第5話 リベンジ猫カフェに波乱はつきもの
夜空さんと会ってから、数日が経過した。
あの日から俺達はもっと長い時間メッセージを送り合うようになり、今も適当に雑談を交わしている。
夜空ノ永遠
【ママはどんな本読むんですか?】
冬
【あんまり読まないんですけど、恋愛系とかたまに読む時ありますね】
夜空ノ永遠
【いいですね、私もたまに読んでます】
【最近のだとこれとかオススメです、ぜひ1度読んでみてください】
URLと共に送られてきた漫画をぼーっと眺めながら、俺は猫カフェにリベンジするために一旦チャットアプリを閉じた。
「ん〜!近くの猫カフェは確か3駅先だったよな」
前回は事故ってしまったから猫カフェを前にして辿り着けなかったけど、今回こそ⋯!
椅子から立ち上がり、猫カフェが予約不要なのを確認してから家を出る準備を始める。
カーディガンを羽織り、猫カフェ課金アイテムのチュールを取ってから俺は外へるんるんしながら飛び出た。
「なんか今日は無敵みたいな気分だし、カフェに挑戦してみたり?」
3駅先、不思議と気分を高揚させてくれるような電車の中から見える家々と緑色の木々の景色を夢中で見ていると、あっという間に目的駅に辿り着き、俺は伸びをしながら改札を下った。
「今の時間はお昼過ぎ⋯よし、カフェに挑戦できるな⋯!」
オシャレなカフェを検索してみたりして、近場のカフェを探すが⋯⋯
「うげ、雰囲気良すぎ⋯俺には無理無理⋯⋯」
カフェチャレンジは失敗!いつかまた機会があれば行こう、そうしよう⋯⋯。
「あれ!?マ⋯⋯雪さん?」
「!?」
急に名前を呼ばれて驚いて跳ねながら、その名前を呼ばれた方向をみる。
「ふっ⋯ふふっ、そんな驚きます?」
見てみると、ツボに入ったかのように体を震わしながら口元を手で抑えてる野生の桜さんが立っていた。
「あ、あぁ⋯驚いちゃって」
「ふふっ⋯ふぅ、こんにちは、雪さん」
「こんにちは⋯桜さん、その⋯どうして、ここに?」
「そろそろ冬ですし、服でも見に行こうかなと思いまして⋯雪さんは?」
「猫カフェに⋯」
頑張って話してはいるが裏では汗だらだらだ。
まさか桜さんに会うとは思わなかったから服装めちゃくちゃ適当だし、なによりこんな不意打ちで人と話すとか俺にはハードルが東京タワーぐらい高くて⋯。
「なるほど、雪さん猫好きですもんね⋯⋯よし、私もご一緒してよろしいですか?」
「えっ」
「私、ママと仲良くしたいんです⋯!!」
「うぐっ⋯⋯!」
ズイっと顔を近づけてオネダリして来る桜さんの可愛さに負けて結局OKしたのは言うまでもない、男とは可愛いに弱い生き物なのだから⋯。
その勢いに乗ってか「あ、そうだ!」と言いながら俺にとんでもない提案を言い出す。
「今度コラボ配信なんてどうですか?こうしてリアルでお会いする仲にもなりましたし、私のママはこんな人って皆さんに自慢したいです」
「え、会うのこれで2度目ですけど⋯」
「でも、私達はもう結構仲良しだと思うのですが⋯⋯そう思ってるのは私だけ、でしょうか」
「あ、いえ、めちゃくちゃ仲良しです」
そのしゅんとした顔をするのは反則だと思います、先生。
それにさっきから時々ママ呼びに戻ってるし⋯もしかして少しテンションが上がったらママ呼びに戻ってたりして⋯⋯?
「コラボ配信、ですか⋯⋯?」
「実は雪さんがまたイラストを投稿してくれるようになってからリスナーさんが【コラボとかしないの?】とか【冬先生と永遠ちゃんの掛け合い聞いてみたい!】なと言ってまして⋯」
「なるほど⋯⋯」
たしかにチャット欄で言われた以外にも前夜空さんの雑談配信を見ている時にそのコメントも見たし、夜空さんが『してみたいですね』と言っていたのも聞いた事あるけど、いざ目の前で言われると戸惑ってしまう。
「いやでも私、人見知りなので⋯⋯」
「そこがママのいいところですので、大丈夫ですよ?」
「そんな自信満々に言われても⋯猫カフェ、着きましたよ」
どこかむふー顔の桜さんを見ながら、俺達は猫カフェに入りスリッパに着替え、手洗いを終えた後に猫を堪能する。
「みんな可愛いですね⋯⋯ってどうしたんですか雪さん!?」
「はぃ⋯?」
体に違和感がない⋯⋯!
目も痒くならないし、痒くもならない。
実は前世の俺は軽度の猫アレルギーで、無理矢理体を動かしてほんの少しだけ猫カフェに行く生活を送っていた。
正直猫には触れれないし地獄みたいだったが、でもこの体は猫アレルギーではなく、俺はあまりの感動で泣きながら懐いてくれた黒猫を撫で回していると、桜さんに声をかけられる。
「マ、ママ⋯?」
「猫って、やっぱり最高ですね⋯⋯ずびっ」
「おおお、落ち着いてくださいママ!!??」
俺より慌ててる桜さんにしばらく落ち着くまでの間背中をさすられた。
「落ち着きました⋯?」
「はい、ありがとうございます⋯⋯」
めちゃくちゃ恥ずかしいところを見られてしまった。
今から何とかして桜さんの記憶を消せないものだろうか、あんなところ見られちゃったら恥ずかしくて顔向けれないんだが!?
「その、忘れてくれると⋯⋯」
「それはちょっと雪さんの頼みでもいやですけど、可愛かったですよ?」
「可愛くないです⋯!」
猫で桜さんから顔を隠しながら言うが、何故か「はわ⋯⋯」とか言いながら顔を赤くする桜さんに困惑しながらひとまずこれ以上追求されないのを心の底から嬉しく思いながら、猫達と存分に遊び尽くした。
ちなみに、帰り道に⋯⋯
「あ、コラボ配信はしてくれるんですか?」
「え⋯」
せっかく紛らわせたと思ってたのに、猫カフェを出たあとOKを出すまで粘られた。




