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最初の『猫』  作者: 炎華
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6.兄姉弟妹の原理2 ご主人様の場合 その2


「こんな風にいいように利用されるなら、家族を捨てたい!

 俺は、自由になりたい!」


 お義父さんが、再びサラ金に手を出したことがわかったとき、

 絞り出すように言ったご主人様の言葉だった。

 本気でそう思うなら、猫がご主人様を守ろう。

 悪者になっても、憎まれても、嫌われても、ご主人様の盾になろうと決めた。

 ご主人様が猫を愛してくれているなら、それでいいと思った。

 ご主人様以外の人間に嫌われようが、憎まれようが平気だった。

 家族に利用されないよう、少しずつでも遠くへ。

 手の届かない所へ。

 それが猫の使命だ。


 あの言葉は、嘘だったのか・・・


 いや・・・

 あのときはそう思っても、また、

 「頼りになるわね。さすがお兄ちゃん。」

 などと言われ、忘れてしまったのだろう。


 「お前と別れても家族をとる!」


 猫の中で、何かが折れた音がした。

 急速に心が冷えていく。


 冷えていく心の中で、一つ理解したことがあった。

 そうか、『家族』って・・

 『家族』って、ご主人様にとって、お義母さんと義弟のことだったんだ。

 猫は、ご主人様にとって、家族でさえなかったんだ・・

 なのに、何を頑張ろうとしていたんだろう。


 暗い部屋の窓際で、長い間ぼんやりしていた。

 窓を開けると、いつの間にか雪が降っていた。


 寒い・・・


 愛されたいから、望まれたことは何でもする。

 否と言ったら、嫌われるから、口が裂けても言えない。

 無理をしてでも、希望を叶えようとする。

 「頼りになるわね。」

 と、笑ってくれると、愛された気になる。

 頼りにされているんだと、安心する。

 俺がいないとだめなんだと、思い込む。


 それを妨げようとする猫は、ご主人様にとって余分なもの、だった。

 不安を煽る存在でしかなかった。

 それに、何故気がつかなかったのか。


 頼りにされる=愛される

 では、決してない。

 ご主人様も心の中ではわかっているはず。

 利用されていると、言っていたのだから。

 それでも、それだけでもないと不安だということだろう。

 いつかは、自分も愛される。

 そんな希望を捨てられない。


 そんな日は、こないよ・・・

 義弟がいなくなれば、あるいは・・

 でも、いなくなったとしても、そんな日はこないだろう。



 ご主人様にとって、『猫が絶対必要』ではなかった。

 お義母さんの代わりでしかなかった。

 愛されない心の穴を、猫に愛されることで埋めていただけ。


 それに気がついたときが、

 猫が『ご主人様』という唯一の心の拠り所を失った瞬間だった。





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