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夢の檻で

 皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます! 「ゆめのなか」へ堕ちる童話、2話目となりました。

 死の呪縛を眠りによって中和された姫君。彼女が見る夢はいったいどのようなものなのでしょうか……?


 それでは、本編スタートです!

 姫君が目を覚ましたのは、夢の中でした。


 賢者が姫君にかけた祝福は、「姫君は死ぬことなく、誰にも妨げられることのない100年の眠りの果てに目を覚ます」というものでした。そう、姫君がどのような眠りを過ごすことになるのかは、誰も――姫君自身にもわからなかったのです。


 姫君が目を覚ましたのは、いつもと変わらない自分の部屋でした。

 眩しく柔らかい朝日が差し込み、窓の外では小鳥が(さえず)っています。

 だから、姫君にはこれが夢であるか現実であるか、わからなかったのです。


 部屋を出た姫君が最初に見たのは、子宝を授からないと嘆く王様の姿でした。その姿は、姫君の記憶の中にある王様よりもかなり若いようにも見えました。城内の侍従たちも子どもの生まれない王様とお妃様のことをヒソヒソと噂しているようでした。


 きっとおふたりは呪われている。

 この王国はもう長くは持たない。

 いったいどちらが悪いのかしら。

 どんな魔術でも治らないなんて。

 神様が跡取りを拒んでいるのね。


 王様もお妃様も、侍従たちの心ない噂話について知っているようでした。姫君にとっては耳を塞ぎたくなるようなものであっても、国を治める立場にあるふたりはそうもいきません。感情を表に出さず、しっかりと国政を執り行い、その陰で跡取りを産もうと必死に頑張っていたのでした。それでも、王子も姫も生まれません。ふたりはとても悩んでいました。

 やがて姫君は、いま見ているのが自分の生まれてくる前の過去だと悟りました。このお城に宿った記憶とでもいうべきものなのでしょうか、きっと眠っている姫君が退屈しないようにとお城が気遣ったのかも知れませんでしたが、結局はお城と人間、お城の思いやりは姫君にとって嬉しいものではなかったようです。

 けれど、姫君が拒もうと拒むまいと、夢は続いていきます。

 王様とお妃様は様々なことを試し、様々な助言を聞き、そうして姫君には意味のわからないある事柄を告げられた後のこと。

 お妃様はお城の外へと出て、そのまま数日ほど戻りませんでした。王様がお妃様の行き先を尋ねても、侍従たちも『大切な用事』としか聞いていなかったので答えられません。常日頃からお妃様のお付きとして仕えている侍女たちも、どうやらお妃様直々に付いていくのを断られてしまったようでした。当然、姫君にもお妃様がどこにいるのかなんてわかりません。

 お城の誰にも、お妃様の居場所はわかりませんでした。


 わかることは、お妃様が数日後にお城へ戻ってきたこと。

 それから間もなくして、お妃様が身重になったことでした。


   * * * * * * *


 次に目を覚ましたとき、もうお城の中には誰もいませんでした。


 夢の外では姫君が眠って程なくして、どうやらお城は辺境の森より向こうからやって来た流行り病によって滅びてしまったようです。いつも病を食い止めていた賢者は、姫君への呪いをかけた罰を受けていました。それでも呪いは消えなかったばかりか、賢者が人知れず行なっていた『魔物』たちへの対処も誰にもできず、お城のみんなも、周りで暮らしていた人々も、様々な魔法を使えるはずの賢者たちでさえ、なすすべなく(たお)れていきました。

 そうして誰もいなくなった亡国において、眠ったままの姫君だけが健在でした。

 いかなる病も、いかなる厄災も、姫君の身命を脅かすことはできないのです。たとえ周りに誰もいなくとも、周りにある全てが壊れて朽ちようとも、姫君は目覚めのときまで眠ったままです。どんなことがあっても生き永らえ、姫君自身にもその眠りを止めることはできないのでした。


 夢のなかで、姫君はたえず孤独でした。

 呼んでも答えるものはなく、朝の訪れを告げるように囀る小鳥もいません。

 自分が生まれる前は心無い噂話をしていて、それでも面倒を見てくれていた侍従たちも、日々の食事を作ってくれていたコックたちも、普段は真面目な顔つきで外を見ていても姫君が話しかけると気さくに応じてくれていた衛兵たちも、屋根の上で追いかけっこしてじゃれ合ってネコやネズミも、お城を尋ねてきていた町のお役人たちも、誰もお城の中へはいません。

 そして何より、彼女を愛していつも見守ってくれていた王様もお妃様も、どこにもいないのです。


「誰もいないの?」

 お城のなかを探しつくした姫君は、生まれて初めてお城の外へ出ました。

 それでも、聞こえるのは風にざわめく木々の音ばかり。人々の声も、生活を営んでいるような音も、何も聞こえてはきませんでした。

 姫君は頭の中がどうにかなってしまいそうな感覚に襲われましたが、賢者から授かった前向きな心のために、どうにか希望を捨てずにいられました。

 毎日、足が棒になるまで歩きました。健康な身体を授かっていたので、普通の人よりも長く歩いていられます。それでも、人を見つけることはできませんでした。

 思慮深い姫君は、誰もいないことを怒ったりはしません。きっと何か理由があるのだと、その理由さえわかれば、きっとみんなは戻ってくるのだと信じました。

 姫君は運が良いため、行く先々で食べ物や飲み物を見つけることができました。お蔭で飢えることなく、ずっと人影を探し求めることができました。


 そうして、方々(ほうぼう)まで探し回り、とうとうこの国にはもう誰もいないのだと知りました。

 知恵を絞っても、わかるのは誰もいないということばかり。

 いくら考えても、自分はひとりきりだと気付くばかりです。


 姫君は、叫びました。

 涙を流して駆け回りました。

 いっそ自分もいなくなってしまいたいと願いました。

 地平線の彼方へと共に去ろうと、太陽を追いかけたことさえありました。

 それでも、姫君は夜の世界に取り残されて。

 月からさえも置き去られて朝を迎えるのです。


 やがて、姫君はお城に戻りました。

 どうして気付かなかったのでしょう、姫君のお城は、覚えているよりもずっと古びて、荒れ果てていました。所々崩れても誰にも修復されず、時の彼方に捨て去られてしまったかのよう。


 やがて、何もかもに疲れ切ってしまった姫君は、まるで棺のようなベッドの中で眠ることにしたのです。

 そんなとき、突然眩しい光が差しました。

 前書きに引き続き、遊月です。皆様、今回もお付き合いありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪


 今年は、上半期はアイドルグループのアニメに、下半期は迷うことを迷わないガールズバンドアニメに情緒を乱され続けた年でした。年の瀬の近付いたこの時期になっても、2作を思い出すと涙腺が弛んでしまいます(というかこのエピソードの投稿日も仕事中に突然思い出してしまいました)。

 特に後者はいけませんね、後者は登場人物同士の関係性が濃すぎて、涙腺を刺激される他に私自身の関係性オタクの心をくすぐられてしまいます。もう戻れることのない関係や暖かな日々を歌ったかのような、ある意味ラブソングとも言えるような歌(今年のアニソン大賞にもキャラクターソング部門でノミネートされているので、もしかしたらご存知の方も多そうですね)が半端ではなかったです。あるブログでは「令和最大級の鬱アニメ」と紹介されたこともあるそうですが、観終わってみたら王道の青春ガールズバンドアニメでしたね……続編も制作中らしいので楽しみでございます。

 ガールズバンドアニメというと昨年末にも高校生バンドのアニメが放送されていましたね。私はちょうど観られていなかったので二次創作のイラストでしか知らないのですが、最近になって作中の楽曲(こちらも主人公?からヒロイン?へのラブソング感がありました)を聴いて以降気になってきております。もしかしたら自身のない(?)主人公が比較的明るい感じのヒロインに引っ張りあげられるタイプの女女重感情シナリオというのはどんなときも私たちの心に寄り添ってくれる最高のコンテンツなのかも知れませんね。


 閑話休題。

 夢の中に囚われたお姫様、その目覚めをもたらすはもちろん……?


 次でラストでございます。

 あと1話、お付き合いいただけましたら幸いです。

 ではではっ!!

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