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第82話:始祖の真意と、ガレリアの闇

※仕事が忙しく、昨日のように更新できない日があるかもしれませんが、ご容赦お願いします。

『……解せん。どうにも解せんのう』

 ファルは巨大な顎に前足を当て、まるで人間の老人のように思案する仕草を見せた。


『我ら古竜の始祖は、星の魔力サイクルを管理する存在。本来、無闇に命を奪うような邪悪な存在ではないのだ。

 腹が減ったからといって、都市を丸ごと一つ喰らい尽くすなど……到底あり得ん』


「あり得ないって……でも、実際にガレリアは消滅したんだぞ?」

 俺が疑問を投げかけると、隣にいた黒龍ゼノスが語り始めた。


『左様。

 始祖がそれほどの大規模な「捕食」を行うとすれば、それは星そのものを脅かすほどの強大な『穢れ』や『淀み』を浄化し、切除する必要があった時のみだ』


『うむ。つまり、ガレリアという国そのものが、星にとって放置できないほどの「猛毒」と化していた可能性が高い』

 ファルたちの推測に、国王は苦渋に満ちた表情で押し黙った。


 その時、俺の斜め後ろに控えていたユリウスが一歩前へ進み出た。特務調査官としての、鋭く冷徹な顔つきに変わっている。


「……陛下。そしてエルヴァン殿。実は、私の独自の調査網に引っかかっていた『未確認情報』があります。

 そして今のお話を聞いて、それが単なる噂ではないと確信しました」

 ユリウスは周囲の近衛騎士たちを一瞥し、声を潜めて告げた。


「消滅する数ヶ月前から、ガレリアは星の理に背く『禁忌の魔法技術』……あるいは『人工的な魔力兵器』の開発に手を染めていた、という黒い噂です。

 彼らは地下深くで、星の命脈を汚染するほどの極めて悪質な魔力を生成していた可能性があります」


「禁忌の技術……! それで、始祖のドラゴンは星を守るためにガレリアを……?」

 俺の言葉に、ユリウスが静かに頷いた。


『なんと……禁忌の術じゃと?』

 ユリウスの言葉を聞いた瞬間、ファルとゼノスの目の色が変わった。


『ならば合点がいく。……星の理をねじ曲げる技術は、極めて悪質で濃密な『淀み』――すなわち、星にとっての『猛毒』を生み出す』


『始祖はそれを放置できず、毒の発生源たるガレリアを国ごと浄化したのだろう。

 だが……』

 ゼノスが、空を見上げて重々しく唸った。


『その毒は、始祖の許容量をも超えていたのだ。強すぎる猛毒を喰らった結果、今度は始祖自身が毒に侵され、激しい苦痛と高熱から狂乱状態に陥っていると推測できる』


『うむ。無差別に周囲の魔素や大地を喰らい続けておるのは、薄れゆく理性の中で、体内の毒を中和しようと足掻いておるのじゃろうな……』

 ファルとゼノスの結論に、俺は息を呑んだ。


 星を守るために自ら毒を飲み込み、その結果、正気を失って暴走している。

 それが『原初の暴食』の真実なのだとしたら、あまりにも悲しすぎる。


「……救ってやらないと」

 俺は強く拳を握りしめた。


 猛毒に苦しんでいるのなら、それを浄化し、中和するための「治療」が必要だ。

 俺にできること……


「毒の浄化……不治の病……。世界樹の葉なら、中和できるかもしれない!」

 以前、ロランさんの不治の病を救ったあの神秘の力だ。


『おお……! 確かにあらゆる穢れを祓う世界樹の生命力ならば、始祖を救えるかもしれん。』

 ファルが黄金の瞳で俺を見つめる。


『だが相手は星をも喰らう巨体じゃ。浄化の力を最大まで高めるには、葉だけでなく、世界樹の最深部で魔力が極限まで凝縮された『最盛期の完熟果実』を確保せねばならん。

 ……あれは普段手に入る果実とは別物。守護する魔物も格段に強くなるじゃろう』


「……上等だ。相手が誰だろうと、究極の特効薬《料理》を作って始祖に食わせてやる」

 俺は力強く頷き、国王へと向き直った。


「陛下。俺は始祖のドラゴンを『討伐』するのではなく、『治療』するための料理を作ります。そのために動かせてください」


「……世界樹の力を借り、暴走する始祖を癒やすというのか。正気の沙汰ではないな」

 国王は呆れたように目を丸くしたが、すぐに期待の入り混じった笑みを浮かべた。


「分かった。我が国は全力を挙げて君たちを支援しよう。ユリウス特務調査官! 直ちにガレリアの『禁忌』を調査し、同時に世界樹の最深部へのルートを確保せよ。エルヴァン殿たちの道を切り拓くのだ!」


 こうして、世界を救うため、始祖のドラゴンを救うため、俺と相棒たちの新たな冒険が幕を開けた。

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