通話は会話デッキとともに?
会話デッキなんてありません。
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『──ってことがあって、こうして私は冬さんと連絡を取り合う仲になったんです』
《へええ⋯》
《永遠ちゃんって冬先生の大ファンだもんね》
《けっこうぐいぐいいったね》
『そ、そうですか?私にしては抑えたんですよ?本当は、通話に誘おうと思ってましたし⋯』
「夜空さんと通話なんてしたらお腹が痛くなっちゃいそう⋯」
夜空さんと連絡を取り合うようになってから、数日が経過した。
好きな食べ物や好きな物、好きな猫について話したり、配信についての話をしたり、文字上ですら伝わるぐらい夜空さんは楽しそうに話をしてくれて、特に配信の話になるとビックリマークが増えたりしてとても可愛らしかった。
『でも、そろそろいいかもしれませんね⋯えいっ!』
《なにが??》
《えいっ、可愛い》
《何かよく分からないけどいいと思う!》
夜空さんが独り言で何かをつぶやくと同時に、ピコンと通知音が鳴った。
「ん⋯⋯ん!?」
その中身を見てみると、足がガタンと動き机に膝をぶつけた。
痛い⋯。
【あの⋯通話、しませんか?もちろん、配信外でも構いませんので!】
「なんてタイミングのいいチャット、俺でなきゃ見逃⋯⋯とかはどうでもよくて、通話⋯通話!?」
正直、通話に対しての抵抗感はこの数日の間に消え去っている⋯いや、少しはあるけど。
だって夜空さん可愛いし、なんかほんと娘がいたらこんな子なんだろうなみたいな感じするし、たしかに文字越しだけじゃなくて通話で話してみても⋯みたいなのは思ってたり思ってなかったり。
【配信外でなら】
『──ガタンッ!』
夜空さんの配信で急に何かにぶつけたような音が響く。
《びっくりした、何事!?》
《なになになに!?》
《えどうしたの永遠ちゃん》
《大丈夫?》
『あ、あぁ⋯いえ、大丈夫です、すみません⋯』
【ありがとうございます!】
【この後とか、どうですか?今雑談配信してて、それが終わった時とか】
【はい、それで大丈夫です】
『⋯ふふっ』
《???》
《ぶつけて笑ってる⋯?》
《一体何が起こっているというのだ》
『内緒です、それでですね──』
何事も無かったように話を進める夜空さんにプロだ⋯とか思いながら今後もしものためを思って胃薬を調べ、購入ボタンをそっと押した。
【配信終わりました、今からおかけしても大丈夫ですか?】
【どうぞ】
返事を返すと夜空ノ永遠さんからの着信がかかってきて、俺の緊張が跳ね上がる。
なんてったって女性と話す機会なんて前も言ったがそうなかったし⋯⋯まぁ、その話したことがまるでなかった俺自身が今女性になってるんだけど⋯⋯。
「ちゃんと私って言うんだぞ私、俺とか言ったら変な人って思われるからな⋯⋯よし!」
気合を入れ、通話ボタンを押した。
『あ!こんばんは、冬さん』
「っ⋯⋯」
どうしよう、気合い入れて通話出たのに夜空さんの声が聞こえたとたんに急に全部なくなってしまった。
だって、異性⋯の人で、娘で、有名人で、こんなの緊張しないはずがないでしょ⋯!?
『あの、冬さん?聞こえてますか?』
何か、喋らないと⋯⋯
胸からドクドクと鳴るそれを必死に何とかしようとするが、そんなの無理な話で──。
「こ、こんば⋯んは」
緊張を無視して無理矢理声を出すが、そんなバカみたいなことをしたせいで声が裏返ってしまった⋯バレてませんように。
『⋯⋯へっ?』
「ど、どうかしました?」
『あ、その⋯冬さんって、女性の方だったんですか⋯⋯!?』
「はい⋯一応女性です」
『ずっと男性の方なのかと思ってました、まさか私のママは女性だったなんて⋯⋯思いもしなかったです』
間違ってはいないんだけどね。
引かれては⋯ないだろう、俺の声は普通に可愛いと自画自賛できるぐらいにはいい声だと思ってるし。
『ふぅ⋯⋯落ち着きました、すみません』
「いえいえ」
『そういうわけで⋯今度、お会いしませんか?』
「⋯???」
なんでそうなった?
『冬さん⋯いや、ママとコラボ配信してみたいんです、私』
「ま、ママ?」
『はい、冬さんは私に命を宿してくれたママですので!』
配信、配信か⋯⋯1人と話すことですら緊張している俺に、配信はちょっと難易度が高く⋯。
『まずは会って、もう少し仲を深めたら一緒に配信を、というのが理想なのですが⋯ママ、ダメですか?』
「うっ⋯⋯わかりました、会いますから」
だから、その甘えるような声はやめて欲しい。
夜空さんには仕方が無いとはいえ連絡を無視してしまっていたし、これも断ると俺の中にある善意が泣き喚いてしまうから、引き受けるしかなく⋯。
『ほんとですか!?じゃあこの日とかどうですか?』
「はい、問題ないです」
これから会うってなると、まだ数日先なのに胃がムカムカしてきた⋯。
ていうか、VTuberがこんな易々とただの一般人と会って大丈夫なものなのか??
『ママってどんなものが好きなんですか?』
「えっと、アイスとか?」
『へぇ〜どんなアイスですか?』
「ちょっと高いパフェ系のアイスとか好きです」
『私はチョコアイスとか好きなんです、あ!そういえば──』
その後も色んな話をして、もう体力的に限界だった俺はお風呂に入るからといい、通話を切った。
「も、もう無理⋯動けない」
あれが陽キャか⋯好きな食べ物とか好きな物、趣味や普段していることなど率先して話をしてくれて、格の違いを思い知らされた。
「てか、服どうしよう⋯パーカーで行くのはさすがにやばいよねぇ⋯⋯」
スカートは最悪いいとしても、上の服なんてどうしよう⋯自分のセンスなんて信じてないし、もし間違えて変な服でいったら⋯⋯
「夜空さんとの約束の日が来るまでに女性の服を勉強しないと⋯!」
そんなことを考えながら俺はベットへ行き、目を閉じた。




