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第49話:落ちていく元ギルドメンバー

 薄暗い森の中、ジメジメとした冷たい風が吹き抜ける野営地で、三人の冒険者が重苦しい空気を漂わせていた。

 彼らはかつて、エルヴァンが所属していたギルドのメンバーであり、彼が追放されるきっかけを作った張本人たちである。


「……おい、この干し肉、石みたいに硬ぇぞ。どうなってんだ」

 リーダーの剣士が、忌々しそうに硬い肉を地面に吐き捨てた。


「文句言わないでよ! ギルドの運営資金が底を尽きかけてて、うちらのパーティーへの支援金も完全に止められてるんだから! これでも贅沢なくらいよ!」

 魔術師の女がヒステリックに叫び返す。


 彼らが所属するギルドは現在、文字通り『解散寸前』の危機に陥っていた。

 かつて彼らは、戦闘に直接参加せず、裏方で動物と戯れているだけのエルヴァンを「足手まといの役立たず」と見下し、ギルドマスターと共謀してギルドから追放した。


 しかし、彼がいなくなって初めて、その「動物遊び」がどれほどギルドを支えていたかを思い知ることになったのだ。

 夜間の見張りは小鳥や小動物たちが完璧にこなし、安全な野営地を見つけるのも、美味しくて温かい食事を作って疲労を回復させていたのも、すべてエルヴァンの力だった。


 優秀なサポーターを失った途端、ギルド所属のパーティーは魔物の奇襲を受けやすくなり、クエストの失敗率が跳ね上がった。怪我人が続出し、評判は地に落ち、割の良い依頼は他所に奪われ……結果としてギルド全体が借金まみれとなり、末端のパーティーは日々の野営の食事にも困る有様となっていた。


「くそっ……! なんで俺たちがこんな目に……! そうだ、ゴルドランの街に、悪魔馬と漆黒の山猫を従えた凄腕のテイマーがいるって噂を聞いたぞ。そいつを俺たちのギルドに引き入れて、パーティーの主戦力にすれば、また一気にトップランクに返り咲けるはずだ!」


「……ええ、そうね。私たちのような優秀な冒険者が声をかければ、喜んで傘下に入るはずだわ」

 ギルド没落の最大の原因が自分たちにあることを棚に上げ、彼らは都合のいい妄想に縋りつき、這うようにしてゴルドランの街へと向かった。


 ◇ ◇ ◇


 一方その頃、ゴルドランのギルドハウス。


 縁側では、日差しを浴びてポカポカと暖まった水晶玉の中で、ファルが気持ちよさそうに欠伸をしていた。


『ふぁ〜あ……。儂は今日はここでお留守番じゃ。お主ら、若いもんで街に行って美味いもんでも買ってこい。夕飯は期待しておるぞ』


「わかった。ゆっくり休んでてくれ、ファル」

 すっかりお爺ちゃんモードで寛ぐファルを残し、エルヴァン、ニーナ、シリウス、そしてノワールとプルちゃんの2人と3匹は、夕食の買い出しのために街の中央市場へと足を運んでいた。


「マスター! あっちのお肉屋さん、すごくいい匂いがします!」


「よし、今日はノワールの歓迎会も兼ねて、奮発して一番いい肉を買って、とびきり美味いシチューでも作るか」


『ブルルッ!(僕もニンジンたくさん食べたい!)』


『ニャン!(お肉! お肉ニャ!)』


 子供たちからの人気もすっかり定着したシリウスと、その背中に乗るプルちゃん。道行く人々も、最初は遠巻きに見ていたが、今では彼らの愛らしい仕草に微笑ましい視線を向けている。


「ちょっとお肉屋さんに行ってくるから、ニーナはここでみんなとお留守番しててくれるか?」


「はいっ! 任せてください!」

 エルヴァンが路地裏の精肉店に入っていった直後。

 市場の入り口から、ボロボロの装備を引きずった三人の冒険者が現れた。


「おい、見ろ……! あの尋常じゃなくでかい黒馬に、真っ黒な山猫……! 噂に聞いてた特徴とそっくりだ。間違いない、凄腕テイマーの従魔だぞ!」


「でも、一緒にいるのはちんちくりんの小娘とスライムだけじゃない。

 ……ねえあんた! その魔物の主人はどこにいるの!?」

 横柄な態度で、剣士と魔術師がニーナを怒鳴りつけた。

 突然の威圧的な大人たちの登場に、ニーナはビクッと肩を震わせる。


「え、えっと……マスターなら、今お買い物に……」


「マスターだぁ? いいからさっさと呼んでこい! 俺たちのギルドの専属パーティーに入れてやるって言ってんだよ!」

 怯えるニーナを庇うように、シリウスが一歩前に出て低く嘶く。その鬣や蹄にはまだ炎は現れていないが、大型の魔物特有の重圧感に、剣士たちは一瞬だけ息を呑んだ。

 同時にノワールの金色の瞳がスッと細められたその時。


「――ニーナ? どうした、誰かに絡まれてるのか?」

 紙袋いっぱいの食材を抱えたエルヴァンが、精肉店から戻ってきた。

 その顔を見た瞬間、偉そうにふんぞり返っていた元ギルドの剣士の顔が、驚愕に引き攣った。


「え……? お、お前……エルヴァン……!?」


「ん? お前たちは……」

 数秒の沈黙の後、エルヴァンは「ああ」と、道端の小石でも見るような、冷ややかな視線で彼らを見つめ返した。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆


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