったし。
『それでは1問目からいきますね?』
「え?あ、どうぞ」
『はい!えーと、ゲストさんの今の印象と昔の印象を知りたいです⋯だそうですよ、ママ!』
「なるほど」
夜空さんの今と昔の印象⋯⋯正直あんまり変わってないしていうかそもそも恥ずかしいんだけど、これ答えなきゃ行けないやつなのか⋯。
『私からいきますね、私は最初20代後半行くか行かないかぐらいの爽やかのお兄さんだと思ってたりしました。猫のイラスト見る度に猫愛が伝わってきて、きっと大好きなんだろうなぁ⋯と』
《俺も同じだわ》
《まじ?猫はともかくおじ様系ボイスかと》
《まさか真反対とは思わなんだったけど》
「なんか、すみません⋯⋯」
女の子になってしまったことを謝ってるのはここぐらいなのでは?
『謝ることないですよ?それで、今の印象のママはもう⋯⋯ひたすらに可愛いですよね。ママって実は結構人見知りさんで、、私と会った時も中々近づかせてくれなかったんですよね。
でも段々話すうちに慣れていってくれたのか触れれるぐらいの距離まで近くに来ても離れなくて⋯それがもうとても感動しましたし、可愛いかったです』
なが!?なにそれ恥ずいんですけど恥ずか死ぬんですけど。
ていうか俺そんなキモイ動きしてたんだ、ちょっとショック。
「よ、夜空さん?長いんですけど⋯!」
《冬先生オタク発揮してるな⋯》
《陰キャ冬先生概念、ありだな》
《そのまま冬先生を手懐けててぇてぇなのみせてくれ⋯⋯》
いや、俺は犬じゃねぇよ。
『少し熱が⋯ママはどうですか?私の印象』
「え?えっと、昔の印象は大人しめで私にも会話を途切らせず喋ってくれて、いい人なんだなって」
本心、本心をただ話しているはずなのに恥ずい⋯男の俺が女性の人を褒めろって、拷問?
『ママと話すのは楽しかったですし、当然です』
「あと、今は⋯1番仲の良い知り合い⋯?」
友人って言うのは失礼にあたるかもだし⋯とりあえずこれで勘弁してもらおう。
『えっ⋯⋯知り、合い!?わ、私達ってまだ知り合いの段階だったんですか!?』
《草》
《草》
《さっきまでドヤ顔だったのに未だ知り合い判定に絶望顔で死ぬほどおもろい》
『まぁ、いいです⋯続いての質問は──』
そっか、もう満足したつもりだったんだけどこれ1問目なんだった。
そうして、マシュマロもぐもぐタイムはまだまだ続く。




