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最初の『猫』  作者: 炎華
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アダルトチルドレン その2


 『アダルトチルドレン』という言葉を聞いたことがおありだろうか。


 直訳すると、大人子供。

 体ばかり大人になって、中身は子供のまま大人になりきれない大人。

 と、猫は認識していた。


 それは間違った認識らしい。


 本当はどんな人のことを言うかというと、

 『家庭としての正常な機能を果たしていない機能不全家庭で成長したために、

 大人になってからも心に傷を持っている人』

 だそうだ。



 猫は思う。

 『正常な機能を果たしている家庭』って、なんだ?


 親が、しっかり親としての責務を果たし、

 付帯義務を負わせる条件付きの愛情をなくして、子供に無条件に愛情を注ぎ、

 家庭内でコミュニケーションがしっかりとれているため、

 親子間の相互理解が進んでおり、

 子供は例え叱られても、命令されても、親にそうされる理由をちゃんと納得しており、

 もちろん、精神的、肉体的な虐待はなく・・


 ・・・そんな家庭なんて、この世にあるのか?


 親は、食べるために働く。

 猫の両親のように、お父さんの稼ぎが少なければ、お母さんも働く。

 それでも、ぎりぎりの生活。

 外に出れば、嫌なことも沢山ある。

 子供になんて、かまっていられない。

 一人で何でもできて、手のかからないいい子ならば大助かり。

 心にも時間にも余裕がないから、面倒を起こして欲しくない。

 だから、意に沿わないと、怒って従わせようとする。


 そもそも『あなた』という子供を育てるために働いているのよ。

 『あなた』を食べさせて、教育を受けさせて、

 立派な大人にするために働いているのだから、

 私達に従うのが当たり前。

 そして、今、あなたが大人になっても困らないように怒ってるの!

 わかってるの?

 あなたのためなのよ?

 なぜ、言うことをきかないの?

 そうじゃないと言ったでしょう!

 どうして、いつもいい子でいてくれないのよ!

 どうして、私達に恥をかかせるの?

 そんなんじゃ、立派な大人になれないんだからね。

 あなたのために言ってるの!

 あなたのためなのよ!


 ・・・なにが「あなたのために」だ!

 『自分達のために』だろうっっ!



 猫の中には、傷ついたままの子供の猫がいる。

 つらいこと、悲しいこと、嫌だったこと、苦しかったこと

 負の想いばかりが心の引き出しにしまわれ、

 楽しかった想い、嬉しかった想いはゴミ箱にどんどん捨てられてしまうため、

 益々、傷は深く、多くなっていく。



 その存在は、ずいぶん前から知っていた。

 でも・・

 いつまでも、いつまでも、子供の猫の傷を癒やせないでいる。



 子供の猫は叫ぶ。


   「消して!子猫を傷つけた全てのモノを消して!」



 それは。

 それは、子猫を傷つけた全ての人間を殺せ、と?



   「そうだよ!できるでしょう?

    大きくなって、自由になったんだから!」



 そんなことできないよ。

 そんなことしたら、余計子猫が傷つくよ。

 猫だって、ただじゃ済まないんだよ。



   「そんな事言って。

    できないくせに。

    子猫を癒やしてくれるなんて言って。

    何もできないくせに!

    嘘つき!

    なんで子猫がこんな傷だらけで、

    ずっとずっと痛い思いしてなくちゃいけないと思うの?

    あいつらが!

    あいつらがやったんだよ!

    あいつらのせいなんだよ!

    なんで、目をそむけてるの!

    猫だって、ほんの少しだって許してないくせに!!」



 それは・・



   「許してないのに、みんな許したような顔をして。

    それで自分を誤魔化しているだけなんだ。

    本当は消してしまいたいくせに。

    みんな死ねばいいと思ってるくせに。

    みんな殺してしまいたいと思ってるくせに!」



 違う!

 確かに、許してはいない。

 みんな死ねばいいと思ってる。

 いや、もっとひどいことを思ってる。

 死ぬほど苦しめばいいと思ってる。

 死んで楽になるなんて許さない。

 苦しんでいるところを見て笑ってやりたいと思ってる。

 そうじゃないと気が済まない。

 そう、できさえすれば・・



   「そうだよ。

    その通りだよ。」



 でも、そうしたら、その人を頼りにしてる人達も苦しむよ。



   「そんなの!

    同罪だよ!」



 違うよ。

 周りの人に、恨みはない。



   「何言ってんの?

    じゃあ、なんで子猫が傷つけられているとき、その人達は止めてくれなかったの?

    子猫を傷つけるような性格に育てた人達だよ?

    子猫を傷つけるような性格の人に育てられた人達だよ?

    そんな人を好きだって言える人達だよ?

    みんな、みんな同罪じゃないか!」



   「なんで黙ってるの?

    猫だって、わかってるんでしょう?

    そう思ってるんだ。」



 ごめん・・



   「謝ったって、猫が謝ったって、傷が癒えるわけじゃない!

    あいつらを消してよ!

    それができないんだったら、子猫を消してよ!

    痛い!痛いよぉ!助けて!助けてよ!」



 ごめん・・



   「痛いよ・・苦しいよ・・・」



 ごめん・・・



 子供の猫は、今も傷ついたまま鳴いている。


 猫が、せめて、大きな声で、嫌だと、やめてと、言えたら・・      






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