偉そうな6日 ≪極秘計画≫
彼女たちは知らない。秘密裏に進められていた、その計画のことを。
偉そうな6日 ≪極秘計画≫
(おかしい)
高く舞い上がったそらは、くるりと一回転して着地した。上空から見下ろしたロボットは、いつもより攻撃的だった。
(最近、『苦しみ』との戦いより、ロボット相手の訓練のほうが多い気がする)
そらは真剣な表情で唇を噛んだ。
(みんなはどう思ってるんだろう?)
そらはちらりと魔法少女たちを振り返った。
(やっぱり、私から聞いてみたほうがいいのかな?)
どう考えても、それが正解だった。そらが間に入らなければ、あの子たちは口を開くたびに喧嘩ばかりする。事実上リーダーのような立場で、本人もそう信じているそらだからこそ、なおさら責任を感じていた。
「あーもう、ちょっと!」
案の定、怒鳴り声が聞こえてきて、そらは深くため息をついた。今日もサンは、みずえに不満をぶつけている。
「あんた、また一人で目立とうとしてるでしょ!」
「私の勝手でしょ。私が何をしようと、あなたに関係あるの?」
「いつも一人で目立とうとして、こっちの攻撃を全部邪魔してるじゃん!」
「あらあら? あなたの攻撃が弱かっただけじゃない? 私がいつ、あなたの前に立ちはだかったっていうの?」
歯を食いしばって睨み合う二人をじっと見ていたしおりは、深くため息をついた。
(うるさい……)
攻撃の準備をしながら、しおりは木々で防音壁を作った。顔を合わせればすぐにいがみ合うサンとみずえ。この子たちを連れて何をすればいいのか、そらにはまだよくわからなかった。
(はあ……仕方ない。まずは一人で考えてみよう)
胸に引っかかるものはあったが、考え込んでいる余裕はなかった。日増しに強くなっていくロボットは、今では魔法少女全員が同時に攻撃して、ようやく倒せるほどになっていたからだ。
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「もう、いい加減にしてってば!」
これで三度目だった。みずえはわざと、サンが攻撃するたびに派手な魔法を使った。揺らめく波動は、周囲にいた魔法少女たちを寄せつけなかった。
「ねえ、みずえ! あんた、本当にそういうつもりでやってるの?」
「何が?」
「普通、力を合わせなきゃ勝てない相手なら、あんたも少しは協力しようと思わないわけ?」
「私の勝手でしょ」
「どいてよ!」
肩をすくめたみずえは、返事もせずにサンの背後へ飛んでいった。通りざまに、さりげなくサンの肩を押すことも忘れなかった。
「あっ!」
「私が押さえておくから、さっさと終わらせて帰ろうよ」
サンの声を無視したみずえは、太陽を見上げながら、露骨に嫌味を言った。
「この日差し、顔が焼けちゃうじゃない。ほんと、光なんて何の役にも立たないんだから」
みずえはサンを無視して、広範囲の魔法を展開した。水しぶきでロボットの視界を遮るつもりだった。しかし、みずえが魔法を放つより先に、サンの怒りが爆発した。
「なによ、あれ……」
空が裂け、
「偉そうに……!」
雲が閃き、
「いい加減にして!」
膨大な量の雷が、ロボットめがけて叩きつけられた。
「うそ……」
力なく倒れるロボットを見て、みずえはそれだけを漏らした。他の言葉など出てこないほどの威力だった。
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「思ったより早く終わらせたな」
「『よくやった』くらい言ってくれないんですか?」
「これは君たちの仕事だ。当然、君たちがやるべきことだ。忘れるな」
国家公務員は無表情のまま契約書の話を持ち出し、そらの不満を封じた。言葉を失ったそらは、悔しそうに顔を背ける。
――今度こそ、完成したと思ったのだが。
そらの反応を見つめる国家公務員の眉間に、深いしわが刻まれた。
「……ロボットと戦うなんて、契約にはありませんでした」
ようやく反論の言葉を見つけたそらが言い返した。けれど、所詮は小学生であるそらが、大人の理屈に太刀打ちするには力不足だった。
「これも政府予算で行われている。協力して当然だ」
「でも……」
「車は用意してある。戻るように」
そらの話を無視して淡々と背を向ける国家公務員を見て、そらの胸の奥に妙な不安が湧き上がった。
「何してるの? 早く行くよ!」
雷が落ちた場所と太陽を交互に見ながら、みずえは苛立たしげに顔をしかめた。
「もう、光なんてうんざり」
「光」という言葉に、光の子であるサンが振り向き、みずえを睨んだ。だが、みずえは気にも留めず、車へ向かって飛んでいった。
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「はい。その通りです」
魔法少女たちが全員帰ったあと。薄暗い路地で、国家公務員は電話をしていた。
「今日の確認で、魔法少女の力は感情の最大値を超えられないことがわかりました」
国家公務員の落ち着いた声に、相手は次々と質問を浴びせた。
「ええ、まあ。運がよかったのでしょう」
スマートフォンを耳に当てて状況を報告しながら、国家公務員は何がそんなに愉快なのか、口角をつり上げて笑った。
「ちょうど光の子が感情を露わにしてくれましたから」
事務所に戻ると、国家公務員はパソコンに向かい、キーボードを叩いた。
「魔法少女の力。その最大値をたった一つ上回るだけでも、生意気な魔法少女たちはロボットに指一本触れられないでしょう」
画面には、魔法少女たちがロボットと戦う映像が繰り返し再生されていた。
「蓄積されたデータをもとにロボットを強化すれば――」
実験室の中で霧が晴れ、新たに強化されたロボットが姿を現した。
「ついに完成だ」
普段は感情を表に出さない彼も、生涯をかけた自信作を前にしては、笑みを隠せなかった。




