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第62話:迷宮でバーベキュー

「よし、今日の野営地キャンプはここにしよう」


 巨大な大樹の根元、開けた草地を見つけた俺は、マジックバッグから手早く大型の魔導テントを設営した。

 木々の隙間からは、迷宮の天井にある疑似太陽の黒い宝玉が、夕暮れのようなオレンジ色の光を投げかけている。風通しも良く、絶好のキャンプスポットだ。


「わぁ、すごく綺麗な場所ですね! 私、お皿やテーブルの準備をします!」


「頼む。俺はさっそく肉の準備にかかる」

 俺は折り畳み式の特大バーベキューグリルを広げ、中に備長炭に似た上質な魔石炭を並べた。

 すると、荷物運びを手伝ってくれていたシリウスが、トコトコと歩み寄ってきた。


『エルヴァン、火起こしならボクが手伝うよ!』

 シリウスが鼻先をグリルに向けると、フワリと青白い炎が吐き出され、魔石炭に瞬時に火が点いた。

 シリウスの操る『青炎』は、通常の炎よりも高温で安定しているため、極厚の肉を一気に焼き上げる炭火焼きには最高の火力が得られるのだ。


「サンキュー、シリウス。最高の火加減だ」

『えへへ、任せてよ!』

 嬉しそうに嘶くシリウスを横目に、俺は本日のメイン食材を取り出した。


 先ほど討伐したばかりの『岩塩猪ロックソルト・ボア』の極上肉と、『迷彩怪鳥カメレオン・ターキー』の胸肉だ。

「まずは岩塩猪からいくぞ。こいつは肉自体にすでに完璧な塩味が染み込んでるからな」

 俺は分厚くスライスした岩塩猪の豚バラ肉を、熱々の網の上へと並べていく。


 ――ジュゥゥゥゥッ!!


 爆発的な脂の焼ける音と共に、暴力的な香ばしい塩の香りが野営地全体に広がった。滴り落ちる脂が青い炎を跳ね上げ、肉の表面が黄金色にカリッと焼き上がっていく。


「コォォォォンッ!!」

『ヤバっ! マヂで匂いエグいんですけど! はやく、はやく食べたいし!』

 ハクビが俺の周りをピョンピョンと跳ね回り、九つの尾をプロペラのように回して急かしてくる。


「ニャァ」

『抜け駆けは許さないニャ。一番乗りはアタシとニーナニャ』


「シャァッ!」

『はぁ!? ウチが一番食べるし! 山猫は引っ込んでなよ!』

 ノワールとハクビがバチバチと火花を散らしているが、俺は慌てず、道中で採取しておいた手のひらサイズの葉野菜を広げた。


「喧嘩すんな。

 ほら、焼けたぞ。この葉っぱに、肉と特製のピリ辛味噌を乗せて、巻いて食べるんだ。脂の甘みと葉っぱのシャキシャキ感がたまらないぞ」

 俺が差し出だすと、ハクビはひったくるようにしてパクリと一口で頬張った。


「くぅ〜んっ!!」

『……ッ!! マヂ神! 脂ちょー甘いのに、葉っぱのおかげで無限にイケるし! ピリ辛なのも最高にアガる!!』

 ハクビは感動のあまり、地面をバタバタと叩いて歓喜のダンスを踊り始めた。


 その様子を呆然と見ていたスオウにも、俺は一つ巻いて渡してやった。

「ほら、スオウも食ってみろ。お前、霊獣との絆を取り戻したからって、泣きすぎて腹減ってるだろ」


「む……。だが俺は、計算された栄養食以外は極力口にしない主義で――」

 言いながらも、スオウの喉はゴクリと大きく鳴っていた。

 恐る恐る口に運んだスオウは、その直後、雷に打たれたように固まった。


「……な、なんだこれは!? 暴力的なまでの肉の旨味を、葉野菜の清涼感が完璧に包み込んでいる!

  しかも、この特製味噌に使われているのは、魔力回復を促す『赤陽草』ではないか!?

  ただ美味いだけではなく、迷宮探索で疲弊した肉体を瞬時に回復させる完璧な栄養バランス……!」

 スオウはボロボロと涙を流しながら、二個目、三個目と無我夢中で頬張り始めた。


「美味い……美味すぎるぞ、エルヴァン! 俺のテイマーとしての常識が、またしても美味しく塗り替えられていく……ッ!」


「コォン!」

『ちょっとスオウ! ウチのお肉食べすぎ! マヂ空気読んで!?』

 スオウとハクビが肉の奪い合いを始める中、俺の腰の龍玉がパカッと開いた。


『エルー! ファルのぶんも、おっきいのおねがいー!』

「はいはい。お前は怪鳥の丸焼きな。甘辛いタレをたっぷり塗ってあるぞ」

 俺がこんがりと焼き上がったターキーの丸焼きを差し出すと、ファルは小さな両手でそれを受け取り、『やったー!』と大喜びで龍玉の中へ引きこもっていった。


「ターキーのお肉も、すごくさっぱりしてて美味しいです! エルヴァンさん、最高ですね!」


「ブルルルッ!」

『本当だね! ボクの火で焼いたから、さらに特別美味しいんだ!』

 ニーナとシリウスも満面の笑みでバーベキューを満喫している。

 煌々と燃えるキャンプファイヤーを囲み、極上の肉を頬張る仲間たち。

 未知の迷宮での初めての夜は、これ以上ないほど美味しく、そして賑やかに更けていくのだった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


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