↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/8

8。エピローグ キミに贈る花言葉



「はいこれ。ようやく手に入ったんだ」


 渡されたのは、まだ硬い蕾しか付いていない、ちいさな鉢植え。


「ありがとうございます」


 もちろん愛しい人から貰うプレゼントはどんなものでも嬉しいものだ。

 けれど、そこに植えられているのはどう見てもこれまで何度もちいさな花束として受け取ってきた見慣れたものの筈だ。


「僕、よく調べたんだけどさ。あの、青花のルリジサってさ、花言葉のひとつに『不幸な愛情』ってあるんだよ。ほら、ワインに入れたり土壌の質が変わると色がピンクになったりするじゃないか。だから心変わりの象徴になってるって。その…全然知らなくて。ごめん」

 がばりと頭を下げられた。

「それでは、この花は?」

 ルリジサではないのだろうか? 確かに葉や茎につく綿の様な毛が少ないように見える。

 まじまじと見つめていると、晴れやかな顔をした殿下が自慢げに説明してくれた。

「白花のルリジサなんだって。遠い国にあるって本で知ったんだ。なんとか伝手を辿って取り寄せて貰ったんだよ」

 この白花の色は変わらないらしいよ! と、嬉しそうにいうゼフィール殿下の笑顔が眩しくて、まっすぐに視線をむけていられない。


 あの婚約破棄騒動の日の夜、兄から教えて貰った騒動の裏側、殿下の尽力についての諸々については驚きしかなかった。

 正直な所、言葉で説明されても納得できることは少なかった。

 殿下の事は、何を考えているのかまったく判らない頭が良すぎる方というイメージしか持っていなかったからだ。

 でも。王宮での話し合いの場での飄々とした態度と、その後のハーブ園での告白。そのどちらの殿下の言葉も、すべてが私の為にとしか聞こえなくて。

 兄の言葉が嘘でも大袈裟な訳でもなかったのだと心が理解した。

 お陰で私はそちらについてばかり頭にあって、元婚約者たちに対して何も言ってやれなかった。

 でも、まぁいい。言いたい事のほとんどはあの場ですでに言い放っていたと思うし、あの時の私には殿下の考えを理解する方がずっと重要だったのだから。


 その時の事を思い出して思わず顔をそむけてしまった私に、不安になった様子の殿下が「嬉しくなかった?」と寂しそうに訊いてきた。


「う、うれしすぎて。あの、その…ありがとう、ございます、フィー」

 最近、殿下に押し切られて愛称呼びをするようになった。偶に殿下と呼んでしまってはぷぅっと唇を尖らせて不満そうな顔をされるので、頑張っている最中だ。


 それにしても。前の婚約者からは、こんな風に心を寄せるプレゼントを贈られたことなどなかったので、どんな顔をして受け取ればいいのか判らない。

 きっと自分はいま真っ赤だろう。令嬢として常に冷静で静かな微笑みを湛えなければという教えは、ゼフィール殿下の傍にいるようになってからまったくできなくなってしまった。


「イリス、可愛い」

 そんな風に言われることも全くなかったし、本当のところ私などを可愛いなどというのは殿下くらいだ。

 そうして、「かわいい可愛い」と連呼してくる殿下の方がずっとその言葉が似あう。

 そう言うとまた唇を尖らせながら膨れるので口に出したりしないけれど。


 今の私は、でも令嬢らしい振りをすることを完全に辞めてしまった。


 殿下から、「令嬢としてのイリス・エリントン嬢でも、騎士になりたかったイリス・エリントンでもどっちでもいいよ。僕にはどちらのイリスも可愛いから。だいすきだよ」と言われて、騎士になることを諦めなくて良くなったからだ。


 最初は、兄の代わりにと口に出した「騎士になる」という言葉は、いつの日か自分の夢になっていた。

 しかし、それを取り上げられた時、みんなから「ごめんね。もう女でいることを諦めなくていいんだよ」と言われて、逆に言い出せなくなってしまった。


 なのに。殿下だけが、私の思いに気が付いてくれた。

 今の私は、王都に新設された女性騎士養成所の一員だ。

 ここで殿下の卒業までの三年間を修業に当てて過ごす。

 そうして、殿下の卒業を待って婚姻。エリントン辺境伯家を継ぐ準備に夫婦で入ることになっている。


 髪も、後ろでひとつに結わえるだけにするようになった。

 陽射しを浴びるようになったので、髪の色も少しまた抜けてきて「あの頃のイリスっぽくなってきたね」と嬉しそうに髪をひっぱる殿下にももう慣れた。

 まぁ、懸命に手入れをしてくれていた侍女たちには申し訳なかったが。

 それでも、あの頃と全く同じかといえば、そうでもない。

 令嬢としてのわたしも、ちゃんと大事にしたいと思う。

 だから毎日の手入れもしている。

 流行物ではなく、今の私に似合うドレスを殿下が贈ってくれるからだ。

 

「ねえ、イリス。今度は何を贈ろうか。剣かな、それともその肌を守ってくれる防具一式にするべき?」


 嬉しそうに横で笑ってくれるから、「フィーが贈って下さるならなんでも」そう笑って言えた。







私の最萌・不憫ポンコツ王子の恋が成就できる話を書きたかったんですが

私好みのポンコツではまったく成就できそうになくてですねw

へたれ王子として生まれ変わりました! わはははは


皆様の想像した王子サイドより

楽しかったと思って頂けるといいのですが(汗


お付き合いありがとうございましたv


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 殿下の突き抜けたポンコツ具合というかヘタレッぷりに、気持ちは殿下の母というか、乳母の様な気持ちでハラハラしながら見守ってしまいました。 とんでもなくヘタレですが、でもそこが良いっ! ハッピー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。