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#13 便利屋メイド

 十四話になります。

 ゆっくりしていってくださいね!



「ねぇ、テフィ。その本って何が書いてあるの?」


 そうニナが背表紙に数字の書いてある本を指さして聞いた。


「それは地形とかその地域の特徴などが書かれてありました。テフィには難しくてよく分かりませんでしたが、なんだかその土地の“説明書“のような感じでした。」


 ニナはその本を手に取ってパラパラとめくってみる。

 思っていた以上に古い本のようだ。めくるたびに風と一緒に昔の紙の強い匂いが鼻に直撃する。

 

「これって、隣の国のルートン王国の地図じゃない?」


 大きな地図が書かれたページを開いて、ニナがそう聞いた。

 昔の地図にしてはよく出来たものだなとニナは思った。

 地図産業はこの頃やっと栄えて来たもので、自力でこれを測って書いたとなると相当な努力があったはずだ。


「はい。その他にもシュル王国のものもありました。どれも同じような説明です。この国の土地の本もありましたよ。丁度、この伯爵領あたりのものです」


 よく読んでいるのだなぁ、この一言に尽きる。読むだけならまだしも、その内容を暗記しながらとなると本当に凄いとしか言いようが無かった。


「ちょっと、外に出てきます。」


 外の空気でも吸いたくなったのだろうか。テフィはそう言って外に出ていった。


 話し相手がいなくなったニナは先ほどテフィに紹介された本を椅子に座って読んでいた。なるほど。“説明書”とは言い得て妙だなと思った。

 その本には、その土地の植生などを含めた特徴、どのような開拓の仕方が良いか、そして、その土地で育ちやすい植物の種類の記載があった。


(……これって、すごく貴重な本ではないの?すごく、詳しく書いてあるし……。)


 そんなことを思うニナであった。



※ ※ ※



 黒い小さな外套がその持ち主の絹のように輝く金髪と共に夜風に靡いていた。

 不意に彼女は懐から笛を出した。その笛は彼女の姉、テアミナのメイド、マリーからもらったものである。金属製のもので、月光を反射して輝いていた。

 それを手に持ち、口に咥えて、勢いよく拭いた。ピーっと笛特有の音は鳴らなかった。

 しかし、その笛で呼び寄せたものは来た。


 何かがかけてくる音。そして、バウバウと吠える音が聞こえる。そう、犬である。黒く、ガタイの良い犬だ。はぁはぁと尻尾を振って、テフィの前でお座りをした。

 この犬も笛共々、マリーから授かったもので、ある言葉と共に貰った。


『これは()()()()に何かあった時のために渡しておきます。この笛を鳴らせば、犬が駆けつけてくれるでしょう。連絡事項があるならば紙に書いてその犬に持たせれば、私に届きます。』


 「妹を何があっても最優先で守れ」そう言った主人の命令に対する一つの行動である。ちゃっかり、名前でテフィを呼んでいるあたり、下心が透けて見えることもないが……。

 こういった時に役立つのである。

 テフィは伯爵領の現状報告、そして教会の子どもたちの居場所を、これもまた懐から出したペンと紙で書き、それを犬が背にからっている筒のようなものの中に入れた。


「よろしくお願いします。」


 テフィはそう言って、犬を見送った。犬はテフィの言葉を受け取ってきっと、舞踏会場があるであろう方角へ向かって行った。


(神父様方。どうか無事でいてください。)


 そう、月を見つめながら祈った。



※ ※ ※

 


舞踏会場にて─



「テアミナ様!今日もとてもお美しいです!このドレス、どこのものですか?」


 そう興味深々で聞いてくるのはある令嬢である。テアミナが舞踏会に顔を出す度にこうして声をかけているのである。

 他にもこうした令嬢で列ができていた。


「それは、内緒よ」


 そうウインクと共に返すと令嬢はうっとりとした表情でカーテシーをして帰って行った。

 内緒と答えたが、内緒にしなければ自身の名に傷がつくからである。


(流石に、邸にあったその辺の布を切って取り付けたとは……口が裂けても言えないわね)


 彼女のメイド、マリーと共に邸中の上質そうな布をかき集めて、前回の舞踏会で着たドレスに縫い付けていったのはいい思い出である。

 父のラミドール伯爵から受け取るお金の半分は教会に寄付。そして、残りの半分は自分の()()のために使っていた。

 そういうわけで、ドレスに使うお金など残っていなかったのである。

 そもそも、そういったことにお金を使うのを嫌っているため、残さなかった、という方が正しいかもしれない。


 しばらく、そうやって話に来た令息、令嬢を華麗に捌いていたところ、マリーが声をかけた。


「お話中、失礼します。お嬢様、少しよろしいですか?」


 テアミナは「えぇ。」とだけ返し、話していた令嬢に「申し訳ありません。また、お話しいたしましょう。」と話を中断した。とりあえず、会場の端の方によってマリーに要件を聞くとした。


「どうしたのかしら?」

「先ほど伯爵殿と執事の会話を読唇術で見ていたのですが……」


 マリーは読唇術を習得している。それは何かと便利である。今回のように─


「伯爵領の教会付近で複数の傭兵が襲撃を起こした、と。」


─何か、面倒ごとを見つけてくる時に打ってつけである。


 最後まで読んで頂きありがとうございます!

 便利なメイドさんですね。うちにも欲しいぐらいです。…主に、片付け係として…。

 さて、次の投稿は7/27(火)になります。最近、世の夏休みムードにのまれてか、曜日感覚が曖昧なので、曜日を載せてます。是非、見てくださいね!


追記:合計200PVいきましたので、SSをあげています。是非見てください!

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