第50話:元ギルドメンバーたちの末路
「な、なんでお前がこんな所に……! いや、まさか、この悪魔馬やクァールはお前がテイムしたって言うのか!?」
元パーティーのリーダーである剣士は、目をひん剥いて声を荒げた。
追放した「役立たず」が、自分たちが喉から手が出るほど欲しがっていた高ランクの魔物を従えている。その事実が受け入れられないのだろう。
だが、剣士はすぐに卑屈で下品な笑みを浮かべた。
「ははっ、なんだ! 少しは見どころのあるテイマーになったじゃねえか! ちょうどいい、特別にもう一度俺たちのパーティーに戻してやるよ! その強力な魔物たちがいれば、俺たちも楽に稼げるからな!」
自分たちがどれだけ悲惨な状況でも、エルヴァンを自分より「下」だと信じて疑わない。その傲慢な態度に、ニーナは信じられないものを見るような目を向けた。
しかし、当のエルヴァンは全く怒る様子もなく、ただ呆れたように小さくため息をついた。
「……悪いが、遠慮するよ。俺は今のギルドでの生活に満足しているし、お前たちと組むメリットが一つもない。行くぞ、ニーナ」
エルヴァンは彼らを完全に無視して、ニーナたちと共に背を向けた。
その無関心が、剣士のちっぽけなプライドをズタズタに引き裂いた。
「待てコラァ! 誰に向かって口きいてんだ、この落ちこぼれが!!」
逆上した剣士が、腰の剣に手をかけ、エルヴァンの背中に向かって殺気を放った瞬間――。
周囲の空気が、一瞬にしてかわる。
シリウスの蹄と鬣から、青い炎が爆発的に燃え上がる。それは普段の優しい温もりとは全く違う、悪意を持つ者を焼き尽くす絶対的な拒絶の炎だった。
「ひっ……!?」
剣士が怯んだその隙すら、もう遅かった。
『シャァァァッ!!』
「えっ――!?」
音すらなかった。
漆黒の暗殺者たるノワールが、残像すら残さない速度で剣士の背後に回り込んでいた。
剣士の首筋には、ノワールのナイフのように鋭い爪がピタリと当てられ、耳元で明確な殺意を持った低く冷たい唸り声が響く。
一歩間違えれば首が飛ぶ。
その圧倒的な『死の恐怖』と、格が違いすぎる魔物たちの殺気を全身に浴びて、元パーティーの面々は武器を抜くことすらできず、ガタガタと情けなく膝を震わせた。
「ひっ、ひぃぃぃっ! す、すまねぇ! 悪かった、命だけは……!!」
「いやぁぁぁ! 助けてぇっ!」
腰を抜かし、地面に這いつくばって命乞いを始める元パーティーの面々。
さっきまでの傲慢さは見る影もなく、醜く泣き叫ぶその姿を見て、エルヴァンは心の底から同情した。
「……シリウス、ノワール。もういい、こいつらは相手にするだけ時間の無駄だ」
エルヴァンの静かな声に従い、シリウスはスッと炎を収め、ノワールも爪を引っ込めてエルヴァンの足元へと軽い足取りで戻ってきた。
騒ぎを聞きつけた街の衛兵たちが駆けつけ、涙と鼻水にまみれた元パーティーの三人が引きずられて行った。
「まったく、せっかくの買い出しなのに変な連中に絡まれたな。ニーナ、大丈夫だったか?」
「は、はいっ! シリウスちゃんとノワールちゃんが居れば怖い事なんてありません!」
『ニャ~ン!』
すっかりいつもの甘えん坊に戻った従魔たちを優しく撫でながら、エルヴァンは手元の紙袋を軽く持ち上げた。
「さて、気を取り直して帰ろうか。ファルも待ってるし、冷めないうちに極上のシチューを作らないとな」
過去のしがらみなど、今の彼にとっては道端の石ころ程度の意味しか持たない。
美味しい食材の香りと、大切な仲間たちの笑い声に包まれながら、エルヴァンは温かい我が家へと歩き出すのだった。
ちなみに後日談となるが、彼らは衛兵の厳しい取り調べにより、宿代の踏み倒しや、冒険者ギルドへの虚偽の報告など、数々の余罪が発覚することになる。
結果として冒険者資格は剥奪され、この街からも永久に出入り禁止という、自業自得な末路を辿ったらしい。
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