#09 新しい扉の開く音 ※下級貴族令息side
十話目です!
よろしくお願いします!
如何して自分はこの豪奢な舞踏会にいるのだろう、ふととある男はそう思った。
─自分は下級貴族令息であるのにも関わらず、見栄張りな父に無理矢理連れてこられた。どうも、婚約相手でも探して来いとのことであった。確かに、自分は結婚していてもおかしくはない年齢である。しかし、この弱小下級貴族の自分に寄ってくるようないかれた令嬢はいるのだろうか─と思う。
別にいてもいなくても変わらなくはないか、そう思いつつも、ただぼーっと会場を眺めていただけであった。
すると、不意に会場がざわめいた。
隣にいた、同じく下級貴族であろう令嬢が「テアミナ様とジョア様よ」と言っていたので、あの噂の方々が来たのだろう、彼はそう予測した。
彼は彼らとは一度たりとも会ったことはないが、噂は聞いたことがあった。
『テアミナ様はとても美しく、睡蓮の花のように若葉が似合う女性であるよ』
『ジョア様はとてもお綺麗で、水晶のように透き通ったお方だ』
何とも貴族らしい意味の分からない噂であった。いちいち何かに例えたがるのは教養のない下級貴族令息にとってよく分からないことである。
先日、社交界好きの彼の母からはこんな噂を聞いた。
『テアミナ様とジョア様はデキているのではないかって皆、噂しているのよ』
その時はふぇ〜と流していた彼だが、いざその噂を見れるとなると知りたくなってしまう。
彼は、隣の令嬢の噂話に注力する事をやめ、ざわめきの元となる人々の方に視線を向けた。
刹那、彼の視界は変わった。
─若葉色に茂る瞳。
─薔薇のように赤い唇。
─白く透き通った肌。
─キャラメルのように輝く髪。
とても綺麗だと思った。
生命力に溢れている。
人々は睡蓮なんて言うが、彼にとっては春の野にひっそりと咲く薔薇のようであった。
それでいて、本人は慈愛に満ち溢れた笑みを向けて、控えめでいた。
もう一人、テアミナと同時に会場に来たものがいる。
その人にも目を向けた。
─海のように煌めく瞳。
─穏やかに綺麗な弧を描く唇。
─凛々しい佇まい。
─風が吹く小麦畑を思い出させる絹の髪。
羨ましい、そんな感情を優に通り越して崇めたいと言う気持ちが第一にあった。
歓声の中、ある令嬢は酔ってしまったのか、彼らの前で躓いて転けてしまった。
すると、彼らは即座に動いた。
テアミナは令嬢の体を起こし、「大丈夫ですか?」と声をかけ、ジョアは令嬢に自身の手を差し出して「お手を」と声をかける。
きっと、この場にいた貴族の誰もができなかったであろう行為を意図も容易くしてしまったのだ。
この行動を誰もが賛美する。
「なんて素晴らしい。流石であるな」
「やはり、兄君の姿のようにお優しい」
ジョアにはかつて兄がいたらしい。彼はもう事故で亡くなっていると令息は聞いている。
(兄君は剣術で有名だったからなぁ)
貴族間で行われる騎士集会と呼ばれる、剣術の大会ではいつも優勝を収めていた。
(この、世間知らずな俺が知っているぐらい有名な人だからな)
その兄の面影がジョアにはあった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
今日は二話投稿してます!
良かったら、引き続き見ていってくださいね!




